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喚び寄せる声  作者: 若竹
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第2話 喚び寄せられた彼女

h22.10/10 改稿しました。

 

 私はゆっくりと眼を開けた。


 目の前には見た事の無い景色や生物がいる。此処は一体何処なのだろう。突然の環境の変化に付いていけず、戸惑いを感じている。

 私は唯、目の前の光景に茫然としたまま見入っていた。それとも単に理解できていないだけなのかも知れない。


 私の眼の前には、陸上では存在しえない程の大きさをした生物が居る。私は目の前の光景が信じられなかった。

 それは見た事も無い、空想上でのみ存在する様な生物だった。

その姿は禍々しく、お伽噺や神話で例えるならば怪物とか悪魔とか、そういう物を連想させる生き物だった。


 何なのこれ?あの生物は一体何?此処は一体何処なのだろう。

 ……私、映画でも視てるのかな?

 映画であるとすれば、特撮映画の怪獣かしら?ウ○○○マンに出てくる宇宙怪獣?みたい。撮影でもしているのかしら。でも、それにしてはあの怪獣は良く出来過ぎている。着ぐるみには見えないし、背中にチャックも無さそうだ。CGかしら?しかし、此処はどう見ても映画館では無い。となれば、私は眼を開けたまま夢を見ているのか。


 私の脳みそと認識力は、眼の前の現状が直ぐには理解できず、唯ぼんやりと考えた。自分の置かれている状況が全く解らない。一体何がどうなって、現在私はこの様な状況にいるのだろう。


 白く何もない空間と曖昧な意識。

 先程まで彼女は其の白い空間を漂っていた。唯、流されるままに己の身を委ねる。私の思考はたちどころに流れては消えて行く。意識は朦朧としており、時間の感覚は曖昧だ。私は苦痛と共にある生という日々から解き放された後、心地好く感じる何も無いこの空間で漂い続けた。


 突如その白い空間が裂け、強い力で全身をわし掴みにされたかの如くにぐいっと万力のような力で引っ張られたと感じた次の瞬間には見た事の無い場所、つまり此の場所に居た。


 時間の感覚は曖昧でそのぐいと引かれた間が一瞬だったのか、それとも長い時間だったのかは分からない。

 ただ、引き寄せられたときに耳元で微かに聞こえた声。

 ……誰かの声が私の耳に届いた。身を切る様にあまりにも切なく、そして必死に懇願する決意に満ちた力強い声。

 

 お願いだ、此処へ来てくれ、我らに救いを……と。



 次に眼を開けた時に跳び込んで来た景色は、飾り気の無い石造りのお城の様な建物と緑の草原。そして悲鳴を上げて逃げ惑う人々。破壊され、吹き飛ばされる城の一角。城と共に人間までもがまるでおもちゃの人形の様に、一緒に吹き飛ばされて行くのが私の視界に入った。


 その先には城の高さよりも巨大な、青みを帯びた鉄色の鱗に覆われた巨大爬虫類の様な怪獣。

 恐竜などの地球産とは違い、明らかに地球外生命体ではないのかと私は思った。


 その怪獣の体はまさに異様なありさまで、蛇の胴体に、6本の蜥蜴を思わせる巨大な腕をしている。恐ろしげな恐竜を思わせる頭部に血の様に赤く光る、白眼の無い眼。口には鋭い牙が、ぞろりと生えている。宇宙怪獣は重たい地響きを立てながら移動すると、地震が起きているかのように、人や建物が上下に振動していた。


 宇宙怪獣はその巨大な左腕を一本軽く振ったかの様に見えたが、空気に唸りを上げさせる。その威力は凄まじく、白い真空の鎌が襲い掛かるかの如く空気の密度を変えると、城を、人を無慈悲に吹き飛ばす。

数々の悲鳴が破壊された城と一緒に飛び散った。


私はその光景にはっと息を飲む。これは悪夢というやつだ、とびきりの。本当に夢なのだろうか?もしも、現実ならば恐ろしい光景だ。


 城と人を守ろうとするように何人かの武装した人間が武器を持って立ち向かおうとするが、その巨体には全く歯が立たない様に思われた。

 人間達は巨大な宇宙怪獣と比べると、虫ほどにも小さく無力に見えたからだ。


 その景色を、私は空に浮かんで見下ろす様に見ていた。



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