死ぬまで生きる世界
わたしはこの世界に生きているモチモチした何かの存在である。
困ったことに、壁の穴を抜けようとしたらモチモチが穴に挟まって動けなくなった。
でもわたしは慌てない。
前にも穴抜けのときに挟まったけど、力を抜いて少しずつモチモチを動かし続けたら五分ぐらいで抜け出せた。今回もまあなんとかなるだろうと思いながらもがいたのだが、五時間たっても全然穴から抜けない。
わたしは深呼吸をする。
まあ、最悪穴から抜けなくてもそのときは壁の一部になって生きればいいだけだし、壁の穴はいつか誰かが埋めなければならないものでその役割がわたしに与えられたのだと、そんなことをグルグル頭の中で考えているとさっきまで穴から抜け出そうと必死にもがいていた自分が滑稽に思えた。ふふふ。
「あんた、にやにやしてきもちわるいわ」
声のほうを見るとわたしと同じモチモチの存在がいた。
「ああ、つまり穴抜けに失敗したのね――だったらモチモチを分裂させればいいのよ。壁のこちらと向こうに」
どうやって?
「オナラをすれば分裂できるでしょ。知らないの?」
わたしはオナラのやり方を教えてもらい、勢いよくぷっとやったらモチモチが分裂して穴から抜けた。壁の穴から向こうを覗くと、分裂したモチモチがきょろきょろ迷いながら遠ざかっていくのが見えた。
「あのモチモチも何とか生きていくでしょ。この世界では“死ぬまで生きる”が唯一のルールなんだから」
それからわたしは壁で出会ったモチモチと行動を共にしながら旅をした。
この世界には壁がいくつもあって、まったく抜け穴のない完璧な壁もあれば、穴だらけだったり壊れかけていたりする壁もある。
「死んだ存在が長い時間をかけて壁を作っているって話みたいだけど、あたしまだ死を見たことがないのよね。あんた見たことある?」
そういえば死って見たことないな。
「まあいいけど、あんたモチモチから棒みたいなものが出てるわよ」
見てみると確かに棒が出てて何だよこれと思ったが、何日かするとモチモチからその棒が完全に出て一つの存在になった。
棒は簡単に壁の穴を抜けることができるので、いつもスルスルと壁抜けをして遊んでいる。
「ボク壁ニササッタヨ」
モチモチを駆使してなんとか棒を抜こうとしたけど全然抜けない。おならで分裂してもたぶん棒の一部が壁の中に取り残されてしまう。
「伝説の剣になれば誰かが抜いてくれるわよ、知らんけど」
知らんけど?




