表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/40

停戦命令とアライエルの陰謀

 アンジ公国は騒ぎになっていた。


 ヘレンモールの拒絶後すぐに神教の使者はアンジ公国に来て、アラニアとの戦争を要請した。


 だが

「ヘレンモールが無理だと言うならば、勝ち目は無いと思う」

 王は即断した。


 貧しいアンジ公国にとって、ヘレンモールは宝だった。

 実質ヘレンモールが中心に動いているようなもの。

 王はその現状を深く理解していた。


「オーディルビスとの戦は、神教の我が国への援助もあり当然の話でした。ですがアラニアとの戦となれは話は変わります。勝たねば我が国は苦境にたたされる。私からみても、アンジだけの軍勢で今のアラニアを攻めて勝てるとは思えない」


「今、マリネスが戦っておる!」

 神教の使者が反論するが


「軍勢800ですぞ? マリネス全軍ならともかく、寡兵で善戦しているにすぎない。我が国の軍はヘレンモールに一任している。ヘレンモールが勝てないと言うならば、それは勝てない。そんな戦を王である私が決断する訳にはいかない」


「神教からの恩を裏切るのか!?」

 その罵声に


「その恩はオーディルビス侵攻に対する援軍で果たしています。引き続きオーディルビス打倒に向けヘレンモールは戦いましょう。我が国はそれ以上の事は不可能です」



 王の拒絶に神教の使者は怒りながら退出した。


「公王、あそこまで拒絶しなくとも……」

 家臣が恐る恐る発言する。


 断るにしてももう少しやり方が。

 そんな発言だったが


「今アラニアを攻めろ? バカなのか? あんな連中に付き合ったら国を失うぞ。今アラニアは警戒しており、四将軍は健在。こんな状況で立ち向かえば間違いなく滅ぼされる。マリネスは、あのバルドスだから赦されているだけだ。我が国がやれば確実にエウロバは潰してくる」


「……では、神教との関係は……」

 家臣の言葉に


「アラニアとの対立を煽っているのは元神皇側だ。我がアンジ公国は現神皇につく。すぐに使者を出せ。そしてヘレンモールにもだ。目の前の戦に集中しろと。今はアラニアと戦う訳にはいかぬが、いずれは戦う。その前にヘレンモールの名声を高めなければならない」


 ヘレンモールの名声。

 その言葉に家臣達は首を傾げる。


 すでにヘレンモールの名声は世界に轟いている。


「戦わずして戦意を挫くぐらいの名声だ。今のアラニア四将軍がまさしくそうだろう。彼らと戦おうとするのは、ヘレンモールとバルドス、それとメタ公国のデューンぐらいだ。ヘレンモールにはそれぐらいの存在になってもらわねばならない。そうすれば我が国もアラニアに立ち向かえる」





