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援軍との鉢合わせ

 船に乗って10日。

 まだディマンド公国は遠い。


 オーディルビスからディマンド公国に行くより、帝国本国に行く方が遥かに早い。


 聖龍大戦で帝国本国に攻め込んだ二代目も、地の利を生かしたんだろうな。


 でもそれは下策。

 なにしろ帝国本国の南方には龍姫率いる龍族がいる。


 我がオーディルビスは、聖龍大戦で龍族と戦い破れたのだ。


 龍族は脅威。

 基本的には戦うべきではない。



「……まあ、どっかではぶつかるんだろうけど」

 なにしろ兄の目的は神教の打倒。


 とりあえずあの疫病の犯人探しなのだが

「……自然発生としか思えないけど……」

 オーディルビスと聖女様の大陸で流行ったが、帝国では流行しなかったから兄は疑っている。


 だが、資料を取り寄せると、帝国は流行り病を確認すると海上封鎖をしている。


 きちんと対策をとった形跡があるし、それがうまくいったとも言える。


 また同じく疑っていたバディレスが帝国に逃げた理由は


「帝国では流行ってなかった」という単純な理由だった。


 現に関係者への尋問でも

「元々は南群諸島に逃げる予定だったが、流行り病の噂が聞こえて帝国に逃げた」

 と皆が述べている。

 そこで、神教と接触し利用された。


 話としては不自然ではない。


 兄からの話を聞いた後いくら調べても証拠は出てこない。


 これはこれで困る。

「やっぱり自然発生でした」でお兄様が納得するとも思えない。


「この戦争、止め時が勝負ね」



 陸地が見え始めていた。

「タチアナ様、あれが目指す大陸ですが、ディマンド公国はまだ先です」


 長い。


「こんなの往復なんてしてられないわ。やはり何としてでも陸戦で占領までするしかない」


 海戦で勝っても、陸戦で苦戦すれば無理をせず引き揚げる予定だったが、こんなの往復なんてしてられない。


 なんとしてでもディマンド公国を占領して、ここに拠点を作るしかない。


「はい。それで陸戦ですが……」

 ディルアルハと相談。

「ええ。槍投げ主体で戦う話はしたわね。その上でもう一つ。我々の強みを活かす」


 どうやったら勝つか。

 必至に智恵を絞った。その答えが


「船は動き続ける中で相手と戦う。我等は船のように動き戦う」


 その言葉にキョトンとするディルアルハ。


「いい? 歩兵は激突したらどうなる? 立ち止まって武器を振るうわよね? 槍兵も突撃して刺さったら止まる。 戦いは押し合いのような形になる。例外は騎兵。動きながら戦うけれど」


「ええ。それは分かります」

「私達の軍の何が厳しいのか。それは歩兵が圧倒的に不足していること。突撃してぶつかり合ったら、数で押されて負けるわ。逆に我が軍の強みは遠距離攻撃。そのため、前衛300はあくまでも攻撃を防ぐ役目。そして軍は一体となりひたすら動き続ける。ぶつかり合わない。ぶつかるのを避け、ひたすら後方からの攻撃に特化する」


「……動き続ける……し、しかし。兵の体力が持つかどうか」


 あー。そうだよね。そこは心配していた。

 騎兵ならできるんだろうけど。


「短期決戦に持ち込めない?」

「遠距離攻撃だけで相手を壊滅状態にはなりません。時間はかかるかと」


 くそー。必至に考えたのに


「……前衛だけ動き続けるか……少し考えます」



 国を出発して20日。

 飽きた。


「まだー?」

 陸は見えてるから余計ね。


「ええ。まだ時間は……」


 まあ予定は30日でしたからね。

 まだ10日……


「……し!!! 将軍!!! 大変です!!! 前方に大量の船が!!! 20隻はあります! 海賊船の規模ではありません! 軍船かと!!!」


 見張りからの大声の警告。


 慌てて指差す方を見ると、確かに粒のような大きさにしか見えないが大量の船が見える。


「ディマンド公国?」

「……国かなり離れております。ここで戦うとは……」


 別件かしら? いやそんな偶然があるとも思えない。


「警戒しなさい! 全軍武装!!!」

 うちは5000連れて行くために大型船10艦に分けている。どれも巨大な船。


 多分向こうの船はこっちよりも小型だと思われる。なにしろ船の数ならうちは世界有数だからね。


 兵士達が弓と投げ槍を構える。

 少しずつ迫ってくる船。


 やはり中型船のようだ。

 そこまで大きくはない。

 だが、そこに掲げられた旗。


「ディマンドじゃない!!!」

 叫び声。


 相手も槍と弓を構えている。

 だがそこに掲げられた国旗は


「グラドニアです!!! 反アラニアで、神教派のグラドニアの旗!!!」


 これ、多分だが

「ディマンドへの援軍か!?」


 元々疑えば良かったのだが、向こうも私達の進行方向に向かっていたのだ。

 つまり、こいつらもディマンド公国へ向かっていた。


 うちらの船は風魔法の力でスピード早いからね。


 どんどん近づいてくるうちらに気付いて武装はしてるみたいだけど



「タチアナ様! ディマンド公国には宣戦布告は……」してないね。

 でもこいつらは明らかに援軍として向かってるはず。


 私は急いで遠距離会話装置を掴み本国へ連絡。


「こちらタチアナ!!! グラドニアから使者は!?」

 私の絶叫に


『た、タチアナ様!? ちょうどグラドニアの使者が面会を求めて……』

 宰相の声に


「今すぐ受け取れ!!! 受け取り次第叫べ! 今グラドニアの軍を捕捉している! こいつら援軍で戦おうとしている!」


 私はディルアルハに制止の合図を出している。


 船のスピードも緩めた。

 後は号令待ち。


『タチアナ様! 受け取りました!』


「ディルアルハ!!! 宣戦布告は為された!!! 今すぐおそいかかれぇぇぇ!!!」


 また一気にスピードを上げて、グラドニアの船団に迫った。

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