隣国への進出計画
「アンジは引き揚げた。アラニアとマリネスの援軍もいなくなった。今一気に隣国に攻めるべき」
アンジはヘレンモールの怪我で撤退。
マリネスはアラニアとぶつかり、バルドスが戦死。残りの兵は引き揚げた。
そしてアラニア。
バルドスの捨て身の爆死でティムトッグは負傷。アラニアも引き揚げ。
この3勢力はすぐに援軍は繰り出せない。
「……隣国と言いましても……」
ディルアルハは戸惑っている。
グラドニアの隣国。西は海。東にエネビット公国があるが、ここはアラニアの公王エウロバと婚約したマヤノリザが率いる国。
元々グラドニアをボロボロにしたのがエネビット。ここは手強い。
北がロメルス公国。
南がフルノルゼ公国。
援軍は基本的にロメルスから来ていた。
「ロメルスとの国境に兵を展開している現状だからロメルスはかなり警戒しているはず。援軍も基本的には北から来る。そうなるとフルノルゼね」
「……私も攻めるならフルノルゼだと思います。南は援軍が出せる国がありません。しかしロメルス側の警戒を考えるとあまり兵を出せません」
そのあたりはもう調べている。
「ええ。でもそれでいいわ。フルノルゼ側の兵士は1000しかいない。精鋭で一気に攻めるわよ」
ただすぐに攻められない。
マルウェスが帰ってこない。
「あいつどこうろついてるの???」
フルノルゼ公国を探っていたマルウェスが帰ってこない。
「……死んだ?」
元スパイなだけあって、簡単に敵地に潜入してくるのだが、命令とか聞かない気まぐれな女。
有能だが殺されている可能性はある。
『生きてますよー』
聖女様の声。
「どこにいるんでしょう?」
『目の前に。お尻抑えて呻いています』
お尻???
「……なんでそっちにいるかは分かりませんが。とりあえずフルノルゼを攻めようかと。それでマルウェスの情報をですね」
『ああ。フルノルゼですね。構いませんよ。もうエウロバさんには話をしています。神教でも元神皇派ですからね。叩き潰してください。逆にロメルスはダメです。現神皇につきましたので』
元神皇、現神皇。
「聖女様、なんでそんなこと気にするんです?」
アラニアが気にするなら分かるけど。
聖女様から見たら、同じ神教でしょうし。
『次、神教が間違えたら困るんですよ、私も』
間違えたら困る?
なんで?
『この世界はね。強力な逸脱者に左右されるんてす。一人は私。もう一人は龍姫です。龍姫は今は現神皇を擁護している。その現神皇がもし失脚させられたとしたら』
したら?
『龍姫は神教の連中を皆殺しにしますよ。自分の思い出を汚した連中を生かしておかないでしょうね。そんな狂乱した龍姫と対決なんてしたくないんです』
========================
「元神皇の罪を列挙する!!!」
神教の神殿で行われている議論。
龍姫よりもたらされた元神皇の所業は大問題になった。
特に汚職と、教義違反、そして皇帝の子供を密かにおろしていたこと。
怪文書とも受け止められたが、証人がすぐに現れた。元神皇についた人間も龍姫の発表で諦めたのだ。
龍姫が本気と気づいた。それに従うようになった。
その一連の議論を心からどうでも良さそうに見ているアラニアの公王エウロバ。
「エウロバ様。王宮に戻りますか?」
ジェイロウの問いかけにクビを振るエウロバ。
「結論は聞かねばならない。元神皇か、現神皇かはな」
ジェイロウも頷く。
現神皇はアラニアに対して中立。だが元神皇は反アラニア。
元神皇派が勝てば困るのはアラニア。
だがそれ以上にエウロバは別の心配をしていた。
「……極論からいえばだ。龍姫は別に私の味方などしていない」
「……」ジェイロウは黙って聞く。
「今回の神皇交代は私達とは無関係だ。別に現神皇も中立なだけで、無関心に近い。つまり龍姫の都合で神皇交代に至ったわけだ。それで現神皇が敗れたらどうなると思う?」
エウロバの問いかけに
「……龍姫が直接動くと、エウロバ様は予想されているんですか?」
「ああ。そしてそれは破滅的な結果をもたらす。龍族ですら恐ろしいのだぞ? 龍姫本人の恐ろしさなど考えたくもない」
エウロバは顔を歪め
「こんな奴らの決断に世界の命運がかかってるのか。滑稽だな」
エウロバは薄く笑いながら議論を見守っていた。
=======================
『怒れ、メイル』
黄金色に輝くゴールドドラゴン。
ドラゴンは不敵に笑っていた。
『お主はドラゴンだ。怒り狂い、人間を殺しまくれ。その快楽は絶大だ』
ゴールドドラゴンの策。
聖女の勢力がこの大陸に来るのが問題だった。ドラゴンにとって聖女は天敵。既に聖女の大陸からはドラゴンは追い出されている。だからオーディルビスを追い出す必要があった。
そんなゴールドドラゴンの策。それは盟友であり、常に連携をとっていたメイルを使うこと。
『メイル、お主はもうドラゴンなのだ。人として縛り付ける信仰などやめて、ドラゴンとなれ』
メイルを欺く策。
メイルを怒らせ、人間を殺させる策。それにより、この大陸から人間を激減させようとする策。
それは少しずつ発動していた。




