60.さらば友たちよⅡ
ジロ、ステラ、ウルバンら原住民組の稀人を見る目は日に日に厳しくなっていった。先日の処女厨ユニコーンに続いて稀人の襲撃があり、昨日はオムツを履かせてくる転移者、今日は相手を爆乳にする爆乳ビームを放つ転生者と遭遇したからである。稀人は全員変態だと思い始めているのだ。一応アカネとウルリーケは誤解であるという事はその都度説明してはいる。しかしながら異世界転移転生というのは精神、肉体、技術のいずれかが傑出したような人物でないと生きてはいけないので、ある面では間違ってはいないのかもしれない……。
「……この爆乳はいつになったら戻るんだ」
ビームをまんまと食らい、その筋の人が喜びそうな、お得な姿になってしまったジロが胸を押さえながら呟く。
「えー、戻らなくてよくないですか?」
同じくビームを受け、爆乳になったステラが答える。彼女は定期的に鏡を見て、自らのプロポーションにため息を吐いていた。
「美しい……」
うっとりとした表情で自分の胸を揉むステラ。元々は幼児体型なので、大きな胸にこっそり憧れを抱いていた。今はロリ巨乳となり、人生の絶頂期を迎えている。あとはもうずっと下り坂である。
「!? そんなの嘘でしょ、なぜなんですか!」
ところで一行は城塞都市カルサックを発ち、東へと進んでいた。その道中、アカネはずっと悩んでいた。自身を狙う稀人たちのことである。
「ジロさん。私は一人で魔石を探すことにするよ」
彼女は仲間たちを危険に巻き込むわけにはいかないと、ひとりで行動することを決めた。だがしかし、そんな決断を許すほど彼らは薄情ではない。
「それがいいですよ」
ステラは割と薄情であった。そんな彼女を無視してアカネは話を続ける。
「私がいたら、みんな巻き込まれる。今日まではなんとかなったけど、稀人は強力な祝福を持っている人が多いから、きっと危ない目にあうと思う。だから、私は一人で行くよ」
彼女の言葉を受けて、ジロは顎に手を当てて考える。そして数秒後、彼は口を開いた。
「ダメだ」
きっぱりと言い切る彼の言葉には強い意志が込められているようだった。
「……どうして? だって……」
困惑する彼女の目を真っ直ぐ見つめ、ジロは言った。
「俺がスケベ狼であり、おっぱいの大きい女の子をむざむざ逃すわけがないということだ」
「えぇ……」
困惑を通り越して呆れてしまうアカネであった。どうやら彼は前回の事もあって結構開き直っているようである。ジロはさらに続ける。
「それに、ウルバンとウルリーケはともかく、俺もステラも根無し草の冒険者。目的が無いと宛もなく彷徨うことになる」
「でも……それは自分たちでどうにかしてよ?」
「それはそう」
至極尤もなことを言うアカネにジロは頷いてしまう。
「いいから、お前が元の世界に帰れるよう手伝いをさせてくれ」
「そうですよ! 水臭いこと言わないでください!」
真剣な表情で彼女を見つめるジロと、前言を翻してなんか良い感じに持っていこうとするステラ。アカネにはそんな彼らの優しさを無下にすることは出来なかった。
「ごめんね、二人とも……」
「死ぬ時だって一緒ですよ!」
「それは一人で死んで……」
「ひどい」
ジロとステラはアカネに抱き着いた。しかし、二人は自身が爆乳化していることを忘れており、その爆乳に圧迫されたアカネは窒息しかけている。
「アカネ……!」
「アカネさん……!」
そんなアカネのピンチにジロとステラは感極まったように彼女の名を呼んだ。
「死ぬ〜〜乳圧で死ぬ~~~~~~」
事の次第を見守っていたウルバンとウルリーケの二人は呆れた様子でそれを眺めていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
しかしながら、ウルバンとウルリーケに関しては、彼らの目的がある。大陸の南岸の港町に到着すると、今度こそ本当に別れる時が来たのである。
「達者でな、お前たち」
「まあ、ジロはかなりのやり手だし、あんたも強い。ステラは足手まといだろうが、稀人が襲ってきたって平気さ」
別れの言葉を交わす二人に対して、ジロが口を開く。
「二人とも薄情だ」
「何を言う。我輩たちにだって目的がある」
ジロの言葉に答えたのはウルバンだった。彼は続けて話す。
「だがもし、我輩がお前たちを手助けできる機会があれば、喜んで手を貸そう。こう見えて我輩、顔が利くでな」
ウルバンはそう言うと、懐から一枚の羊皮紙を取り出し、ジロの背中に当てると文字を綴った。
「これは……」
「我輩の名の入った紹介状だ。もしビザンチスタンに用事があれば、有効に使うと良い」
「へぇ、結構偉い人だったんですねぇ」
多分誰も覚えていないだろうが、彼は一応大国の兵器技術者である。
「うむ。帝国領内であれば、その地の首長か徴税官が宿代や交通費を負担してくれる」
「それは有難い」
ジロはウルバンに礼を言い、紹介状を懐にしまった。
「じゃあな、三人とも。元気でな。暇になったら遊びに来てくれ、友人として」
「ウルリーケの力を借りて、立派な攻城兵器を作るからな!」
ウルリーケ、ウルバンは朗らかに笑って手を振ると、船に乗り込んでいった。
「……今度こそ、本当にお別れだよね?」
「さぁ、次の目的地でまた出くわすかもな」
アカネとジロは互いに微笑む。そして二人はしばらくの間、黙って海を眺めていた。
「なんでいい感じになってるんですか! ヒロインは私ですよ!」
そんな彼らを見たステラの叫びが港に響くのであった。
「響くのであった。じゃないですよもう!」
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