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のんきなエルフとくたびれオオカミ  作者: ターキィ
野望の女はやべーの女の章
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47.やべー女の野望


「えっ、つまり今度選挙があるけど対立候補の人が急進派なのでもしも当選したらおそらくえらいことになるからそれとなく法の範囲内で妨害工作をして欲しいですって!?」

「説明ありがとう」

「どうも」


 ステラによる高速状況説明に礼を言いつつフロローは頷く。


「お前たちなら受けてくれると思っていたよ、ログレスの英雄たち」

「おやおや、私達の名前はこんなところまで広まってるみたいですよ!」

「あのちんちんのデカさは確信するには十分だった」

「そこで判別するんですか!? いや確かにそういう噂も一緒になってましたけど……こんな噂誰が流したんです?」

「さあね」


 アカネは不自然にも目を逸らした。いつぞやの酒場でちょっと口が滑った事を思い出しながら。

 さて一行は神龍教教会の宿坊に来ていた。フロローの案内により無料で使わせてもらえるが、代わりにますます依頼を受けないといけない空気になってしまう。


「そもそも、法の範囲内で選挙を妨害しろってのが無理な話だろ。選挙を妨害する時点で不正行為だ」


 ウルリーケの言葉に一同同意する。いくらジロたちがログレスの英雄だろうがちんちんが大きかろうが、難しい依頼である。


「法の範囲外では?」

「それならまあ……いや、私は犯罪者になるのはゴメンなんだけど」

「しかしウルリーケさん、バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」


 とんでもないことを言い始めるステラ。いつもの事なのでみんなスルーするが、フロローはそうではなかった。


「私が当選した暁には、有耶無耶にすることは不可能ではない」


 彼の言葉を聞いて全員が驚いた顔をした。とても聖職者の口から出た言葉とは思えなかったからだ。そんな様子を察したのか、彼は言葉を続ける。


 「今の司教は有能だがもう歳だ。彼は各地を周り文明の発展にその人生を捧げた。彼の意志を誰かが継がねばならない、どんな手を使ってでもな」


 その言葉に皆が沈黙し、やはり渋い顔をする。熱意は結構なことだが、彼らはフロローから大事な話をしてもらっていないと考えていた。そんな彼らの表情を見て、眉をひそめつつフロローは口を開く。


「……一人につき金貨を一枚ずつ」

「よし、みなさんやりましょう!」

「全くしょうがないね」

「うむ、義を見てせざるは勇無きなりとも言うしな」


 露骨に態度を軟化させる一行であった。なんだかんだ言っても金が欲しいのである。それをタナカは唖然とした顔で見つめており、アカネは彼の肩をポンと叩く。


「これが冒険者という人種だよ……」


 とにかく、その日は宿坊に泊まる事となった。大部屋を借りるとそこかしこでゴロ寝し始める一行。


「打ち合わせしましょうか! 明日どこ行きます? あ、ぶどう園に行きましょうよ!」

「観光の打ち合わせじゃん!」

「好きな子いますぅ〜〜!?」

「修学旅行の夜か!」



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 同じぐらいの頃、竜人の冒険者フィーバスがエスメラルダの私室を訪れた。


「なんでこんなクソ性格が悪い男がヒロインといい感じになるのよっ!!!」

「あー、読書中すまない。ちょっといいか、エスメラルダ。フロローのやつ、例のログレスの英雄を引き入れたみたいだ」

「…………ご苦労、フィーバス。しかし私はあまり心配をしていないわ。どうせ富裕層しか投票できない」


 司教選挙は、教会に一定額のお布施をした者しか投票できず、金額によって票数も増えるのである……現代の我々からすれば大変な不平等に思うかもしれないが、この時代にしてはかなり民主的な投票システムである、投票できるだけマシなのだ。そして、エスメラルダの主たる支持者層は富裕層である。彼らの多くがこの立地に恵まれた月の港に移り住んだ移民や商人であった。彼女自身も、移民の生まれというのもあり、それも支持に繋がっている。ただ、彼女個人は彼らの事などどうでもよいと考えていた。彼女にとって重要な事はたった一つだけで、それは自身の受けた苦痛を他の人間にも味わわせたい、それだけだった。のうのうと暮らしている普通の人間に対する嫉妬と不満が彼女の燃料であった。彼女の目的は福祉政策にある。現在教会で保護されている呪いを受けた者や重い傷病者を、市井で暮らせるようにする……現代からすればむしろ先進的とも言える方針だが、その手段が問題であった。市民に彼らの扶養義務を課すのだ。税率を上げるという意味ではない、そのままの意味である。そして、富裕者たちは弱きを助けるのは財を成す者として当然のことだと考えている。証拠に、公衆衛生の為に多くの資金を教会に提供しているのは彼らである。富裕層の多くはまともな人々であり、これも慈善事業だと心から受け入れることだろう。彼らの邸宅なら傷病者の客人一人や二人、増えたところでどうという事はないだろうが、そうでない大多数にとっては大きな負担になる、ましてや赤の他人だ。彼女の支持者たちはその辺りの想像が全くついていなかった。彼女の八つ当たりに付き合わされるのは結局は貧困層なのである。