 ヘレンモールには国からすぐに遠距離会話装置で報告が来た。


「……王、感謝します」

 アラニアへの戦は拒絶した。引き続きオーディルビスとの戦に集中しろという内容だった。


 神教の圧力に屈するかと心配だったが、即日に拒絶連絡が来てヘレンモールは安心していた。


「いくらなんでも滅茶苦茶だったからな。さて王の期待に応えねば」


 陣容を見る。

 オーディルビスは砦と、丘に作った陣地に兵士を配置し侵攻を防ごうとしていた。


 ヘレンモールは

「とにかく王都に向かい駆け抜ける」

「挟み撃ちが恐ろしいです」

 部下からの進言に


「それが狙いだ。挟み撃ちは想定していない状況だから脅威なのだ。始めからそれを覚悟して準備すれば単なる白兵戦だ」


 ヘレンモールの作戦は王都に進撃すれば必ず敵は砦から出てくる。それを叩く。


「囲まれても気にしないアラニアの戦いを参考にしよう。相手は戦の経験が少ない。冷静に対処すれば必ず勝てる」


 =====================


 ツーバックとバルドスの戦いは長引いていた。


 激情の二人ではあるが、二人とも短期で戦が終えられない理由があった。


 バルドス側は単純に年齢。

 なにしろ老兵が多い。連続した戦には耐えられない。休みながらになってしまう。


 ツーバック側は

『ティムトッグを行かせた。絶対に帰ってこい』

「えーーーーーー!!!!」

 アラニア本国からの停戦命令。


 マリネスとアラニアは早期に話し合いを行い

「とりあえず偶発的な戦闘ということで互いに問題にしない。速やかに戦闘を終わらせる」

 という事で合意した。


 仲の悪い二国だが、ここでぶつかるのは本意では無かったのだ。


『お前な、なんでお前がマリネスと戦うんだ。バカか。お前が削ぐのはオーディルビス。バルドスを殺すのもオーディルビスの仕事だ。それで奴らをボロボロにするんだ。何度言えば分かるんだ』

 かなり怒った口調のドクドレ。


 ドクドレとツーバックは仲がよく、ドクドレが怒ることなど滅多にないのだが


「だって、バルドスだぞー! 戦いてーじゃん!」

『病気で死にそうな爺をいたぶってどうするんだ』


「いやいや! 元気! バルドス元気になってるんだよ!」

 その言葉に遠距離会話装置から大きな溜め息が漏れる。


『いいから、今すぐ停戦しろバカ。反省しろ。俺にこれ以上恥をかかせるな』


 そう言って遠距離会話装置がキレる。


「えーーーーーー。やだよ、せっかく戦ってんのに。でもドクドレ、キレたらこえーしなー」


 ツーバックはブツブツ言いながら部下の元にいく。


「将軍、本国からはなんと」

「帰ってこいってよ。ドクドレがキレてる」

 その答えに苦笑いする部下。


「今ならば引き上げも可能です」

「そっかー。じゃあバルドスに最後に挨拶して帰るか」




 マリネスの陣地。

 怪我人だらけの状況。これ以上の戦は厳しい。皆がそう思っていた。


「バルドス様、ここは引き揚げましょう」

「ならぬ! 戦地で死ぬことこそ誇り!!!」

 バルドスは頑固だった。

 部下の引き上げの進言を頑なに聞かない。


 そんな陣地に


「いやー、バルドスさん久しぶりですねー」

 にこにこしながら一人の少女が現れる。


「……だ、だれだ?」

 突然現れた見知らぬ少女に驚き、警戒する部下達。


 一方でバルドスは

「……懐かしい仕草だな。お前アライエルの妹か?」

 アライエル。その言葉に皆が振り返る。


 マリネスで外交官を勤めた女性。だが、教会を焼き殺された。


「本人ですよー。魔法で顔を変えまして」

 バルドスは疑うことなく


「そうか。久しいな。元気そうでなによりだ」

「ええ。それでご相談に来まして」

 アライエルはニコニコしながら


「バルドスさんの寿命はもう数日しかありません」

 その言葉に部下達が立ち上がる。

 だがバルドスは静かに頷いた。


「……なんとなく。気付いていた。この体調の回復は異常だと」

「ええ。私が聖女様に泣きついてお願いしました。信徒ではないが、特別に元気にしてほしい人間がいると。私は今の聖女様の力を見て驚いたのです。寝たきりで死を待つだけの王子が、元気いっぱいになり戦って死んだ。その姿を見て思い出しました。あなたも軍人としてあのまま病で死ぬのは耐えられなかったはずです」


「……そうか。……心から感謝する。……言葉など軽いな。うまい言葉も出てこない。だがこのバルドス、全生命を掛け感謝している」


「私への感謝は不要です。代わりにやっていただきたいことが」

「ツーバックとの決着か?」

 それに首を振る。


「アラニアは将軍交代を命じています。智の要、ドクドレが本国を出るわけがない。代わりに来るのはティムトッグ。それを叩いて欲しいのです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