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25. 引力

 いつの間にか眠ってしまっていたようだった。

 床で寝ていたせいか、関節の節々に鈍い痛みが走る。軽く腕を伸ばすと、パキパキと小気味いい音が薄暗い部屋に響いた。

 スマホは寝ている合間に手から滑り落ちていたらしい。ケースの背面に挟んだ聖くんのフォトカードが僕を見つめている。


(──そうだ。蓮に連絡返さなきゃ)


 ぼんやりとした頭のまま、スマホの電源をつけた。通知バッチは点灯し続けている。

 少し躊躇いながらもメッセージアプリのアイコンをタップした。

 新たに届いていたのは、寝る前に届いていた蓮からのメッセージと、Q:UAR7Z(クォーツ)の新曲リリースキャンペーンのお知らせにまつわるメッセージ。

 普段なら何の気兼ねもなく、雑に既読をつける公式インフォメーションアカウントすら今の自分にとっては毒だった。

 手早く蓮とのトークルームを開く。


『家着いた?』

『体調落ち着いたらでいいから、連絡くれ』

『心配だから』


 数時間前に送られてきた心配の言葉の数々に、不覚にも目頭が熱くなる。

 僕とは違って、蓮はきっと聖くんたちと直接会えて嬉しかったはずだ。それなのに、水を差してしまった僕に対してこんなにも優しくしてくれる。


『無事に着いたよ』

『心配かけてごめん』

『今日はちょっと緊張しすぎちゃったみたい』

『少し寝たらよくなった』


 こういうとき、どうやって埋め合わせをするのが正解なのだろうか。

 アイドルを追いかけることに夢中で、同年代の友人を作ってこなかった弊害がこんなところで出るなんて。

 けれど、さっき送ったメッセージからは既に数分経ってしまっている。

 まだ既読はついていないとはいえ、追加で送るには不自然な気がしてしまうし、そもそも、なんて送るのが良いのかもわからない。

 床に寝転がり、唸り声を上げる。


「ほんとに、僕ってどうしようもないな……」


 文字を打ち込んで。消して。打ち込んで。消して。

 それを何往復か繰り返し、結局、何も送らないままトーク一覧画面に戻った。

 手癖で、先ほどは無視していたQ:UAR7Z(クォーツ)の公式アカウントのトークルームを開いてしまう。

 トーク画面を開くと、自動再生機能によって新曲のMVが無音で流れ出した。

 先日、音楽番組で話題になった白いセットアップを着たメンバーたちが、小さなディスプレイの中で踊っている。


(あ、今週分のハイプ、まだしてなかったっけ)


 指が勝手に動いていた。

 動画アプリを立ち上げ、新曲のMVを再生する。

 一回再生ボタンを押した後は、一曲まるまる終わるまで一時停止やアプリを落とすような真似はできない。だから、公開直後に何回も繰り返し見た後は、歯磨きをしに行く間とか、ちょっとした時間に再生するのが常だった。

 なんて。目を皿のようにして見てたのだって、つい数日前のことだ。

 顔がアップで映るカットのシーンでは今日の聖くんの瞳と、画面の向こうの聖くんの瞳が重なった。こちらを射抜くようなまなざし。

 今日までは、純粋に綺麗だと思っていた。思えていた、のに。


(ああ、だから嫌だったんだ)


 歯を食いしばる。

 シークバーはまだ半分も過ぎていなかった。けど、耐えられなかった。

 ハイプだけそそくさと義務的に送信する。

 脳裏に残る聖くんの姿が、MVでもステージの上の姿でもなく、今日『僕の目の前に現れた聖くん』であるのが、心底嫌だった。


【全編改訂および加筆修正を今後行うことについてのお知らせ】


ご無沙汰しております。

しばらくの間、更新していなかったことをまずはお詫び申し上げます。

申し訳ございません。


そして、上記の題にある通り、全編改訂と加筆修正を今後行おうと思っています。

全編改訂とありますが、大まかな話の全体的な流れは現状通りの予定です。

話の順序の入れ替えと各話の描写を増やすことが目的となります。


改訂・加筆修正に至った理由としては、2点あります。

1つ目は、久しぶりに冒頭から読み返した際に視点の切り替え・時系列の流れがわかりづらい、かつ、読みにくいと感じたため。

2つ目は、自分が書きたいと思ったことを文中に詰められておらず、各登場人物の掘り下げが浅くなってしまっているため。


上記の修正によって、話の進行が今以上にゆっくりになると考えられます。

なので、気が向いたときに覗きに来ていただけますと幸いです。


また、作品の改訂タイミングですが、全編修正が終わったタイミングで一斉に更新を行います。

既存の話数分だけ、修正分と入れ替える形です。

そのため、現在進んでいるシーンまで、同じ話数でも入れ替え後は到達していない可能性が高いことを、予めご了承ください。


以上、引き続き、当作品をよろしくお願いいたします。

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