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のんきなエルフとくたびれオオカミ  作者: ターキィ
エルフの森で勝手に戦え!の章
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80.変龍ハーメリア


 とりあえず、母娘の問題は一応の解決を見せ、ステラの部屋に仕掛けられたデストラップの回収作業も終え、一同は一息ついていた。


「ハァ……ハァ……ど、毒塗られてたら死んでました……」

「まあ、ハイエルフは胸貫かれたぐらいじゃ死なないか」

「バケモンじゃん。前衛職になってくれない?」


 ガッツリ引っかかっていたが、しぶといためなんとかなっていた。翌日になると、ジロとナムヒがドチャクソドエロトラップダンジョンから戻ってきた。


「あれ、なんか和やかな雰囲気だな」

「タ、タスケテ……」


 ナムヒはなんか肌がツヤツヤでとても上機嫌のようなふうであったが、ジロはカラカラの出し殻のような姿になっていた。


「あっ、ふぅ〜ん……」

「帰ってくる途中でデス暗黒殺人蜂の巣があってさ。二人とも刺されて、あたしはちょっと腫れてお兄はこうなったってわけ」

「医者呼んでぇー!」


 デス暗黒殺人蜂は猛毒を持ち、そして刺された人によって症状も違うという恐るべき蜂である。しかも凶暴で巣の近くだろうがなんだろうが関係なく、発見した他の生物を殺戮して回る。稀人の死因でも上位に入るため、転移転生する際は気をつけよう。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 医者から薬を貰い、なんとか一命を取り留めたジロとナムヒ。彼らはある物を入手していた。ステラの部屋で一行はダラダラしながら今後の事と、そのある物についての話をしていた。


