アラニアからの援軍
「タチアナ様。王が傷付いたなどあれは士気は落ちします。暫くは一度お国にお戻り頂いた方が」
ディルアルハからの進言。
実際に敵からの矢がかすりそうになったのだ。
「確かに、矢傷で泣き喚いたり、傷付かないように奥で震えるような真似をするならば、戻った方がいい。だが私はそんなみっともない真似をする気はない」
ディルアルハに任せたいのは本音だが、前回任せた時に戦線が硬直したのが気になる。
あれは本来は討って出ていいタイミングだった。
ディルアルハは優秀ではあるが決断力には疑問がある。
「兵士に死人が出てから逃げ帰ったとなれば、余計兵士達の士気は下がる。私はしばらくここにいる。だが問題が無いわけではない」
戦って分かったこと。
相手はこちらに似ている。
遠距離攻撃が得意同士。
似た軍同士となれば、後は指揮官と戦歴の差が出てくる。
そういう点で、何度も強国と戦い抜いたアンジ公国は相当有利。
「投擲で競うならば、高い位置にいる我らは有利。不安な点は、敵軍が砦を迂回することです」
「兵を分ける?」
「はい。砦には2000もいれば十分。残り3000は高台に陣を張り待機させます。幸いグラドニア国土は川を挟んで高台側ですからね。守りやすい地域です」
守りの優位差で劣勢を覆せるか。
それにかかっているが
「そのうち私もグラドニア王都には戻る。だがそれは今ではないわ。なんとしても国境線の戦いは守り抜く」
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「相手は投擲に長けている。マトモに攻めれば被害が多い。策を考えねばならん」
ヘレンモールは陣で将を集め会議をしていた。
「砦に籠もられるとキツいです。迂回して、出てきたところをたたきますか?」
「それも考えるべき策だ。恐らくは考えられている。別働隊はいるだろうな。挟み撃ちになっても撃退できれば問題はないだろうが」
ヘレンモールは少し考え
「アラニアから救援の申し出が出ている。有り難く受け取り、ツーバックに北から攻めてもらおう。ツーバックならば挟み撃ちなど関係ない」
「なるほど」
「その上で我らの動きは少し考えねば。少しぶつかり合っただけで戦死者が140人、負傷者は420人だ。死者が多すぎる。あいつらの投げ槍と投げ斧は色々マズい。また攻めるのは無しだ。陽動作戦をして、この砦に出来るだけ釘付けにできるようにする」
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「せっっんんんんっっっ!!! そーーーーーだぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「やかましい!!! ガキかお前は!!!」
アラニア王都。
ここには第一軍将軍ツーバック。第二軍将軍ドクドレ。そして第三軍将軍ディムドッグがいた。
子供のようにハシャいでいるのがツーバック。
突っ込んでいるのがディムドッグ。二人は仲が悪いことで有名だったのだが。
「うるせえ! ばーか!!! 戦争だぞ! 戦争!!!」
その二人の言い争いを冷静に見ながらドクドレは
「……ヘレンモールは兵士の損失を恐れている。ツーバックに直接王都を突かせて、その間に戦力が寸断した砦を奪うつもりだ。ツーバックはなにも考えずグラドニアの王都を攻めろ。細かい策は俺がやる」
「ああ! 任せろ!!! いやー! たーのしーみだーーー!!!」
ツーバックはニコニコしながら部屋から出て行く。
「……なんであんなにうるさいんだ、あいつは……」
ディムドッグの溜め息に
「同感だ。うるさい」
ディムドッグはびっくりした顔でドクドレを見る。
ドクドレとツーバックは仲良しで、ディムドッグとは仲が良くないのだが。
「毎日、毎日。せんそーがー、たたかいてー。とか、駄々っ子のように暴れれば、そらうるさい。本当は行かせる予定なんか無かったんだが」
「……お前も大変だったんだな……」
珍しくこの二人は頷きあっていた。




