29.無限合コン編
四人は合コン会場に来ていた。クジラの魔物、ポリーヌはいつの間にか女性の姿に変わっており、服装もおしゃれな感じになっていた。付近の港町ケレースに存在する帝国時代に作られた大きな旅館が今回の合コンの会場である。港町ケレース、魔王国に北岸に位置する、ブリソニア島との交通の要衝である。魔王国は西方世界の大陸の北西に位置する国であり、一行は無事……ではないが、大陸に辿り着くことが出来ていた事に気がついた。
「しかし、この時代に合コンなんてあるの? 歴史警察が怒らない?」
恋人のいない男女による出会い目的の集まりなんて古今東西あったのではないだろうか? そもそも歴史警察が来るほどこの作品人気が…
「はいはい! ま、そもそもファンタジー世界だからね……」
アカネが虚空に向かって話しかけているので、残りの三人は心配になっていた。ともかく旅館に入ると、大理石で作られた厳かなロビーには、すでに参加者と思われる人たちが集まっていた。
「合コンって雰囲気じゃないでしょこの建物!」
この帝国時代から存在する老舗旅館は泊まらずともレストランを利用できる。もちろん、合コンの結果によっては宿泊するのも良いだろう。高級な食事とお酒を提供することで、若いカップルの誕生に貢献しているのある。
「あ、こっちこっちー!」
一人の男性、いかにも魔族といったふうの頭に角を生やした男性が手を振りながら声をかけてきた。その男性の周りにいる三人も、人類ならざる種族であった。一人は大量の髭を蓄えたドワーフの男性、一人は全身が半透明のスライム人間、そしてもう一人は骸骨がローブを着たような見た目の人物であった。
「うわぁ……すごいメンツだね」
「相手にとって不足なしだよ」
「ジロさ……トモエさん、あなたが一番不足だよ……」
ところで、魔族、魔人、魔物について説明をしなくてはならない、長くなるぞ。魔物という存在は魔力の干渉を特に強く受け進化した、文明の脅威となる野生生物の総称であり、他の一般的な動物よりも比較的高い知能を有する。その中でも知性と社会性を両立するように進化したとされているものが魔族と呼ばれる。両方共言語を解するが、魔物のそれは所詮鳴き声に過ぎないと断じられている。例を挙げるなら、魔王国などの文明国家にて社会生活を営む住民や位の高いドラゴンは魔族であり、悪いドラゴンや妖怪デスモモンガなどは魔物である。魔族のうち、人類種に似た直立二足歩行のものは魔人と分類される。容貌は尖った耳が特徴的で一見してエルフ種に似ているが、翼や角が生えていたり、半身がそれぞれ別種の特徴を持っていたりと、多種多様な特性がこの種の特徴であり、『一人一種』と表されることもある。これは扶桑の狼人の魔物学者、ミヤザワ博士により定義されたものであった。なお彼は常に頭にコカトリスを載せていた変人であり、帝の御前でもそれを取らなかったという。とはいえ、これらの分類は政治的にもセンシティブなものであり、あの部族は魔人じゃないだの、あいつらは魔物だの、色々と揉める原因となっている。長年の戦争により他の人種、特に人類種からは目の敵されることも多い。事実、実力主義的な社会であり、治安も良いとは言えないし、文化価値観が本当に魔物スレスレな蛮族もいる。他の種のように強みのある尖った特性を持たない種族である人類種は、こういった魔人のならず者たちにとっては狙いやすい獲物であることも敵視される原因である。さて、魔人には…
「本当に長いね!?」
「……先程からどうしたんですか?」
「なんか変なものでも食べたのか」
「い、いや、その……ちょっと妄想に耽りすぎただけ、かな! あはは……」
その答えに怪訝そうな表情をしつつも、とりあえず四人は彼らと合流し、予約されていたであろう席についた。そして彼らは各々自己紹介を始めた。まず、先ほど話しかけてきた男性が口を開く。
「僕はドニ。見ての通りただの魔人さ」
単なる魔人、角の生えたエルフとも呼ばれている、他者の感情を喰らう悪魔や淫魔とは別の種族である。
「私は見ての通り、スケルトンのロラン。どうぞよろしく」
