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特殊な軍隊

「宣戦布告の文章を書いてもらう」

 こういうのは形式がある。


 ちゃんとこの国にも外交部があり、こういう文章を書く専門家がいる。


「はい。オーディルビスはかつて帝国と聖女様の国々に宣戦布告した文書が残っております。そちらを基本に作り上げるということでよろしいでしょうか?」


「そうね。前例に従いましょう。ちなみになんて書いてあったの?」


「はい。基本的には至極簡潔な内容です。要旨を述べれば、我が国の貧困は帝国……失礼、こちらは聖女様の国々ではそこが書き換えられてはおります……帝国における海上貿易の不平等さに直結する。この不平等な状況を解決するべく、戦を行う。という内容です」


「……海上貿易の不平等ね……」

 関税とかか。ここらへんが揉めるのは、海洋国なら当たり前。現に何回もディマンド公国とは関税で揉めていた。


「悪くないわね、そこを書き換えるだけで済むかしら?」

「愚案を申しますに、我が国とディマンド公国はそこまで交易は多くありません。何分遠いですからな。交易ならば帝国南部、本国側の方が近い。実際に当時攻めたのは帝国南部でした。

 これだけですと、理由としては弱いかと……」

 なるほど。しかし、こいつ結構使えるな。

 うちにも人材はそこそこいて安心する。


「付け足すとしたらなにならいい?」

「……そうですね……戦争の理由ですから、基本的には深刻なものを書くべきです……例えば外交的無礼など」


 無礼ねー。


「私の即位に挨拶は来てなかったわね」

「……それだけですと……あ、王族の死に喪に服していないのは無礼となります。王の兄、ディナン様が亡くなられた時に、例えばパーティーをやっていたとか……そういうのがあると」


 私は満面の笑みで

「素晴らしいわ! そういう理由に仕立てあげなさい! 兄への無礼を討つ! この度の戦争はその旗印で戦う!」


 うちだって、どっかの王族が死んだ時には喪に服す。だが、王なんて多いから、友好国以外は無視する。

 当然ディマンド公国だって無視してる筈だ。


「かしこまりました。事実関係を調べ記載致します」

「出来るだけ急ぎなさい。憶測で結構。戦争はすぐに始まるわ」



 30日待つのも辛いな。

 と思っていたけれど、それはすぐだった。


「ティルアルハ、現状の問題点は見たわ。これは船上で解決できる?」

 ディルアルハは真面目で、私の求めた資料をすぐに出してくれる。


 だがそれを見れば見るほど私は憂鬱になっていった。


「訓練では限界があります。本来であれば即実践ではなく、友好国との模擬戦闘も必要になるレベルです。白兵戦が可能なのが300しかおりません。これでは陸上戦が出来ません」


 我が国は海洋国。

 船と船の戦いとなる。その際になにが必要かと言うと飛び道具なのだ。


 弓だけでなく投げ槍、砲撃、あと魔法などもある。


 だが砲撃は火薬が貴重すぎて不可。

 魔法は元々使える人数が少なすぎる上に、戦争に使える魔法は限られている。


 うちはその中では割と数は揃ってるようなのだが、とにかく問題なのが白兵戦。


 海上の戦いで終わった南群諸島と違い、ディマンド公国は内陸での戦いもある。


 ディルアルハにそのあたり、戦のシミュレーションをさせた結果がこれだった。

 白兵戦可能な人数が300人。


 5000いて、300。

 つまり4700は遠距離攻撃しか出来ないということ。


「最近の戦を研究しておりましたが、アラニアの戦いに対する対抗策として、離れて戦う理論が検討されております。ですから、遠距離攻撃する兵士が多いこと自体を嘆く必要はないのですが、いくらなんでも300しか前に出れないのは……」


 思わず頭を抱える。

 こういう問題点も、結局トップの大将軍を殺して、有能な人間に変え、戦争準備させてやっと分かるレベルなのだ。


 現状把握が全く出来ていなかった軍に勝ち目などあるわけがない。


 戦の時期を伸ばすか?