「これは龍玉、龍の魔力を込めたものとも心臓とも睾丸とも消化を良くするために胃の中に入れておくやつとも言われている」

「睾丸でないことを祈るよ……」


 アカネの心配とは裏腹に睾丸である場合もあるので要注意である。今回は違ったが。皆でそれを眺めていると、突如笑い声が響く。


「ハハハハー! 私はハーメリア! TS(性転換)しておしまいっ!」

「何急に!? うわっ」


 そしてその龍玉が突如光り、何も見えなくなる。しばらくして光が収まると、龍玉のあったはずの場所には小さなドラゴンがいた。


「私はハーメリア!」

「いや、ハーメリアなのはわかったけど……TSって?」

「自らの体を見てご覧なさい!」


 彼らは自身の体に違和感を覚える。あったはずのものが無くなってたり、無いはずのものがあったりしていた。


「え、お、男になってる!」

「俺は女に」

「どういうことですかこれは! この期に及んでまたトラブルとかダルすぎますけど!?」

「元に戻せ!」


 ナムヒがドラゴンの体を掴み締め上げる。ハーメリアはうめき声を上げた。


「ぐえぇ、意地でも三日後までは戻さないわよ〜〜〜!」

「なんでだよ!」

「趣味だから〜〜〜!!」

「じゃあ仕方ないか」

「仕方あるよ!?」


 その言葉に納得し、拘束の手を緩めたナムヒ。とにかく、この変な神龍が重要人物、重要ドラゴン物なのである。


「座右の銘は『面白くこともなき世を面白く』」

「面白くないやつの座右の銘じゃん」


 ハーメリア、神龍の一柱であり、女神ハーメルの中核を成す。座右の銘は面白くないけど。


「で、こいつをどうすればいいんだ」


 ナムヒはその小さな体をニギニギしながら言った。鱗がツルツルしてるのに握るとモチモチしていて手触りがいい。


「女神ハーメルを呼び出せるか」

「呼び出すには私だけの魔力では無理ね。他の神龍、あるいは膨大な魔力を持つ者が必要」

「えー。じゃあアカネさんを生贄に捧げれば足りますか?」

「やめてよ!」


 その提案を受け、ハーメリアはアカネの方をジッと見た。


「あなたは稀人ね、その膨大な魔力ならワンチャンいけるわ」

「ワンチャンて……わかった、じゃあどうすればいい?」


 するとそのドラゴンは彼女の頭の上に乗った。


「こっちで勝手に借りるわ。ぴょりゃりゃ〜〜〜〜!!」


 そして目を閉じて奇声を上げる。するとその体が光り始めた。


「掛け声気持ち悪!」

「また光るのかよ」


 光はナムヒのボヤキも包み込む。そして、光が収まると……何も起きていなかった。


「なにもないじゃないですか!」

「いや、ありありだよ」


 アカネが口を開いた。しかし、いつもと雰囲気が違う。


「そりゃ、男になってるからな」


 そうではなく、まるで中に別の人物が入っているような感じだ。


「あなた、誰です?」

「僕は広川太一ろ……ではなく、女神ハーメルだよ」

「ボケようとしたならボケ通せよ」


 女神ハーメルはアカネの体を借り、取り憑いたのである。


「僕が呼ばれたということは、また腕相撲がしたいということだね」

「そんなしょーもないことで呼び出すか!」

「わかってる、わかってるよ……僕は強いよ?」


 二秒でステラに負けた後、事情の説明を受けようやく本題に入る。


「ローナ姉さんはこの世界の人間が思うより頭の悪い女神だよ。ただ、厄介なことに女神だ。普通に戦うのは無理だよ。でも僕は悪しき神が現れた時の為に神霊の類ぶっ殺し武器を作った」

「神霊の類ぶっ殺し武器!?」


 神霊の類ぶっ殺し武器とは、言葉の通り神霊の類をぶっ殺せる武器である。もちろん、神霊の類でなくても問題なくぶっ殺せる、謂わばバランス崩壊武器である。神や聖者、アンデットが持つと激しい痒みと発疹が出る、スケルトンだろうが出るため、アンデットの主婦層では非常に恐れられている。


「世界中にいくつか存在する、この近くだとシュチパリアの名家の家宝として扱われているけど、三男坊が持ち出しているみたいだね」

「そんな、じゃあどこを探せばいいんですか!」

「そう言うと思ってその三男坊、ここにワープさせるよ!」

「マジですか!?」


 彼女が指を鳴らすと、両手剣を持った全裸の鳥人、全身に羽毛を持ち鷲のような頭部、鉤爪のついて手足、そして背中に翼の生えた人物が彼らの目の前に現れた。


「ぬおっ!? なんだ!?」

「彼こそがシュチパリアの伝説的騎士、エンヴィル・ホッジャの末裔、エルヴィン・ホッジャだよ」

「うむ、我輩こそがエルヴィン・ホッジャであり、そしてこの剣こそがロンギヌスの両手剣である。我輩の服はどこだ?」


 彼の持つ剣こそ、神霊の類ぶっ殺し武器の一つであるロンギヌスの両手剣である。かつて帝国の伝説的鍛冶職人ロンギヌス[誰?]が作ったと言い伝えられている。このロンギヌスシリーズには鉾、鎚、カタパルト、銛、鎌、鍬、釘、蝶番、大鍋、ストリギリスなどが存在する。一般的な鍛冶屋であった。でも槍は作っていないらしい。


「色々とツッコみたい部分はありますが、手間が省けてよかったですねぇ!」

「こいつチンコついてないぞ」

「鳥人のは中に収納されるらしい」

「へー。ションベンとかどうすんだろ」


 武器が揃ったことを喜ぶステラと、エルヴィンを見ながら全然関係ない話をしているナムヒとジロ。ツッコミ役のアカネが今は喋れないのでステラの負担は増えるばかりである。


「あの、我輩の服は……」

「女神ローナは近いうちに動く。どうせ碌でもないこと考えている、やめてくんないかなホントに」

「具体的にはいつ来るんです? というか、手を貸してはくれないのですか?」

「まず、いつ来るのかは当人にしかわからない事さ。そして力を貸す事は出来ない。借り物の体では十分に力を振るえないし、僕はもはやこの浮世(ふせい)に顕現する力も持たないんだよね」


 女神ハーメルは魔力を借りずにもうこの世界に存在することは出来ない。あまりにもその力を分割しすぎたのである。リボ払いとかそういう感じなのである。違うだろ。


「だから、あのローナに狙われていて、今やそれを倒す力を手に入れた君たちが倒すのが都合がいいね」

「ううむ、そうですか……」

「我輩事情が飲み込めないし、服が欲しいんだが……」


 女神の答えに落胆するステラであった。


「さて、そろそろ体を返すとしよう。久々に人と話せて楽しかったね」


 ハーメルがそう言うと、アカネの体が光り始めた。光が消えると、アカネは喋り出した。


「……だそうです。意識あったのに口が勝手に動いて気持ち悪かったぁ〜」

「さて、これでどうすればいいのかはわかったな。やつをぶちのめす」

「ああ。靴舐めさせてやろうぜ。ついでにうんこも食わせてやる」

「発想が野蛮っ」


 かくして、一行は女神ローナをぶちのめす剣とその持ち主を手に入れた!


「モノ扱いとは我輩心外だな」

「ていうか、一人称我輩のおっさんキャラ二人目だよ?」

「そうなの!?」


応援、ありがとー!

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ハーメリア…なんて恐ろしいTS小説の園! 吾輩獣人はいくらいてもいいよ
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