士気の無い軍隊
グラドニア公国。
マヤノリザ率いるエネビット公国に敗れ、国力の低下を招いていた国。
元々は帝国内でも有力な国だったのだが、今の王の失政によりその力は削がれ続けていた。
「今こそ好機!」
王は叫ぶ。
神教がグラドニア公国に、ディマンド公国への援軍を要請したのだ。
グラドニアは親神教で、今帝国本国にいるアラニア・エネビット連合には反感を持っていた。
グラドニアはアラニアとは遠く離れている。
そのため戦争にはならなかったが、テディネスは何度かグラドニアに攻める計画はたてていた。
ただ距離の問題で周りが止めていただけ。
「陛下。戦には準備が必要です。我が軍はエネビットとの戦で主力を失っております。立て直しの時間が必要で、とても戦争など……」
大臣が反対する。
今のグラドニアはとても他国にかまけてる状況ではなかった。
しばらく戦争がなかったグラドニア公国は、長い平和でボロボロになっていたのだ。
汚職と馴れ合いで、軍が軍としてなりたっていない。
そこをエネビットに見抜かれ敗北したのだが。
「今、神教につけば! 見返りが大量にある! それに陸軍が打撃を受けても! 海軍は無事だ!」
海軍。その言葉に微妙な顔をする家臣達。
以前海賊に襲われた商船を助けるために出撃したのだが、返り討ちにあったのである。
海賊に負ける軍。
そんなのが援軍に行っても。
そんな空気の中
「いいから出陣だ! 海軍ならばすぐに出れるだろう! オーディルビスに宣戦布告だ!!!」
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グラドニア公国の船団に襲いかかる。
向こうからは矢が飛んで来るが
「かまわず進め!!! 向こうの船は脆い!!!」
こちらの船からは弓もあるが投げ槍と投げ斧。
出来るだけ近づいてから投擲を行いたいため、一気に迫っている。
向こうも逃げながら弓を射れば効果的だったろうに、迫るこちらに、向きを変えて真っ正面からぶつかろうとしている。
「船の戦いは、最終的にはぶつかり合いの白兵戦です。向こうはそれを狙っているのでしょうが」
ディルアルハの慎重な声。
「いい訓練になりそうかしら? とりあえず実戦はしたかったの」
オーディルビスは貧しい国。
だが、船だけは常に揃えていた。
木は山沿いに大量に生えている。
畑を作るために常に森を切り開こうとするが上手くいかない。根っこが深くまであり、いくら切り倒しても、掘ってもキリがないのだ。
だがその為に行った開墾で木が大量に余り、それで船を作っていた。
大型船な上に頑丈に作られている。
そのまま船は速度を上げ
「投擲開始!!!」
各船から一気に投げ槍と投げ斧が投げ込まれる。
我が軍はディマンド公国の船を囲むように移動する。
『うおぉぉぉぉぉ!!!!!』
叫び声が響く。
だが程なくして
「タチアナ様!!! 白旗が!!!」
僅か10分程度で相手は下った。
「元々士気が異常に低かったのね」
「はい。こちらの指示にも大人しく従っております」
なんでも王に命じられて援軍に向かっていたが、国の大将軍や大臣からは
「できるだけ戦うな」と言われていた、と。
「武器はすべて取り上げて、食糧も半分没収。んで、あいつらどうする?」
ディルアルハと相談。
降伏されても困るのだ。
まさか連れて行くわけにもいかない。
「はい。そこでご提案がありまして」
「ええ」
「グラドニアを攻めてはいかがでしょうか?」
キョトンとする私。
「宣戦布告は向こうからされています。攻めてもなんの問題もありません。今グラドニアの海軍は空なのです。これだと簡単に軍港を占領出来ます。そこで大量の食糧と武器を取れますし、船も奪えるかと……」
なるほど、なるほど。
「素晴らしいわ。そのまま殴り込みなさい」
「はっ!」
という訳で、我が軍はちょっかいを出してきたグラドニア公国に殴り込むことになった。