 いや、伸ばしたところで良くなるとは思えない。


「……戦う必要はなく、大きな盾を構えて前線にいさせるのとかは?」

 もうそれぐらいしか思い付かない。


「はい。私もどうしてもの時はそれをしようかと。ただ、300しか剣と槍を使わないのは……その。戦いになりません」


「剣はわかる。槍はそこまで訓練が必要なの? 私から見たら弓の方が訓練が大変だと思うけれど」

 剣は急所に当てなければ鎧に弾かれる。

 闇雲に振っても当たるまい。


 だが槍は勢い良く突っ込むことで多少の鎧も貫通する。

 槍兵は槍を失えばすぐ後ろに下がり予備の槍を後方部隊から受け取る。そして予備の後ろの兵が突っ込むことを繰り返す。


 歩兵の基本は槍兵なのだが。


「はい。そこが我がオーディルビスが特異な所です。投擲能力というのは弓も含め仰るように訓練が必要。槍の方が本来は早く訓練が終わります。ところが我が国は農業が殆ど盛んではなく、物を振る、物を突くことが日常ではないのです。ではなにが日常か? それが投擲です。山から降りてくる獣を遠くから弓などで攻撃する。海の大きな魚を網や投げ槍など投擲で捕まえる。日常的に物を投げる事に慣れているのです」


 ああ!

 と叫びそうになった。

 なるほど。そういう理由なのね。


「投げ槍と言ったわね。陸戦で投げ槍は使われている?」

「陸戦でですか? いえ、味方に当たりかねません。弓と違いそこまでの精度はありませんから……」


「苦手な白兵戦可能な人数を増やすよりも、得意な投擲能力を伸ばす方が話が早いわ。攻撃は投げ槍と弓矢、白兵戦は基本的に防護し、後ろからの遠距離攻撃に賭ける」


「……な、なるほど。……確かに、それなら……」

「時期はずらさない。今から出来ることだけやりましょう。最悪は陸戦は諦めるけれど」


 一度の戦で占領は理想。

 でもこの状態で戦死者が多数出るのは最悪に近い。


「かしこまりました。それで動きます」



 王になり軍に必要な武器は真っ先に輸入していた。おかげで装備は万全。

 いよいよ出陣。


「お兄様。これより討って出て参ります」

 戦。人が死ぬ。最前線で戦う以上、私だって死ぬかも知れない。


 王が前線で戦うなど愚かな極みだが、現状そうでもしなければ軍の士気が上がらないのだ。


『……女のお前が 前線に立つ 申し訳なさで いっぱいだ…… だが、頼む』


「お任せください。それで、私はしばらく留守にします。なにかご要望はありませんか? 最近はビザルディ達もしっかりしてはいるようですが、言いにくいことがあれば私から」


 拭き残しが無くなったし、兄からの苦情も無くなった。

 ビザルディが遅くまで兄の介護のチェックをしている姿も見るようになった。


 この前もよくやったと報酬を上げたのだが。


『ああ 本当に たすかる…… 一応あるのだ だが…… 誰か男を呼んで もらえないか?』

 男?

 キョトンとする。


「お兄様と会話できる男…… 宰相か、ディルアルハぐらいしか……」

『ディルアルハ がいい』



 私は急いでディルアルハを呼び話をさせた。

 二人きりの話という事で私は席を外していたのだが


「お兄様はどのようなお話を?」

 私は出てきたディルアルハに聞く。


 私が粗相したのかもしれない。

 本人には言えない苦情はあるだろう。

 それを心配したのだが


「……あー……」

 なんかディルアルハが顔を赤くしてる。

 ん?


 少し考える。「男を呼んでくれ」だ。

 なんで男前提?


