聖女への挨拶
今回からタチアナ視点です
さて、無能な大将軍の更迭をしましょーねー。
理由はもう決まっている。
「レグランドを呼び出しなさい」
あの無能、私にまともに挨拶に来ないんである。
挨拶というか報告がない。
いくら求めても軍の全容が出てこない。
普段から仕事してないからね。私のように細かく報告求められてもそんなのわからん。なんだろうけど。
そこらへん、宰相は今まで求められなかった報告に対しては
「資料が揃っておりませんで、5日いただきます」
という感じできっちりやっていた。私がほしいのはこういうのである。
無いなら無いでいいのだ。
現状を把握し、対策を考えないといけない。
その連絡すらなかったらどうしようもない。
「王よ! 呼ばれましたか!」
でかい声でレグランドが来る。
賄賂とこの声と態度のデカさで大将軍になった男。
私の美的センス的にはまったくありえない。
「ええ、呼びました。レグランド、今まで求めていた報告は?」
「……ああ、その件ですか。あのような細かいこと、王がお知りになる必要は……」
私は目を閉じ。
「兵の全容をしることの何が細かいか? 王には言えぬ兵でもおるのか?」
私は立ち上がる。
「レグランド、その言葉クーデターと受け取ろう。王に言えぬ兵を抱えているのがなによりの証拠。兵よ、こやつを捕らえよ」
「な!?」
レグランドはびっくりした顔をするが、横にいた兵たちには既に伝えていたため動きは早い。
「言い訳など不要だ。この件で時間をかけることなど無意味。その場で殺せ」
そこまでは事前に言ってなかったために戸惑う兵士たち。
「私が王だ。王に逆らってこいつにつくか?」
その言葉に一人の兵士が動き
『ザシュッ!!!』
レグランドの首を切り落とす。
「あーあ。抵抗ぐらいしろよ。本当に態度と賄賂だけの男だね。んで、よくやった。ローマルアレザ。私は即断と忠誠を愛する。あなたの身分を上げましょう。これからもよろしくね」
そして「ディルアルハを呼びなさい」
軍の問題は取り除いた。次は戦争の準備。
「王よ、ディルアルハ参上しました」
血塗れの床にちょっとびっくりしてる。
家柄も良く、若くして部隊長になっているが、とにかく軍にはこいつしかいないのだ。
他にまともな人材がいない。
「これから我が国は戦時体制に入る」
「……は?」
一瞬ポカンとするが
「……す、すみません! 了解致しました! 大将軍と相談して……」
「不要だ。あいつは殺した」
絶句するディルアルハ。
そして血だまりを改めて見る。
そうだよ、その血だまりですよ。
「ディルアルハ、あなたを大将軍に命じます。その上で今から言う事をよく聞きなさい。我々はこのままではジリ貧。帝国の大陸に進出します。まず狙うのは沿岸の国ディマンド公国」
「……ディマンド公国ですか……。はい。調べ作戦を練ります」
「ええ。軍隊の掌握含めよろしくね。あとこれ掌握してほしい一覧」
私は用意していた巻物を渡す。
「……は、はいっ!」
「一応言っておくと、前のやつは全く掌握してなかった。だから一からやりなさい。多少は時間をあげるわ。よろしくね」
さて、その間に出かけましょう。
「宰相、私は聖女様のところに出かける。その間にこの条項の整理をよろしく」
私は巻物を渡す。
こっちに来てから必要だった情報を整理していたのだ。
重要な事から聞いていたが、知れば知るほど
「あれが足りない、これが足りない」
みたいになったのだ。
本当は内政は宰相に全部任せたいんだけど。
残念ながら今の国力ではどんな有能な人間にやらせてもジリ貧だ。
戦争により国土を広げる、賠償金を勝ち取る。
