バルドスの最後
アライエルはバルドスと接触した後すぐに聖女ミルティアの所に飛んだ。
「神教のクソッタレ共を潰す最大のチャンスです!!!」
キラキラした目で聖女に報告するアライエル。
アライエルの策。アライエルは神教を目の敵にしている。これを気に帝国というより神教を叩きのめそうとしていた。
その為にオーディルビスの拡大は絶好の機会だった。
「ジュブグランのお婆ちゃんから聞いてますからある程度は融通きかせますよ、アライエル。でもその策はそのまま飲めませんね」
ミルティアはつまらなそうに対応する。
「なんでですかーー???」
「神教とそのまま戦う気なんて無いからです」
そのまま蜜酒を飲みながら
「今神教は2つに割れている。反アラニア派の元神皇と親アラニアの現神皇派です。元神皇派への攻撃は認めますが、親アラニア勢力の攻撃は認めません。つまり、ティムトッグへの攻撃は認めない」
アライエルはアラニアの中でも神教に近いティムトッグを叩くことで神教派の勢いを無くそうとしていた。だがミルティアの判断は
「ティムトッグは正式に現神皇への帰依を表明しています。ダメです」
「じゃあバルドスさんはーーー」
「普通に戦ったぐらいじゃティムトッグ率いる重装歩兵達は死にません。そのまま戦わせて戦場で死んでもらえばいいだけです」
ミルティアはゆっくりと
「私、というか先代聖女の記憶ですが。あなたをそこまで信用してないんですよね。言うこと聞かないし。ここで私が言ったことを実行するかも疑わしいので監視させますから」
聖女からの監視。
それは聖女の妾ヤファと、聖女ミルティアと血の繋がりのある義妹の双子。
「……一体なにやったらあそこまで疑われるの???」
着いてきたヤファが呆れたように言う。
「まあ、昔色々ありまして」
アライエルは元々ガルド公国に忍び込んだ聖女のスパイだった。
あまりにも有能でガルド公国の乗っ取りに成功するなど実力は凄いのだが、言うことを聞かない。
聖女の重臣ジュブグランが直接乗り込んで、ぶん殴ぐって引きずるまでしないと「帰ってこい」という命令を聞かなかったのだ。
「んで? どーするの? 戦場なんて危険で怖いわ。早く帰りたいんだけど」
「ええ。もうすぐ終わりますよ」
「マリネスはグラドニアを救うための援軍と聞いたがな!!!」
楽しそうなティムトッグの叫び声。
「安心しろ!!! お前を殺してオーディルビスも滅ぼす!!!」
オーディルビスの陣地側にいたバルドスだが、連合しては襲ってこなかった。
あくまで単独での戦闘。
「あくまでオーディルビスとの戦闘という事にするつもりか」
ティムトッグは大体のことを把握していた。
マリネスから撤退命令が出されている。
そんな軍がアラニアと戦えば、それは国からの命令違反の賊軍となってしまう。
体裁の問題として、マリネスの軍として戦う訳には行かなかったのだ。
だからグラドニアとの国境に移動してから戦うことを選んだ。
「死にそうだと聞いていたが元気そうではないか!!!」
ティムトッグはバルドスと一騎打ち。
バルドスは嬉しそうに
「ああ!!! この日の為に生きてきたようなものだ!!!」
アライエルは聖女に泣きつきバルドスの復活を願った。
その結果バルドスは起き上がったが、リミットが決まっている。
グラドニア国境に移動までは聖女の慈悲で生き延びた。
だが
「もう今日が最後。バルドスさん楽しそうですね」
アライエルはジッとバルドスを見ていた。
「随分とご熱心ね? 想い人?」
ヤファからの質問に特に返すこともなく
「戦場で死ぬのが願いって、武人は変わってますよね。戦って死ぬなんて痛いじゃないですか。でもあの人達は心の底からそれを願っている」
バルドスとティムトッグの戦いはもう決着が明らかになっていた。
バルドスは息があがり、もう斧があがらなくなっていた。
「トドメだバルドス。10年に渡る戦い楽しかったぞ」
ティムトッグの剣が迫り
「俺もだティムトッグ。アラニアとの闘争、武人としては最高の名誉だった」
避けることなく。
『ドガアアアアァァァァァッッッ!!!!!』
バルドスを中心に火薬が爆発し、吹き飛んだ。
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「おしりぺんぺん」
ミルティアはトゲトゲが付いたモーニングスターを振り回しながら、ロープでグルグル巻きになったアライエルに迫る。
「まって!!! まってください!!! 本当に知らなかったんですってばーーーーー!!!」
バルドスは服の中に大量の火薬を仕込んでおり、死ぬ直前にそれに火をつけ爆発させたのだ。
「幸いティムトッグは死にませんでしたけどね。バルドス使うなんて案を提案したお前はお尻ぺんぺんです」
そう言ってモーニングスターをブンブン振り回すミルティア。
「お尻ぺんぺんとかじゃないーーー!!! お尻壊れますからーーー!!!」
泣きながら暴れるアライエルをルピアは見ながら
「ジュブグラン様の言うとおり……本当に面倒くさい人ね……」
ルピアから見ると、聖女に恐れなく要望を伝えにきたり、命令を聞かなかったり。
横で聞いているルピアがハラハラするような真似をするのだ。
だがそれでも
「……ここまてやらかして殺されないんだから……まあ、多少はね……」
どうせミルティアなら傷は癒せる。
ルピアには特に止める気もなく
「いたーーーーーーーいーーーー!!!! おしりがーーーーー!!!!!」
アライエルの絶叫が木霊していた。




