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皇帝選挙の規約

「皇帝の規約ってすごいなー。うちはこんなのやるのやめましょーねー」

 聖女ミルティアは、後宮の主ルピアと裸で絡み合いながら、独り言を言っていた。


 皇帝選出の選挙の状況は把握していた。

 その上でエルメルダには最後まで投票するな、と厳命していた。


「図ったように30票同士。ここまで拮抗するのは予想してませんでしたけど。これは後から投票した連中がみんな『うちのせいで決まりたくない』になったんだろーなー」


 そう言って、ルピアの陰部に指を突っ込む。

「あん♡♡♡」

 すっかりミルティアの責めに慣れていたルピアはそれに喘ぎ、すがりついてくる。


「エウロバさんも油断しすぎですよ。皇帝規約読めば、そら反アラニアは一度エウロバを選ぼうとしますわな」


 皇帝の規約。


 選挙自体が300年ぶりで、エウロバも色々調べてはいたが、元々は帝国に参加しておらず、選挙を経験していないアラニアよりも、帝国成立時に参加していた各国の方が詳しいことがあった。


 即ち、選挙により選ばれた皇帝とその制約。

 選挙に投票した公王には責任が生まれる。

 その皇帝が相応しくないと判断したときには、投票した公王達は全員一致という制約はあるが、皇帝の行動を制限することが出来る。


 初代皇帝の時に一度、二代目皇帝の時には二度あった。


 初代皇帝の時は神教の国教化。

 まだ他宗教が根強かった国々もあり、強引に進めようとした皇帝に対して

「民への強制信仰は止めて欲しい」という内容で推薦人が一致団結。


 これに初代皇帝は頷き、その後これが制度化された。


 二代目皇帝の時には税金の値上げと、識都という大都市を帝国本国の直轄地にすること。


 これは制度に基づき、各国は推薦人の全員一致で反対意見を出して皇帝はそれに従い止めた。


 結局3つとも、選挙を廃止した三代目によって断行はされたが、各国その成果はよく憶えていて、伝えていた。



「それに乗っかってエウロバさんの行動縛るのもありなんですけどね。調子にのってエルメルダ攻められても困りますし」


 エルメルダの投票先は「自国の王」

 つまり30 vs 30で拮抗したままになった。


「次期皇帝は未決着ということで。まあ苦労してくださいな。エウロバさん」

 そのままミルティアはルピアとキスをして、ベッドに押し倒した。



 =====================


「……まあ、冷静になれば、あの状況で皇帝を決める票は入れられないな……」

 エウロバは髪をかきむしる。


 結局エルメルダは自国の王を推薦し、マヤノリザとエウロバは同票決着。

 それにより次期皇帝の話は無くなった。


 選挙の規定にも、同票だったときは無効

 としか書かれていないのだ。


「なんで私に票を集めたんだ。他の反アラニアの王に集めれば良かっただろうが」


 エウロバの言葉に


「……恐らく、それで敗れた時のリスクを恐れたのでしょう。反アラニアの国王でまとまったとして、敗れたら悲惨な扱いを受けるのは目に見えている。ですが、投票先がエウロバ様ならば、敗れたところで問題など起こりません。名目上は応援していたのですから」


 ジェイロウは答える。


「私が皇帝になったら、あいつらにとって意味が無いだろうが」


「そこまではわかりませんが、なにか策があったというのが自然です。再選挙するならば、もう一度制度を調べなおされた方がよいかと」


「ああ、その通りだな。奴らしか知らない言い伝えがあるかもしれない」


 エウロバは椅子に座り直し

「まあ、元々皇帝は後継指名出来ないことを前提に動いていたのだ。慌てる必要はない。ゆっくり考えるさ」




 皇帝は危篤。

 もう死ぬのを待つだけとなっていた。


「……後継は……」

「私としてはマヤノリザで良いと思っているのですが」

 皇帝とエウロバの話し合い。


 あの後エウロバは皇帝選挙を調べ続け、その爆弾のような制約を知った。


(……推薦人の一致さえあれば、軍隊の破棄まで出来るとはな……)

 反アラニアはエウロバで一致していた。

 あのまま皇帝に推薦されてしまえば、瞬く間に皇帝の権限は失われ、帝国は分裂していた。


(舐めてはならんな。軍では圧倒していても、やはり謀略や駆け引きではアラニアは二流。これからはそちらでも挽回せねばならない)


