砦での攻防戦
グラドニアの占拠もまともに終わっていない状況での攻防戦。
色々問題だらけなのだが
「幸い食糧は軍港から奪ったものと、既存の軍隊から没収したものでしばらく持つ。貴族や王族で信仰転換出来ない連中の財宝を没収して、それを国庫に入れなさい。代わりに民衆は一年無税でいくわ。我々は民に寄り添う姿勢を見せる」
取りあえず民の反乱を封じ込める。
兵士の殆どは解散させる。そこで反乱を煽られても大丈夫なように、この体制の利点を矢継ぎ早に出さないといけない。
「貧民への食糧支援もしなさい。また仕事はいくらでもあるわ。仕事が余る人間には街道整備をやらせなさい」
それと治安。
「元兵士で信仰転換に応じた人間には給料を厚遇して治安部隊にしなさい。治安維持は兵士から見れば楽な仕事。喜んでやるわ」
さて、そこらへん終わらせた上で
「アンジ公国のヘレンモールとの戦いをする。それで、ヘレンモールは強いと聞いてはいる。具体的にどう立ち向かうか」
ディルアルハとの話し合い。
「はい。アンジ公国という国は基本的には弱国です。帝国内でも貧しい国です。山に囲まれ農業は盛んではない。しかし代々の将軍に有能な人間が多く、以前からアラニアと対立し戦っていました。アンジ公国とヘレンモールの名声が高い理由は、無敵と称えられたアラニアとの戦争で撃退に成功したことです」
「帝国本国を占領したアラニア。それすら退ける存在がヘレンモールという訳ね」
「はい。今帝国は割れています。アラニアの横暴に素直に従っている国の方が少ない。その国々もすぐに逆らえないのは、アラニアが強く、自分達が弱いからです。そんな中、アラニアと何度もぶつかり互角に戦い抜いているヘレンモールは希望なのです。今、反アラニアの神教と他の国々は続々とアンジ公国に支援しています。そんな希望を背負わされたヘレンモールは、簡単な相手ではありません」
なるほどねー。
「で? どうしたらいい?」
「はい。国境線で対峙しますが、我々の利点は遠距離の攻撃。既に対峙する場所を選定しております」
そう言って地図に指を伸ばす。
「レフトシア砦……」
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ヘレンモールはようやくディマンド公国から出ることができ、まっすぐにグラドニアに向かっていた。
途中の休憩時に
「アラニアが?」
「はい。グラドニア全土が占拠されたと聞き、援軍が必要ならばすぐに動くと。既に第1軍が準備しているそうです」
その言葉に考え込むヘレンモール。
「……よりによって策が出来ない猪突猛進のツーバックか……グラドニア国土を荒らすのが目的か?」
ヘレンモールはアラニアを信頼していない。
だが、この状況で食糧支援だけではなく、援軍まで手配しているアラニアを断る筋合いはどこにもなかった。
現にアラニアの支援のおかげで、馬の乗り換えなどもスムーズに出来、進軍は順調に進んでいる。想定していなかった全土占領に伴う援軍も当然の話。
だが
「取りあえず我々で当たってみて、ダメならば援軍を頼もう」
ツーバックと言う将軍は猛勇だが、戦い方は荒い。
向こうに策があると色々マズいのだ。
既にグラドニア国土はすぐそこに見えている。どちらにせよ援軍前に戦うのは確定。
「どれぐらい手強いか。油断すれば負ける。慎重にいこう」
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アンジ公国とオーディルビス王国。
まだ正式に宣戦布告の書文が回っていなかったため、戦前に届くことになった。
「確かに。これを持って受理とします」
タチアナ。
タチアナもレフトシア砦にいた。
双方、姿が見える段階での宣戦布告。
「さあ! 戦旗を掲げなさい! 戦闘準備!!!」
攻めるヘレンモール。守るオーディルビス。
双方の特徴はすぐに目に見えていた。
「なに!? 相手も遠距離が得意なの!?」
「タチアナ様は砦内に!!!」
オーディルビスは一気に弓矢と投げ槍、投げ斧、投石などで一気に被害を与えたが、向こうからの投擲の数もすさまじく、既に砦の上で投擲していた射手が何人も死んでいる。
弓に突き刺さり、そのまま砦から落ちていく者。
血を流して、奥に下がるもの。
「くそっっ!!! 砦に籠もったのは失敗か!? いや! それでも高い位置からの投擲は有利!!!」
ディルアルハは盾で守りながら、必死の指揮をとる。
一方のヘレンモール。
「な!? 何人が投擲してるんだ!?」
入れ替わり立ち替わり。
オーディルビスの兵士達はどんどん交代しては、弓矢や投げ槍をしてくる。
弓矢はもちろん。投げ槍も技術がいる。
専門に訓練しなければ、当たっても大したダメージにならない。
だが、見た状況ではオーディルビスの兵士は皆が相応の投擲の訓練をうけているように見える。
アンジ公国の兵士はそこまで多くない。
連れてきた兵士はオーディルビスと同程度。
あくまで試しで当たったのだが
「一度陣に引き上げろ! 相手の力量はこれで十分分かった! 対策を練る!」




