88.ホージョー家の死に損な……生き残り
「うへぇ、マジかよ……」
今回のお話はナムヒのうんざりしたドアップ顔から始まる。彼女は扶桑軍の装備を見てそう呟いた。
「こ、これでも、最新鋭の装備をかき集めたのだが……」
彼女の言葉に返事をするのはイワイ・チクシノさんである。イワイさんは彼女を東征へと向かう軍隊の視察に案内していたのだが、思わぬ反応で困惑した。
「今どき震天雷も配備してないようじゃね……」
火薬兵器が一つもないことにナムヒは大変不服のようである。が、これはナムヒの故郷である半島の国が扶桑を強大化させないように情報統制を行った結果でもある。現在は友好関係であるとは言え、クッソ体躯がデカいし女も好戦的に戦うから単純に戦力が多いし妖術まで使うのに火器など持たせた日には半島では対処できない、ということだ。でもこういう時に困る。
「お父に頼んで火車でも持ってこさせるか? いや、断られるかな……焼け石に水かも……」
ブツブツと呟きながら武器庫を彷徨く彼女を見て、イワイさんはなんとも言えない気分である。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ところで一行はナンキー・プープルの案内により、扶桑の首都であるオオミコトノキョウへと来ていた。この街は単に首都、帝都、新都と呼ばれることが多い。武器庫で東征用の装備を確認しているナムヒ以外は、宮殿にて歓待を受けていた。
「なんか近くないですか?」
応接の間にて、この国の皇帝である帝はベッドに寝そべり、ジロはその隣に寝かせられている。ステラは不満げな声を上げていた。
「近いとかいう問題?」
「東方世界にも変わった王がいるのだな」
「うん」
アカネとエルヴィン、ハーメリアは呆れた表情で用意されたご馳走を頬張っていた。帝はというと無言のまま恍惚の面持ちであり、ジロはその隣で、表情からは何を考えているか読み取れない。しかもこの場にはイワイさんもいないので帝の奇行を止める者がいない。ナンキーはいるが、別に止める気も無いようであった。
「まず出ている情報をまとめるとしましょうか」
「あ、そのまま進めるんだ」
彼の発案の元、情報の整理が行われる。ナムヒが聞いた話と、とっ捕まえたオオトモや徳川組下っ端をぶん殴って得た情報をまとめると、指定暴力団徳川組は女神ローナと繋がり、女神が我々の世界における日本から仕入れた稀人たちを資金源に自身らの勢力を増強していた。そして、かつてのジロたち、ホージョー家襲撃事件の首謀者であるタヌマロ・コノエや、オーイワさんとも繋がりがあるという。
「オーイワさんって誰!? 新勢力!?」
彼らを征伐するべく現在は兵力を集めているが、現状の参加兵力は微々たるものである。強大な、それも遠いドー国にいる勢力にわざわざ喧嘩を売ろうという者たちはいないからである。また、コノエの手の者がこの帝都にいることはわかっており、この東征の計画もいつ露見するかわからない。色々と意見を出し合っていた最中、ナムヒが武器庫の視察から戻ってきた。
「どうだった、ナム……ダメか」
見るからにダメそうな顔で入ってきた。なんか、顔にバッテンがついているようなあからさまにダメそうな顔であった。
「まあ、あたしらだけでなんとかしようぜ」
「それは無理であろう、彼奴らは国家のようなものだ、巨大な組織を相手取るのに五人と一匹では……」
「前から思ってたんだけど、一応神龍だから一柱って数えてほしいわね」
エルヴィンの言う通り、神龍ハーメリアがいたとしても、結局のところ戦いは数である。
「私のデカい呪文でバーってやっちゃうのはダメ?」
「無関係な民間人を巻き込みすぎるし、防がれるのが関の山だ」
稀人であり、巨大な魔力を持つアカネの魔法であっても問題は多いしそもそも、何が起きているのかすらわからないでいる民衆に魔法を浴びせるのは気が引ける。