「……その、シモのこと?」

 私の言葉に顔を更に赤くして頷くディルアルハ。


 あーーー。

 やばい。気付かなかった。

 そらそうだ。お兄様は意識が覚醒したんだ。

 毎日女に介護されてれば溜まるわ。


 更に身体動かないんだから自慰もできない。


「……これから国を出て出陣するタチアナ様には、申し訳なさすぎで言えなかったそうで……ですが、流石に最近は……とのこと」


 ビザルディが真面目に介護をするようになり、本当に玉裏まで丁寧に拭くらしい。


 身体の隅々まで女に拭かれる。

 まあ、そらね。溜まるよね。


「それで? 誰かとかは? 女なら誰でも良い訳ではないでしょう?」


 王族なんだから街の娼婦という訳にはいかない。

 本来は妾がいるべき立場なんだけど、うちの国、妾自体が先王の時代からほぼいないのだ。

 妾を囲う財力の余力が無かった。


「……ええっと……その。ビザルディさんと、マティーネさんが……と」

 マティーネ?


 新しく追加した娘だが

「……まだ幼くない?」

 10歳ぐらいだよ、あの娘。ビザルディだって13。私と変わらないぐらい。

 他にお世話してる娘は15とかの結婚適齢期もいる。おっぱい大きい娘もいるのだが。


「すみません、私はそこまで詳しくないもので……」

 ビザルディも貧乳。マティーネも貧乳。

 他の娘は巨乳。


 お兄様、貧乳好き?


「……性の処理までしてくれるかしらね? お願いはしてみるわ」

「すみません! なにぶん、私からは頼める話ではなく……」

 お兄様、私もそう思います。



「ビザルディ、最近のあなたの仕事ぶりは素晴らしい。その仕事ぶりには誇りをもって良い。これからもよろしくね」


「あ、ありがとうございます!」

 私に呼び出されて怯えていたビザルディだけど、笑う私にホッとしたようだ。


「今回呼び出したのは不手際とかそういうのではないわ。遅くまであなたが介護の確認をしているのも知っている。実に素晴らしい。それでお願いがあるのだけれど」


「は、はい」

 お願いと聞いて緊張するビザルディ。


「あなた、妾やらない?」

 妾。

 その言葉にキョトンとするビザルディ。


「妾。お兄様の妾。王族の妾……というか正妃いないから実質正妃扱いね」


「め、妾なんて、そんな!」

「ああ、ビックリしてるだろうし、あなたの仕事ぶりは心から評価してるので先に言うけれど。お兄様の妾とか、平民からしてみたら本来は涙流して喜ぶ話だからね? 間違っても『あんな動けない奴の嫁なんて』みたいなことは言わないように」


 私の言葉に黙るビザルディ。


「その上で、いきなり言われて困るのは分かるし、嫌ならば無理強いしたくない。あなたの能力は評価しているからね。実際どうなの? 男として完全に無理?」


「……い、いえ。その。そういう訳では…… ただ、その…… ええっと。 わたし、思い人がおりまして……」


 ああ。なるほど。


「それなら仕方ないわね。付き合ってるの?」

「い、いいえ。片思いで……」


 なるほど。

「まあ、好きな人がいるなら仕方ないわね。次の候補はマティーネかぁ」

 マティーネなら思い人はいないだろうけど。

 性行為のなんたらは分かるのかどうか。

 微妙な年齢だなー。


 私とかは9歳から自慰していたけれど。


「……え、ええっと……ま、マティーネですか?」

「マティーネには思い人とかいないでしょ?」

「……あ、あの……」


 ビザルディは青ざめた顔で


「……わたしの、思い人が。マティーネなんです……」



 女同士万歳。

「いや、私も女とやるから全く問題ないよ。うん。その上でお兄様のお世話をやれるかって話だからね?」

「……その。頑張ります」


 結局ビザルディは

「マティーネの為なら……」

 となりました。


「よろしくね。その代わりあなたの身分は保証するわ」

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