64.死の祝福を受けた稀人とあと雑魚三匹
「オデ、名前はハヤト……」
「ゲキョキョキョ、オレサマはレン!」
「うじゅらじゅら……ワタシはユウ」
ご丁寧にも唐突に名乗りを上げる三人組。名前だけはカッコいい感じであった。
「あ、ああ。俺はジロ」
困惑したジロも思わず名乗る。
「ゲキョキョキョ! オレサマたちは女神サマの報酬で普通の人間の姿に戻してもらうのが目的だァ!」
「……割と切実だな」
少し同情をするジロであったが、容赦するつもりは毛頭ない。彼は自身の腕に切り傷を入れ、妖術の準備を整える。
「どいつからだ」
「オレサマからだぜェ!!」
真っ先に名乗りを上げたのはレンであった。彼はガーゴイルに転生した人物のようである。
「オレサマの祝福は体をあらゆる物質に自在に変える能力! まさしくガーゴイルに毛が生えた能力さっ!」
そう言って、地面を蹴って跳躍するレン。その体はみるみるうちに岩のような皮膚へと変化する。そしてそのまま一直線に突進を仕掛けてきたのだ。
「岩なら斬ったことがある」
そう呟くと、ジロは刀を一閃させる。すると、彼の刀はレンの体をすり抜けたのだ。
「岩だけじゃねェぜ!」
レンの身体は液体へと変化していた。刀による攻撃は容易くすり抜けてしまう。
「ゲキョキョキョ! オレサマに物理攻撃は一切効かねェ!」
「“血の爆発”」
「へ?」
彼が呪文を呟くと、レンの腹部辺りの内部から爆発が起こり、破裂したのだ。刀についたジロの血が身体に混ざり込み、体内で爆発したのである。哀れ、転生者のガーゴイルの上半身と下半身は泣き別れの憂き目に遭った。唖然としている上半身にジロが自らの血を垂らす。
「ば、バカな、こんな呪文がダサい技に……!」
「全部粉々になったらどうなるのか、試してみようか」
「い、いえ、あの……参りましたので許してください……」
半泣きになりながら懇願するレンであった。そうしてジロは他の二人を睨む。
「次は誰だ?」
ジロの言葉に二人は顔を見合わせると、観念したようにレンの破片を集め始める。
「いえ、ワタシどもは……」
「オデたち、やめとく……」
そして、情けないセリフを吐いて、この城から立ち去ってしまった。きさらぎの鏡は諦めた様子である。
「この役立たずどもが何しに来たんだ! そんな呪文がダサいやつに降参してるんじゃない!」
不甲斐ない三人の体たらくにヨカゲは悪態をついた。そして、ジロは呪文がダサいと二回も言われて内心ショックを受け半泣きになってしまう。これで残るは二人のはずだが、もう一人の軽薄そうな男の姿がない。同時に、ステラの姿も消えていた。
「あ、あれ? いつの間に……」
戦いを眺めていたアカネも、二人の動きには気が付かなかったようだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
結論から言えば、軽薄そうな男はステラを拐って小部屋に潜んでいた。
「まあ、メインディッシュは取っておくとして、今のうちにエルフで楽しませてもらうべ」
男はステラを床に押し倒しており、その上に馬乗りになっていた。
「ひぃ……」
ステラは恐怖のあまり声も出ず、身体も硬直してしまっていた。ガチビビリして動けずにいたのだ。
「もっと抵抗するかと思ったんだけど。ガキってうるさいからな。まあ殴らなくて済むに越したことはないけど」
とはいえ先に言ってしまうと、この男の運はここで尽きた。男は短剣を抜くと、彼女の上着を乱暴に切り裂いた。しかし、彼女の懐にあった袋も一緒に切り裂いてしまうことになった。ユニコーンの角の粉末が、散らばったのである。
「んっ!? げほっ!?」
このユニコーンの角の粉末は万能薬の元である。これは精神面にも作用するものであり、ステラの恐怖は一時的に消え、体が動くようになった。
「えいっ!」
彼女は渾身の力で男を突き飛ばす。彼女は小さくてもエルフであり、実のところ筋力もそこそこあった。いつもジロにおんぶにだっこなのはクッソ甘ったれているだけである。男は突き飛ばされて、壁に頭をぶつけた。
「ぐわっ! いってぇ……」
「今です!」
ステラは立ち上がると男の元へと駆け寄り、股間目掛けて足を振りぬいた。
「ごあっ……!」
何らかの何かが二つ潰れるような音が小部屋に響いた。男もあまりの痛みに声も出せず、泡を吹いて倒れたのだった。
「ああ、もったいない!」
相手の沈黙を確認するや否やユニコーンの角の粉末をかき集め始めるステラ。そんな彼女のもとに、アカネが駆け寄ってきた。
「ここにいた! 大丈夫ステラ!? わっ、服が……!」
「服よりも粉末ですよ!」
「え、あ、そうなんだ……!?」
もはや恐怖を感じていないステラはアカネには目もくれずユニコーンの角の粉末をかき集めていた。とはいえ、ここは廃墟となった山城であり、屋内も風通しが良すぎる。そのため半分ぐらいにまで目減りしており、あとはどこかへと飛び去ってしまっていた。
「これだけしか残ってません」
「粉末の心配ばっかり……」
自身の経験もあり、アカネは気が気ではなかったのだが、今のところは案外気にしていない様子なので一先ずは安堵し、気を失っている男の方に近づく。彼は股間を抑えた体勢で横になっていた。彼女はその手をどかし、触れてみる。
「うわ~……これ潰れてるってやつなのかな……」
「アカネさん、そんな汚いもの触っちゃだめです!」
「うん、それは言えてる」
そしてふと、自身が回復魔法を使えることとその法則についてを思い出す。
「私は優しいからね、ちゃんと治療しておいてあげようかな」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
その頃、ヨカゲはもう一人の男には悪癖があることを思い出していた。
「あいつ……まあ、どうでもいい、俺には関係のないことだ」
「何をブツブツ一人で言っている」
ジロは刀を構えて睨みをきかせる。しかし、ヨカゲは余裕の笑みでそれを受け流した。
「ふ、くく、俺の力がそんなに見たいのか……俺の名はキラ・ヨカゲ。おそらく、最強のチート転生者だ。俺の能力は人に容易く死をもたらす」
「ちょっと待ってくれ、どっちが名字なんだ」
「……ナオコちゃんと同じことを言ったな」
「誰」
「キラだ! キラの方が名字!」
「ふうむ……」
怒りを顕にするヨカゲであったが、ジロは何やら考え事をしているような表情である。
「ヨカゲ……というのはまた、縁起のよくなさそうな名前だ」
「今度はケンジと同じことを言った!」
「誰」
完全に頭に血が上ったヨカゲはジロに向かって手をかざし、一言だけ呟いた。
「"死ね"」
「……っ!」
すると、ジロの体に異変が起こる。心臓に激痛が走り、全身の力が抜けてその場に倒れ混んでしまった。
「ふっ、ふふふ、いい気味だ……本当に俺のチートは最強だな」
応援、ありがとー!
評価ご意見ご感想待ってるヨッ!