それでしか、あの貧しいオーディルビス王国は立ち直りようがない。
「……かしこまりました。全て準備しておきます」
転移石での移動。
特別に聖女様の神殿に直接転移。
「タチアナ。久しいわ」
目の前にマイセクローラ。
「おひさしぶりだねー。元気そうで」
マイセクローラ。聖女候補の1人。
有力候補とは言われていて、今は神官長に命じられたと聞いた。
「ええ。私には合ってる仕事ね」
聖女転生体の人間のうち、選ばれなかった人間は聖女様の妾として生涯仕える。
でも今回の転生は例外が多かった。
私は国王として出されたし、何人かの候補生は国に連れ帰った。
マイセクローラも妾から外れて神官長に転身。
確かにそっちの方が向いてると思う。
「聖女様にはご連絡したけれど」
「ええ。行きましょう」
マイセクローラと並んで歩く。
「お国は大丈夫?」
マイセクローラの問いかけに
「ぜーんぜん。聖女様の慈悲に縋らないといけないことばかりだねー」
とりあえず今回は戦争の相談だねー。
攻める国は決まっている。帝国内でアラニアと対立している沿岸国のディマンド公国。
貧しい国で、帝国による移民政策で辛うじて国を維持している。
ディマンド公国の隣に聖女様に帰依している国、アディグル王国があり、そこと連携を取れば攻め滅ぼすのは容易い。
問題はそれを聖女様と、現在帝国を抑えているアラニアの王エウロバが認めるかどうか。
「聖女様、失礼します」
マイセクローラが扉を開けると
『まっ!!! 待って!!!』
あ、ルピアの声だ。懐かしい。
扉の向こうがバタバタしている。
『別にマイセクローラさんと、タチアナさんですよ? 見られて困る訳ではないですし?』
「いいから穿きなさい! 裸で謁見してどうするのよ!」
裸。
「ルピアと聖女様はよろしくやってると」
僕の問いかけに
「ええ。後宮の主ですもの。今回は妾と言っても名前だけの人が多いですからね」
結局10分ほど扉の前で待った後に
「……待たせてごめんなさい、タチアナさん」
顔真っ赤かのルピア。
「僕は別に全裸でも」
「そうですよ、ルピア。なんだったら3Pでも」
聖女ミルティアが平然としている。
そしてこちらに向き
「まあ、用件から先に片づけますか。ディマンド王国は攻めていいです。アディグルも増援を出します。その分領土は多少アディグルがもらいますが」
「それはもちろん」
「帝国のエウロバさんとも連携を取りました。ディマンドは神教が強く、反アラニア。おそらくディマンド王国はエウロバさん率いる現帝国の体制に救援は求めないと。ただ問題はあります。ディマンド王国は他に救援を求める。そこの将軍が手強いそうですよ? 勝てます?」
そこだよねー。なにしろオーディルビスはまともに戦争なんてしていない。
無能がずっとやれていたぐらい軍は適当だった。
だから
「私自らが出陣しますから」
とりあえず用事は終わり。
後は魚と酒だー。
聖女様も既に酒と果実の準備をさせていた。
マイセクローラはその手配で出て行き、今は聖女様、ルピア、私の3人で話をしている。
「あのね、ミル。聖女様が昼間っから酒なんて……」
「先代も昼間っから飲みまくってましたよ。今更です」
そうなんだ。まあお酒好きそうな感じだったからなぁ。
「それよりもルピア、途中だったので身体がまだ疼いています。続きをしましょう」
おーおー。エッチ。
「な!? た、タチアナさんがいるのよっっ!!!」
ルピアはまた顔真っ赤。
「先代の記憶を引き継いで、もっともアレなのがこの性戯関係ですねー。色んな知識だけはあるので試したいのです。タチアナさん混ざります?」
色っぽく微笑む。
まだ聖女様10とか11じゃなかったっけ?
