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ヘレンモールの大怪我

 ヘレンモールの腕に食い込んだ斧。

「くそっっ!!!」

 敢えて抜かずに、斧を抑えて後ろに下がる。


「……今は動くが……」

 かなり深く食い込んでいたが、それでも腕は動く。

 これで斧を抜けば血が吹き出ることは理解していた。


「ヘレンモール様! 引き揚げましょう!!!」

 部下が進言し


「わかった。引け!!!」

 アンジ公国は軍をまとめ引き揚げた。



 ディルアルハは引き揚げるアンジ公国の軍を見ながら

「……追撃は不要だ。死者が多すぎる」


 騎馬隊の突撃で白兵戦可能な前衛は100名近くが死亡。遠距離の歩兵も数十人が死亡していた。怪我人は多数。


「……戦争だから死者は当たり前だが……」

 歩兵と騎馬兵。

 騎馬兵の槍の突撃で何人も死んだ。

 それに対してオーディルビスは投擲で対抗。30騎が死に40騎が大怪我をしたりしていた。


「騎馬か。オーディルビスは騎兵訓練などしていないからな。やはり近接戦闘はマズい」


 ディルアルハは溜め息をつきながら


「前線に戻るぞ。タチアナ様にご報告しろ」



 =====================


「……苦い勝利って、そのまんまね」

 アンジ公国は引き揚げた。

 ヘレンモールの大怪我が理由で、一度は国境に戻り手当てをしたが、怪我を聞いた王が即座に引き揚げを命じたのだ。


「アンジ公国は徹底している。手強い」

 ヘレンモールこそがアンジの中心と考えている。王ですらそれを徹底していた。


「怪我が癒えたらまた来るわ。困るわね……」

 とは言え、ヘレンモールを恐れていつまでもグラドニアに籠もる訳にもいかない。


「さて、そろそろ内政は決着つけましょうね」

 決着。

 王族の問題。


 グラドニアの王は降伏して監禁している。

「とりあえずオーディルビスに行ってもらう」

 殺しはしない。殺せば反乱の可能性が高くなる。だがグラドニアにずっといられるのも困る。


「は!? あんな辺鄙な場所にか!?」

「住めば都よ。それに王宮に住ませるし領地も与えるわ」

 人が住めない土地ですけどね。


「……王宮か。まあ儂もこのままグラドニアにいれるとは思ってはいなかった。よかろう」

 割と素直だった。王宮暮らしというのは魅力的だったらしい。


 まあ貴族という名前で、僻地の掘っ建て小屋にぶち込むとかありえるからね。

 降伏した王族の運命なんて基本的には悲惨。


「素直に降伏したあなたを冷遇したとなれば、今後が困るの。それとあなたの家族の問題ね」


 家族。

 まあ普通に考えて手っ取り早いのは政略結婚。

 グラドニアにも王子はいる。


 でも年いってるし、顔も好みじゃない。

 それにグラドニア占領で戦いは終わらない。いちいちその度に結婚なんてしてられない。


「男はオーディルビスに移動する。女も后と妾は連れて行きなさい。残るのはあなたの娘達よ」



 その残す娘たちを呼び出したが

「……なんで、わたしが……」

 クソ生意気。

 私の第一印象はそれだった。


 グラドニアの王女。

 残した理由? ストレス解消。


 他の王族はオーディルビスに送りつける。

 だがそれだけでは王族を引き離しただけである。

 民に対しては甘い政策をしている。

 これだけではグラドニアは我々を舐めるだけ。


 だから誰かは生贄にしないといけないのである。


 なにしろこっちを睨みつけて、まともに話をしようともしない。立場が分かってないクソ女。

 うん。虐めましょうね。


「口を開くな。息が臭い」

 私は思いっきりそいつの顔を蹴り上げる。


「ギャッッッ!!!!!」

 周りの人間がギョッとこっちを見る。

 グラドニアに来てからは大人しくしてたからね。


「お前は敗者の王族だ。本来は敗れた王族は惨めに生きるものだ。幸いなことにお前の父も息子も、惨めに降ることを選んだから手を出さなかっただけだ。クソ生意気なお前には遠慮などしない」


