#2 修行するぞ!修行するぞ!修行するぞ!
誘惑部に入った次の日から、早速先輩の特訓が始まった。
先輩とのイチャラブを期待していたが、そうはいかなかった。
「じゃあ健太君、早速だけどナンパしてみよっか!」
「ナンパ!?そんなのやったことないしできませんよ!」
「やったことないしできないからやるんだよー、私がお手本見せてあげるから見ててね!」
先輩はそう言うと、そこそこイケメンの高身長男に近づいて行った。先輩は男に話しかけるやいなや、男の大きな両手を握りこみ、上目遣いで男を見上げた。その時には男は完全に先輩の魅力に落とされていた……
「ね、こんな感じ!簡単でしょ!」
「全然簡単じゃないですよ……!しかもあれは先輩がかわいいからでしょ!?」
「健太君、私のことかわいいって思ってくれてたんだね!」
「……!!」
「健太君照れてる~、そんな健太君もかわいいよ!」
先輩は俺のかわいいという言葉にとても嬉しそうに喜んでくれた。俺なんかにかわいいって言われても嬉しいものなのか、それともこれも誘惑のテクニックなのか……
わからないが、俺は嬉しそうに喜ぶ先輩を見て、さらに先輩のことが好きになってしまった。
「こんなことばっかりしてたらいつか刺されちゃいますよ!」
「その時は健太君が守ってよ!まぁとにかく誘惑は実践あるのみだからさ!はい、いってらっしゃい!」
「うわぁ!」
先輩に背中を押されつまづいた俺の前には、同じクラスの早志涼子がいた。
「……?」
いきなり出てきた俺に早志さんはきょとんとした顔をしている。それもそのはず。早志さんは全男子が大好きな高身長プニプニ体系で、髪の毛は艶やかな黒髪ロング。顔は堀が深く芸術作品のように美しい。早志さんは男子全員の注目を集めるような存在、いわばまさにクラスのマドンナ的存在だった。俺なんかが話しかけて良い相手ではない……!
しかし俺も男だ!先輩に良いところを見せるためにもここは俺の底力を見せる時……!
俺だってやればできるんだ!やればできる子、YDK!!
「ハ、ハヤシサン……コココンチハ……!」
「……??」
早志さんは俺の渾身の一撃を無視して、少し苦そうな顔でそそくさとどこかに行ってしまった。
俺の挨拶の声が小さすぎたのか、きもちわるがられてしまったのかはわからないが、とにかく俺の声は早志さんには届かなかった。早志さんの苦そうな顔もあいまって、俺の豆腐メンタルはぐちゃぐちゃになってしまった。
「ドンマイ!ドンマイ!健太君!」
「せんぱい……俺もうだめです……」
「大丈夫だよ!むしろこれぐらいヘタレから始まったほうが伸びしろがあって良いんじゃない!?」
「(先輩にヘタレって言われた……)」
「まぁナンパはまだ早かったね~、ゴメンゴメン」
早志さんに無視をされて萎えていた俺の心は先輩と少しおしゃべりをするだけで一瞬で元に戻った。先輩と横に並んで歩けることが、今の俺にとって一番の幸福だった。
「明日は照れないためのトレー、あっ!」
「危ない!」
つまづいた先輩を助けるために、とっさに俺の左手が出る。
幸い先輩は人形のように軽かったので俺のひ弱な腕でも助けることができた。
「先輩大丈夫ですか!?」
「あーごめんごめん!全然大丈夫!ありがとね!」
その時の先輩の少し恥ずかしそうな顔から、初めて先輩の"素"を感じたような気がした。
その日、自宅に帰った俺は先輩の少し恥ずかしそうな顔で抜いた。
あの無邪気なのに少し余裕があって、常にゆとりがある感じの先輩をもっと照れさせてみたいと思った。
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