 エウロバは今回の件で慎重に動くようになった。

 次期皇帝推薦も無理に進めようとしない。


 マヤノリザは元々皇帝になるのは限りなく消極的。

 その結果、次期皇帝は決まらないままだった。


「……弟達を呼べ……」


 元はと言えば、皇帝は弟達とその子を後継にしようとしていた。

 だが、どれもこれも全くダメで、後継の資質がない。


 それて後継指名が出来なかった。

 そんな状況だったが


「……私はもうダメだ。帝国を託さねばならない」

 その言葉に困惑する弟達。


 皇帝からもダメ出しされていたが、自分達も自覚していた。


 目の前の享楽に夢中で、大変な皇帝なんてやりたくない。

 そんな連中ばかり。


 弟の子供達もそうで、とても国を任せられる人間は誰もいない。


 皇帝は「弟達に皇帝の資質はない」と嘆いていたが、それは才能ではない。単にやる気がない。という話だった。


「……誰か、継ぐ気概のあるものはいるか……?」

 最後の願い。

 そんなやる気のある奴がいればとっくに指名している。当然誰も声を上げない。


 だが

「……陛下。僭越ながら、一言……」

 声を上げるもの。

 皆が一斉に振り向く。


 声をあげたのは先帝の最後の子供。

 現皇帝から見れば末妹にあたるリルリラア。


 当然皇位を継ぐつもりもない。

 他の皇帝の妹は既に嫁いでここにはいない。


 唯一まだ未婚のリルリラアが女性で一人だけいたのだが。


「……話せ」

「……血筋でいえば、兄と従姉妹の子が相応しいかと……。光の魔法使いの診断ではお腹の子は男だそうですし……」


 それに、思わず起き上がる皇帝。

「……ディルハウエルとビルナの子か……」

 デイルハウエルは生まれつき起き上がることも出来ない弟。ただ息をするだけの存在。


 当然ここにも来れていない。


 それでも貴重な皇族と生かされていた。

 そのディルハウエルは、マヤノリザの妹、ビルナと結婚し、ビルナからの性交により無事妊娠をした。


 血筋で言うと、先帝であり父の妹の子がマヤノリザとビルナ。

 ディルハウエルから見れば従姉妹と子を作ったのだが、皇族では珍しくもなんともない。


「……まだ生まれてはおるまい。あと何ヶ月だ……」


「はい。あと2ヶ月です」

 その言葉に皇帝は俯く。

 2ヶ月。


「……2ヶ月か……。生まれる前の後継指名の前例はあるのか?」


「はい。それはここにくる前に調べました。直近でビネスト公国の例があります。王は子の出産前に亡くなりましたが、後継指名は有効とされ、国を継いでいます」


「……ビネスト公国……」

 皇帝は思い出していた。

 自らの失政の一つ。王が病気で倒れ、王族も全滅したため、直轄地にしようとしたビネスト公国。だが、それに大きく反発したビネスト公国は、一致団結して攻めてきた帝国本国の連合軍を撃退した。


 今も帝国の一員だが、その新王は幼いながらも聡明で、今後が期待されていた。


 皇帝もその子と会い羨ましく思っていた。


「……そうか。これも運命かもしれん。ディルハウエルが生きていた理由も、きっとこれだ。分かった。ディルハウエルと、ビルナの子を次期皇帝とする」



 =====================


「マヤノリザ、あのビッチを部屋から出すな」

 エウロバは頭を抱えたまま言う。


「……ビルナの子が次期皇帝か……」

 マヤノリザはソファーに倒れ込んでいる。


 双方その不都合さは気付いていた。

 ビルナの子。


「あのビッチは一回で良いからディルハウエルのディックをプッシーに突っ込んだのか……」


 兄との性交をしているビルナ。

 ビルナのお腹にいる子供は兄マヤノリザの子ではないか? と疑っていた。


 と言うよりもエウロバは他に考えようがない。ビルナが他の男と寝るわけがない。と思ってはいたのだが。


「……一度だけやった。と聞いた。酒で酔わせて試したら、本当にベロンベロンになってな……」

「文字通り酔っ払いの戯言だ。真実性はないな」


 ビルナの子がマヤノリザの子ならば当然各国から色々言われる。


 なのだが

「……まあ、私としては可能性には入れていた。どちらにせよビルナの子がいれば、各国はそれに希望を繋ぐと考えていたからな……」


 エウロバはもうそれで押し通すつもりだった。

 どちらにせよ簒奪する。


「……少しビルナと話をしてくる」

 マヤノリザは立ち上がり部屋から出て行った。



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