59.きもユニコーンとドスケベ狼
「俺はメメント森。ユニコーンに転生した男さ」
ローブを着た男の正体はユニコーンに転生した稀人であった!
「名前しゃらくさっ。ていうか、今まで人型だったのに、そのローブどうなってんの!?」
「非処女に教える義理はない」
そう言うと、地面に投げ捨てたアカネのパンツにツバを吐きかけた。
「あぁ! もうそのパンツ履けないじゃん!」
「まだ履くつもりだったのか」
ジロに呆れた視線を向けられるアカネ。彼女はパンツを回収した後、メメント森と向き合った。
「パンツはともかく、きさらぎの鏡を返しなさい!」
「黙れ淫売! 非処女に発言権などない! 無論、非童貞にもな!」
「えぇ……」
呆れた物言いに一同はドン引きする。そんな事はお構いなく、彼は話を続ける。
「やはりあの魔法を使うべきだったな、『経験人数がわかる魔法』を……」
「『経験人数がわかる魔法』……見かけるたびにいつも思うけど一体誰が何のために作った魔法なの!?」
「知らね」
ユニコーンの角が光ると途端に、一同の頭上に数字が浮かび上がってきた! 一同は驚愕する。
「えっ……!? ジロさん53人ですか!? 元妻帯者なのに!?」
「不誠実だな」
「我輩ちょっと引いちゃうなぁ」
「……十年冒険者やってると、断れないことも多くて……!」
ジロの頭上には53と表示されていた。いくらトモエがいい女を探せと言ったからとはいえ、ちょっと節操が無いのではないか。なお娼館などに殆ど行かずにこの数である。それとも10年で52人なら少ない方だとでも言うつもりなのだろうか。妻を愛していた、とか言ってたけど、これではそれもなんだか薄っぺらい感じである。
「ジロさん、言い訳はよくないですよ」
「いくらなんでも能動的に稼がないと無理であろう、その数は」
「スケベな男だね。サイテー」
ステラやウルバン、ウルリーケは非難の声を上げる。
「ん? そしたらジロさん、今までの私やアカネさんに対する言動、ちょっとやばくないですか?」
「そんなやばいこと言ったのか? 我輩引いちゃうなぁ」
「うわぁ……」
「言ってない、と、思う……いや待ってくれみんな、俺がスケベなのは今はどうでもいい。味方同士で争っている場合ではない、敵はユニコーンだ」
彼は刀を抜き、話題を逸らしつつ敵に向き合った。
「おやおや、俺よりもそちらのお嬢さんの方に目を向けたほうがいいんじゃないか?」
メメント森は不敵に笑う。彼の指す先には俯くアカネがいた。彼女の頭上には14という数値が出ている。
「淫売が! なぜ淫売という言葉が誹りになるのかわかるか? 尊厳を切り売りしているからだよ」
「とても嫌な言い方……!」
ちょっとギャグとしてお出ししていい領域をはみ出てそうな発言に、一行はドン引きする他なかった。
「お前もどうせ二束三文で売り払ったんだろ純潔を。ん? どうなんだ淫売女」
「私は、そんな事してない……!」
「へいへい正直に言っちゃいましょうよアカネさぶべっ!!」
ステラが囃し立てるがウルバンにぶん殴られる。しかしながら、アカネは少し驚いていた、ステラが殴られたことにではない、自分が思いの外冷静で、悲しいし悔しくはあるが、それでも怒りの方が強く感じていることにである。あとジロの数が思いの外多くて少し狼狽した感じもあった。おかげで怒りがふつふつと彼女の心を支配する。
「アカネに対し、あまりにも侮辱だ」
「そうだね」
ジロとウルリーケは憤りを隠さず、武器を構えた。
「ふふふ……俺は転生者だ、原住民風情が粋が…」
「黙れボケぇーー!!」
突如として怒りの声を上げたアカネの指先から、閃光が走った! 光は一直線にメメント森の額に突き刺さる!
「あぁぁーーーっ!!」
彼の額から煙が上がり、焼け焦げた匂いが漂った。
「人のプライベートな事をうだうだ言いやがって……どうでもいいでしょうがそんな事!」
「ぐあぁぁ……何を言うか、淫売めが……どうでもよくはないだろう、処女喪失なんて人生の汚点だろうが……!」
「その理屈だと全ての母親が汚点を抱える事になるんだけど!?」
アカネは激怒して物凄い勢いでメメント森に飛びかかり首に掴みかかった、そして呪文を素早く唱えると手から光の剣が伸びた。
「うおっ! すげー力! 一応俺は馬だぞ!?」
「おらぁ!!」
馬の体重はだいたい500kg。その重量を押さえつける腕力が今のアカネには湧いて出てきていた。そして、彼女は角目掛けてその剣を振り下ろす。スパッと綺麗に根本から切断され、地面に転がった。
「お、俺の角がぁ! ただの馬になってしまったではないか!」
「うるさい黙れ! あんたなんかこうじゃ!!」
アカネは首を掴んだまま馬体を持ち上げ、ジャイアントスイングの要領でグルグル回し始めた。馬は情けない悲鳴を上げている。そして彼女が手を離すと、遠心力で吹き飛び、近くの大木に激突した。メメント森は白目を向いて失神してしまった。
「はぁ……はぁ……あぁーん! ジロさーん!」
「よちよち」
「触んなエロ狼」
「えっ!?」
泣きながら駆け寄ってきた彼女を、ジロは優しく抱き止めようとしたが引っぱたかれた。
「凄いパワーですね、怒らせるのは程々にしときましょう……三日に一回とか」
「いや一度も怒らせるようなことするなよ」
ステラの言葉にウルリーケが呆れた顔でツッコミを入れるのだった。また、ステラは切り落とされたユニコーンの角を素早く拾い上げるとサッと荷物の中にしまい込む。
「しかし、なぜきさらぎの鏡を盗もうとしたのだろうな」
首を傾げながらウルバンは呟く。それに対してジロも同意を示した。
「ああ、確かにそうだ。もっと金目のものはあったはずだが」
そう言って彼は地面に転がっているメメント森の顔に蹴りを入れた。グハッと声を上げ、目を覚ました彼を睨みつけ、ジロは問い詰める。
「お前、あの鏡を狙ったのはなぜだ」
「ぐぅ……非童貞に教える義理はない」
「そっちのウルリーケとステラは処女だ」
「おい」
「ちょっと!」
すると納得したのか彼は素直に口を割った。
「いや納得すんなよ」
「……そこの淫売、アカネとやらは女神に目を付けられた事をお前たちに教える」
「えっ!? 私!?」
いきなり名前を呼ばれて驚くアカネ。
「きさらぎの鏡を何に使うかはわからんが……全ての転移者、転生者がお前からきさらぎの鏡を奪いにやってくるだろう……」
一同は顔を見合わせた。どうやら何か大変な事態に巻き込まれてしまったようだ。
「祝福を持つ者たちから果たして逃げられるかな!? いや、逃げられまい! ふはははははっ!!」
高笑いするメメント森であったが、突然その体が宙に浮いた。見ると、アカネの手には彼の足が掴まれている。そのまま高く持ち上げられたかと思うと、思い切り地面へと叩きつけられた。短い悲鳴を上げた彼は、そのまま再び気絶してしまった。
「なんかムカついたからつい……」
「……まあ、とりあえずこの街を離れようか」
脱ぎ捨てたローブの下に隠してあったきさらぎの鏡を回収すると、ジロの提案に従い一行は先を急ぐことにした。
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