「普通に国賊なんだから、帝が勅命でも出せば良いのでは?」
「大義名分が無さすぎる。俺達が奴らの悪行を掴んでいても、それは公になったというわけではない。そして、人類種である稀人を奴隷にするのは非合法な事ではないから罪に問えないんだ」
"国際市場における奴隷取引の協定"、通称奴隷法にて保護されているのはハイエルフ、ドワーフ、オーク、獣人、魔人一般、竜人などであり、半獣人や人類種の奴隷売買は禁じられておらず、現在でも奴隷取引は行われている。協定の制定当時の人類種の大国が軒並み奴隷をバリバリ使っていたせいでもあった。とはいえ、現在は高級志向化による価格の高騰により市場はやや冷え込んでいる。だが、稀人の奴隷化は女神の協力がある以上、無料で高品質な商品が湧いてくるような状況であり、暴利を貪ることが出来ている。
「じゃあ端から東征なんて無理じゃん!」
「いや、東征自体は出来る。難癖はいくらでもつけられるし……」
「き、汚い……」
「成功して有耶無耶に出来れば良いんだ。上手く行けばだが」
はぁ、と応接間にため息が漏れる。結局のところ勝てばよいのだが、その道筋は薄暗い。ままならないものであると思われたが、意外とままなるかも知れないと思わせる来訪者がやってきた。
「会議中失礼します、どうしても会わせなくてはと思いまして」
衛兵が慌てた様子で応接間に飛び込んできた。その後に続いて入ってきたのは、全身に火傷を負った狼人の少女である。
「叔父上! えっ、なんで帝と寝てるの!?」
「……俺をそう呼ぶのは、スヱコか!」
ジロは思わず声を上げる。彼女はスヱコ、彼の姪であった。そして彼女の後に続いて老紳士も部屋に入る。
「ジゴローも生きていたのか」
「左様でございます、トキジロー様」
スヱコとジゴロー、二人はホージョー家の生き残りであった。彼らはホージョー家再興の為に今の今まで潜伏していたのである。
「またキャラクターが増えるの? ナンキーと言い帝と言いイワイさんと言いオーイワさんと言い、読者がそんなにたくさんキャラクターを覚えられるわけ無いでしょ!?」
「なんてこと言うんですかアカネさん!?」
「怒られるぞホントに!」
しかし、作者も四人以上のキャラを操縦できないので、イーブンってところである。現に今も誰が何を喋っているのかわからない。
「何もイーブンじゃないよ! 誰も内容を理解できてないだけじゃん!」
虚空に叫ぶアカネに面食らうスヱコとジゴローであったが、気を取り直して話を続ける。
「叔父上、会いたかった……生きてるって信じてた」
「……その火傷は、例の事件か」
「いや、これは遊んでたら囲炉裏に突っ込んじゃって」
「おバカ!」
テヘペロするスヱコにジロは頭を抱えた。
「まあ、それはいいとして。叔父上、私たちはこれからホージョー家再興の為に行動するよ」
「我々はホージョー家の壊滅以来、残党狩りから身を潜め、力を蓄えておりました。しかし、遺憾ともし難いことですが、私の力及ばず、国内の勢力に協力者を見出すことが出来ず、今日まで潜伏を続けることしかできませんでした。今ここに当主であるあなた様を迎え、一先ずはホージョー家の再興に注力する所存でございます」
スヱコとジゴローは、ホージョー家の復興を夢見ていた。そして、ジロが生きているという情報を得て、今ここに馳せ参じたのである。彼らは跪き、拱手して、ジロに恭順の意を示した。それを見たジロは二人に立ち上がるよう促しそして、言い放った。
「ホージョー家当主として命ずる、俺に力を貸せ」
「は、仰せのままに」
「……隣に帝が寝てなければカッコイイシーンなんだけど」
「アイツ出てってくんねーかな」
アカネとナムヒは小声で毒づいた。
応援、ありがとー!
評価ご意見ご感想待ってるヨッ!
ちょっとゆっくり更新になっているけど
ちゃんとガバガバプロット自体は固まっているから大丈夫です(たぶん)
本当に申し訳ないとしか言いようがない!