「エスメラルダ、俺冒険者だから学がなくて……もっと短くまとめてくれるか?」

「つまり私はね……ってなんで自分の悪事を自分でまとめなきゃいけないの」

「それもそうか。じゃあ、地の文の人に任せるか」


 ざっくりと言うなら、状況はエスメラルダが優位であり、彼女の目的は誰も彼もに介護の苦しみを負わせるというものである。彼女には弱者を助けようなんて気持ちはこれっぽっちも無い。ただただ自分が受けてきた苦痛と屈辱を他人に与えたいのである。おそらく彼女は政治家も神官にもしちゃダメなタイプ。


「なるほど、理解できた」


 そこへ、扉を叩く音がする。どうやら来客のようだ。彼女は苛立ちながら口を開く。


「フィーバス、そこの洋服箪笥に入ってて、そして目も耳も閉じていて」

「……ああ、わかった」


 彼が箪笥の中に入ったのを確認すると、彼女は来客を招き入れた。現れたのは耄碌したかのように腰の曲がり、顔の醜く歪んだ、彼女と同じ髪の色をした半獣人の男であった。


「人が来てる時は来ないでっていつも言ってるよねお兄ちゃん!!」

「ご、ごめん……でも、ほら、花が……」


 兄と呼ばれた彼の手には、一輪の花が握られている。


「咲いたんだよ、今日。最近は暖かくなってきたから……シスターさんと一緒に育てていたんだ」

「へえ、そう、ふーん、成人した男がさぁ、妹に持ってくる贈り物がこれってわけ? 子供じゃないんだから持ってくるならもっとマシなもん持ってきなさいな!」

「ごめん……」

「で、用事はそれだけなの!? これ以上顔なんて見たくもないわ、もう用事無いなら帰って!」

「う、うん……花は、ここに置いておくから」


 そう言って兄は、手近にあった棚の上に花を置き、しょげた様子で去っていった。兄がいなくなると同時に戸棚の中からフィーバスが這い出てきた。


「おい、エスメラルダ……」

「家族の問題に口を挟まないで」


 彼はやれやれと言った表情で肩を竦めると、その場に座り込んだ。それからしばらく沈黙が続く中、エスメラルダは棚に置かれた花を手で握り潰した後、ジッと見つめ、ボロボロになったそれを飾ってある花瓶に挿し直した。


「……おい待て、なんでそんな事をする。普通に挿せばいいだろ」

「……」

「わざわざなんで握り潰したんだ、飾るなら綺麗なままの方がいいじゃないか」

「それは……」

「気に食わないなら飾らなければいい。捨てるとか、踏み潰してそのままにしておくとか?」

「あのねぇ」

「地の文の人もそう思うよな?」


 うん。


「地の文に話しかけるな!」


どうでもいい設定

 エルフ種

原種であるダークエルフとそこから分派した種族の総称。オーク、フルノイを除き非常に長寿。

全体の共通点は耳が尖っているということ。

その昔、ダークエルフは肌の白い部族ハイエルフを追い出した。

ハイエルフは髭の生えた部族ドワーフと魔法の使えない部族オークを追い出した。

そのうち自ら森を出奔する者たちもいた、ノース族は北へ、フルノイ族は東へと向かい生きる道を見出した……。

これはエルフ達に伝わる伝承の要約であり、概ね近いことが起こったと考えられている。

人類種が最初に出会ったエルフ種はハイエルフであり、日常会話でエルフと言う場合は通常ハイエルフのことを指す。

以下は大まかな特徴。

ハイエルフ :肌白い、ヒゲ生えない、身長普通、女尊男卑

ドワーフ  :肌白い、ヒゲもじゃ、身長低い、男尊女卑

オーク   :肌緑、牙生えてる、筋骨隆々高身長、実力重視(実情は男性優位)

ダークエルフ:肌黒い、ヒゲ生えない、身長普通、男女平等

ノースエルフ:肌真っ白、ヒゲ生える、身長高め、男尊女卑

フルノイ  :肌黄色、ヒゲ生える、身長普通、性役割重視

 

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