 鼻血を出して怯えている女。

「オーディルビスを舐めるなよ? 私は逆らう人間に遠慮などしない」


 =====================


 全裸で絡み合っている龍姫と龍族。

 7人ぐらいが、龍姫の肌を舐めていた。


「……はあ。しかたないわね」

 駄々っ子のように暴れ、7人と乱交して少し落ち着いた龍姫。


「……前神皇の諸行を公開しましょう。どちらにせよ、神教にある膿は出さないといけない」


 龍姫は憂鬱な顔のまま

「ここまで腐った原因は、私にもあるんでしょうね……」

 そのままベッドに倒れ込む。


「むぎゅ」

 たまたま下にいたエールミケアが押しつぶされ、変な声をあげる。


「あーあー。私も古い者なんだろうなぁ。老いたなぁ」

 元々は貧民で、生きるためにドラゴン狩りのキャラバンを率いていた龍姫。


 それが様々な事があり今がある。

 既に100年近く生きている龍姫。既に己の限界も知りつつあった。


「姫様はまだ若いですー♡」

 そう言ってキスをするフェルライン。


 龍族も世代交代が進んでいる。

 最近眠りにつく龍族が増えてきた。そして新しい龍族も最近多くなっている。


「神教の改革は立ち会うわよ。こればっかりは丸投げなんて赦されない。私の存在意義をかけて、神教の改革は成功させる」


 =====================


 アラニアの第三軍将軍ティムトッグはグラドニアに向かって進んでいた。

「将軍、ツーバック様はちゃんと引き揚げたようですな」

 距離は離れているが、第一軍の旗が見える。


「……どうも、嫌な予感がする」

 ティムトッグ。


 第三軍を率いる将軍。

 アラニア4将軍の中ではもっとも劣ると言われてはいるが、籠城戦では無敵に近く、重装備の歩兵が多く戦死者が少ない。


 戦慣れしたベテランが多く、彼らがティムトッグを支えていた。


「……そうですね。マリネスが引き揚げた様子がありません。警戒すべきかと」


 ティムトッグも何度もバルドスと戦っており、その手強さは知っていた。

 そしてその負けん気の強さもだ。


 ティムトッグから見れば、バルドスがアラニアを見逃すとは到底思えない。


「周囲を警戒しろ。奇襲に備えろ」

 ティムトッグの命令に、第三軍は緊張しながら進む。

 だが


「……襲ってきませんね?」

「油断するな」


 進軍は続くがバルドスが襲ってくることはなかった。


 そうこうしているうちに

「ティムトッグ様! 大変です! アンジが引き揚げたと!」

 眉がつり上がるティムトッグ。


「なぜだ? ヘレンモールが負けたのか?」

「怪我をしたそうです。陣中で治療しようとしたらしいのですが、王が戻ってこいと」


 それに呆れた顔をするティムトッグ。


「だからアンジはいつまでたっても弱国なのだ!!! ガダベニル! ヘレンモールがいても弱国なのは国が軟弱だからだ! 将が怪我したぐらいで引き揚げるな!!!」

 叫ぶティムトッグに


「……いや、うちもテディネス様が怪我したらすぐ引き揚げましたよね?」

 小声で突っ込む部下。


 だが聞こえていなかったようで


「ならば我等で突っ込む! いくぞ!」

 張り切って進む第三軍。


 グラドニアの国境が見えたころ


「ティムトッグ様!!!」

 部下の慌てた声。

「……はは。本気か」

 ティムトッグは楽しそうに笑う。


 グラドニアの国境にはためくオーディルビスの国旗。

 そして、マリネスの国旗が並んで掲げられていた。


 =====================


 神教の神殿。

 そこで、現神皇が祈っていた。


「……罪深い」

 頑な信仰で周りの司教から疎まれ、貧民街のボロボロの教会に赴任していた男。


 それが龍族エールミケアに見込まれ、龍姫の後援で神皇となった。


 その男が見た現状の神教はボロボロの状態だった。


「……リグルド様、か」

 龍姫を布教した神教の元幹部。

 とっくに亡くなった人物だが、彼の遺書は大切に保管されていた。


 歴代神皇しか見れないように遺言されたその内容。


「……もう。終わりの時が来たのだろうな」

 リグルドの手紙の内容は簡潔だった。


 龍姫と名乗るメイルが、神教を見捨てれば終わりだと。

 彼女はまず警告をする。

 それでダメならすげ替える。

 それでもダメなら自らの手で滅ぼすだろう。


 願わくば未来の神皇よ、彼女の警告を真摯に聞くように。


「すげ替えられた神皇。これで変わらなければ龍姫は神教を滅ぼすか」

 神皇は特にそれを疑っていない。


 龍姫の信仰心を疑ってはいない。

 だがその信仰心は個人に向けられていることに気付いていた。


 あくまてもリグルドへの尊敬からくる信仰。

 だから、リグルドが残そうとした神教を汚す存在は滅ぼすだろう。


「痛みは多くあろう。信者は激減するかもしれない。それでやらねばならない。正しい教えに戻さねばならない」


 神皇はうずくまり、また祈り始めた。


 =====================


「現神皇のスパイが嫌なんですけど」

 龍族エールミケアが、龍族のリーダー、マディアクリアに愚痴をこぼす。


「なんでまた」

「あの人、真面目なのはいいんですけどね。オナニーするんですよ。神皇なのに。まあそれはいいとして。なんか私で抜いてるっぽいんですよね。きもいなーって」

 後ろで黙って聞いていたフェルラインが吹き出す。


「……な、なんでズリネタがあんただって分かるの???」

 マディアクリアが聞くが


「いや、今の神皇見つけたの私じゃないですか。選ぶときに色々聞き込みが必要で姿見せて話したりしてたんですよね。んで、そん時に偽名名乗ってるんですが、その名前口走るんですもん」


 フェルラインが口を枕で抑えて笑いをこらえている。


 マディアクリアは笑うと言うよりも、混乱していて

「……真面目、なのよね? 今の神皇?」

「いつも祈ってますよ。真面目すぎて、オナニーが唯一の娯楽なんじゃないですか? よくオナニーしたあと後悔したみたいに泣きますし」


 フェルラインがこらえきれず

「キャハハハハハハハハ!!! ミケア! 面白いから半裸で会いに行けばいいじゃない!!!」


「きもいんですよーーー」

 エールミケアは嫌そうに言った後に


「どうせあの人祈るしかしませんし。張り付く必要ないですって。嫌なんですよ。自分がズリネタにされてるオナニー見るのなんて」

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