スケルトンはアンデットに分類される。繁殖は不可能である。
「へぇ、スケルトンだけど合コンに参加するんだ!」
アカネがそう尋ねると、スケルトンのロランは少しムッとして答えた。
「そういう言い方は心外ですね……」
「あ、ごめんなさい……」
「まあスケルトンなので恋愛感情とかそういうのは一切ないですけどね」
「ないんかい。じゃあ、食事目的?」
「いえ、スケルトンなので食事の必要とかもないです」
「何しに来たの?」
続いてドワーフの男が立ち上がった。
「俺はディートリヒ。ドワーフだ」
「げっ、ドワーフ!?」
彼の自己紹介に、ステラがあからさまに嫌な顔をした。ドワーフとハイエルフは特別仲が悪い。
「くっさい坑道の臭いがすると思ってましたよ!」
「俺もクサレ腐葉土の臭いが充満してると思ってたからおあいこだな」
二人はお互いを睨みつけるとフンッとそっぽを向きあった。この二人は本当に相性が悪いようだ。最後に口を開いたのはスライム人間だった。彼は透明度の高い体を持ち、ぷるんとしたボディをしている。
「騒がれると困るねぇ、揺れるんだよ、体が。声の振動でね」
「えっ、天の……」
「はじめまして、俺は見ての通りの悪いスライム族じゃない、テンニース。かなりロマンチックを愛する男さ」
「テンペ……」
彼の一言一言にアカネが謎の反応をするため、みな怪訝な表情になるのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「かんぱ〜い!」
女性陣も自己紹介を終え、合コンが始まった。料理を食べつつ雑談をする中、話は自然とお互いの恋愛事情に移っていった。
「あたいは、寡黙な男が好きさね」
(それ自分のことじゃん! ジロさんってば!)
ジロ、もといトモエはそんなアカネの心の声を無視して話を続ける。
「それでいて、守ってあげたくなるような男……」
「あ、そうなんですね」
しかし話し相手はスケルトンのロランであり、あまり興味はなさそうだ。いよいよ何をしに来たのかわからない骨であった。
「エルフといると飯が不味くなる」
「はぁ!? ドワーフといる方が不味くなりますが!? エルフとドワーフで倍不味くなってるわけですがどう責任取ってくれるんですか!?」
ディートリヒとステラは言い争いを続けつつ、ガッツリ食事を摂っていた。全く不味くなっていないようである。そんな中、アカネはテンニースに絡まれていた。
「お嬢ちゃん、ゼリー寄せを主食にしてみないかい……?」
「嫌」
「美味しいよ……食べてごらん……」
「気持ち悪いよ!」
そんな様子を遠目に見ながら、ドニとポリーヌは窓際で酒を酌み交わしていた。
「ぽ、ポリーヌ……」
「ドニ……」
「あ、君から、いいよ、話して……」
「えっと……」
なんだかいい感じの雰囲気になっていた!
「ふっ、あの二人がようやくくっ付くようで安心した」
「そうだな」
テンニースとディートリヒはそんな二人を影から見守っていた。
「どういうこと?」
物陰から腕を組んで保護者面をしている二人にアカネは尋ねる。するとディートリヒは口を開いた。
「俺が説明する。それは」
「この合コンを企画したのはこの俺テンニースなんだぜ」
「それが」
「あの二人はじれったくてなぁ、お互いに想い合ってるのは傍から見てもわかる」
「それで」
「ドニのやつに言ったのだ、『独り身なんだから女の子集めてパーっとやろうぜ』ってな」
「……」
が、ディートリヒは殆ど喋らせてもらえず、全てテンニースが答えた。
「なるほど、そういうことだったんだ」
しかし大きな問題があった。このままではオチが付かないのである! その事に気がついたステラが騒ぎ始める。
「マズいですよ! 破局させましょう!」
「やめなさいステラ!!」
「このクソエルフ!」
騒ぎを聞きつけた店員に四人はつまみ出されてしまった。
「やっぱり、あたいは守りたい女だよ……」
「あ、そうなんですね」
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