まだ幼いのに性欲が素晴らしいですね。
まあ人のこと言えないけどねー。
「もっちろーん♪」
後から聞いたら、元々は私が聖女様に転生する候補体だったそうな。
それが王家のゴタゴタで国に連れ戻されたそうだけど
「ルピアー。後宮の主なんだから性行為も仕事だよー」
後宮の主。聖女様の意向を外に伝える立場の人間。
後宮のトラブルは全部この後宮の主が調整する。苦労人のルピアには向いてる役職なんだけど。
「そうなんですよ、タチアナさん。ルピアはまだ恥ずかしがってて」
「ちょっ! た、タチアナさん! なんで脱ぐの!?」
話している最中に僕は服を脱いでいく。
「え? そらするんだよ?」
あ、でも。
「そう言えば聖女様。僕は男1人と女10人と性交済みなんだけどいいの?」
女は良いと思うんだけど、聖女様の妾って男とセックスしたら追い出されるシステムだった気がする。
「ああ、構いませんよ。ビネハリスさんも男性経験ありますが私としていますし。そもそも先代は最初は男囲ってましたからね」
ビネハリス。候補生の1人。ああ、やっぱり男としてたのかー。なんか有力候補なのに乗り気じゃなかったからなー。あの人。
「ルピア、こっちにきなさい」
聖女様の手招きに戸惑いながら近寄るルピア。
「3人でキスしましょう」
そう言うなり、聖女様は舌を伸ばす。
私は跪き、顎の下から舌を伸ばしてキスをしていく。
ルピアも戸惑いながら顔を近づけて三人で肌を重ねあった。
行為中、聖女様は私の頭を撫でながら
「聖女を信仰している国々の腐敗は目を覆う程です。タチアナさん、あなたの動きは色々厄介ですが期待もしているから支援もしましょう。その代わり私にいっぱいご機嫌伺いしてくださいね♡」
ああ、聖女様。ミルティア。
『聖女』という名前から逸脱したかのような邪悪な顔。
ミルティアはすべてを知った上で泳がせている。
その上で「私に媚びろよ?」としてくる。
「はい♡ いっぱい奉仕させて頂きます……」
仮にも国王が、跪いて奉仕している。
多分これ屈辱なんだろうな。私はさほどそうは思わないけど。
そっちよりも
「さあ、ルピア。舌を絡めあいましょう? キスだけでいいわ」
聖女様とルピアは抱き合って舌を絡め合う。
下から見上げる。
二人の口から溢れる唾液がポタポタ落ちてくる。
あっという間に二人だけの世界。
僕は単に奉仕するだけの存在。
二人の逢瀬を邪魔しないように刺激をする。
「屈辱ですか? タチアナさん?」
長く続いたキスの唾液音が収まったと思ったら声をかけられる。
「……はい」
正直に答える。そらね。
「そう。それは良かったです。その屈辱は戦争でぶつけてくださいね」
ああ、本当に全部分かってるんだな。
私は屈辱を赦さない。
こんな屈辱を味わう原因を赦さない。
「聖女様、かしこまりました」
今日の私は聖女様に奉仕するだけの存在。
それでいい。
ルピアと常にセットだったミルティア。
その愛情は明らかに異質だった。
ルピアは可愛い妹みたいに思ってたみたいだけど。ミルティアの執着はあの時もう姉を慕うようなまなざしではなかった。
「ルピア、聖女様をお願いね」
ああ、目の前のルピアのエロい顔凄いな。
この娘もこうなるんだ。
「タチアナさん、お疲れ様でした」
その声で私は立ち上がる。私は用済み。あとは二人で愛し合うんでしょうね。
「私の体液まみれで、ルピアの唾液がたっぷりついたその顔、素敵ですよ」
転移石でそのまま王宮に帰る。
自分でわかるけど凄い臭いがするね。きっと聖女様の体液はなんか特殊な効果あるんだろう。
今日はこのまま眠ろう。
風呂は明日の朝でいい。この体液まみれの顔で寝る事が意味がある。
「……貧しい国。聖女様に頼らないといけない国」
この屈辱を憶えていないといけない。
この最貧国は、聖女様の力にすがらないと生きていけない。
今聖女様のお力を失えば、豊漁続きの漁は不漁になり、飢えと疫病が襲いかかるはずだ。
まずは現状を身に焼け付けないといけない。
内政は破綻に近い内容。
他国への借金で船を造っている現状。
借金を返済する目処はついていない。
南群諸島の占領で少しは潤うだろうが、あれは長期的な話だ。
軍に至っては話にならない。
訓練すらまともにされていないし、数も少ない。
「こんな状況でどうしろというね」
お兄様の意向もある。
だがどちらにせよ戦争は必須だった。
帝国の大陸へ進出し、とにかく農業を行う。
オーディルビス王国には耕せる土地が殆どない。
塩害と、険しすぎる山。
これが貧しい原因だった。
だから
「……」
顔に粘りつく体液を指ですくいながら
「オーディルビス王国を、世界一の強国にしてやる」