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王都陥落

 グラドニア王国への進路。

 事前に調べており、最短距離を走っていた。


 半日走り続けただろか

「……タチアナ様!!! あの丘を登りきると王都から見えます! 一度立ち止まるべきです!」

 ディルアルハの声に立ち止まる。


「……休憩と、装備を配りなさい」

 馬には武器と鎧を満載した荷台を引かせている。

 それを各兵士に配っていく。


「……」

 疲労はそうでもない。聖女様の祝福のおかげだろう。

 本来ならば食事をして、万全の状態で殴り込みたいが


「……ここで見つかり王族に逃げられては無意味です。一気に囲むべきかと」

 ディルアルハ。


「そうね……。全軍! 準備が終わり次第点呼!」



 隊列を整え、一気に攻め込む。

 城壁に囲まれた街。そしてその中央にそびえ立つ城。

 城壁都市。


 城としては強固ではない。理由は王都に攻め込まれる恐れが少ないからだ。

 グラドニア国土のど真ん中にある王都。


 私達は軍港からまっすぐ向かってるからイレギュラー。

 さあ、城が大きくなった。


「一気に雪崩れ込め!!! 陣形を崩すな!!!」

 私の位置は陣の真ん中。


 私は戦闘能力無いからね。

 それでも王が、将がド真ん中にいることで士気は上がる。


「キャアアアアアアア!!!!」

「な!!! なんだ!!!!」


 城壁近くでビックリしている農夫や女達。

 まだ城壁の門は開きっぱなし。

 そらとっさに判断出来ないでしょうね。


「城門を閉じさせるな!!! 何人か残って開けっ放しにしろ!!!」


 街への侵入。

 城までは大きな道。真っ直ぐだ。


 城へは橋が渡されている。あれ上げられるんだろうけど、上げてはいない。


 陣形は道に合わせて狭くなる。

 そのまま駆け抜けて


「まっ!!! まて!!! お前ら、まさか!?」

 ようやく城から兵士が出てくる。


 おせーよ。


「ぶちのめせーーーー!!!!!」

 そのまま私達は城に雪崩れ込んだ。



 王の間。

「……ば、ばかな」

 呆然としているグラドニアの王。


 既に王族と家臣達は拘束した。

 兵士達は武器を取り上げ、全裸で牢屋にぶち込んだ。


 殆ど戦らしい戦にならなかった。

 なにしろ主戦力は軍港にまだいるからね。


「2つ選択肢をくれてやる。降って生き延びるか、逆らって死ぬか。両方王族に相応しい待遇はしよう」


 私は剣をグラドニアの王の喉元に突き付ける。


「ひっ!?」

「どっちだ? 元王族として毒を飲んで死ぬか。それとも誇りは失うが安泰に暮らすか? 好きな方を選べ」

 そのまま私は剣を脚に向ける。


「すぐに選べないのならば仕方がない。逃亡防止に脚をもらう」

 私はそのまま剣をかかげ、

「分かった! 降る!!! 降るから!!!」

 根性なしが。


 割と本気で脚を刻もうとしていた。

 私は血に慣れないといけない。

 兵士達に殺し合いをさせるのだ。これぐらいはしないといけない。


「……そう。ならば全国民と全兵士に呼びかけなさい。グラドニアは降伏したと」


 =======================


「敵地を真っ直ぐ走って王都に突入とか、あいつらもバカだし、それで落ちるグラドニアはクソバカだな」

 エウロバは呆れたように言う。


「マヤノリザとの戦いが伏線でしたね。あれでもうグラドニアの軍の士気は最低になりました。しかしあれだけやる気の無い兵士を取り込んでも害悪なだけでしょう」

 ジェイロウは淡々と答える。


「それで? アンジのヘレンモールは?」

「ドクドレの足止めが効いていました。ようやくディマンドから出れるそうです。グラドニアでの戦いですね」


「潰し合ってくれるのが理想だ。ヘレンモールなら相当な戦になるだろう」

「ええ。普通なら歴戦の名将ヘレンモール相手に勝ち目はない。ですがオーディルビスには勢いがある。簡単に敗れないでしょう。それでエウロバ様。皇帝のお付きの者から報告が来ました。いよいよやるべき時が来たかと」


「……そうか。ついにか……」

 エウロバは切なげな顔をする。


「龍姫からの正式な使者を待て」

「かしこまりました」


 ジェイロウが下がる。

「……皇帝の最後か……この帝国は変わる時だ。皇帝の血筋はもう限界だったのだ」

 エウロバは自分に言い聞かせるように呟いた。


 =======================


 黄金色に輝くドラゴンが、山の上から人間の街を見ていた。

『……新たな聖女は厄介だ。この大陸に進出されるのは色々マズい……』


 ゴールドドラゴンは龍姫と連携を常にとっていた。

 そして、新たな聖女の厄介さにも気付いていた。


『聖女の勢力拡大は防がねばならぬ。さて、どうするか』

 ゴールドドラゴンは策を練りながら、街を見ていた。


 =======================


 オーディルビス王国のグラドニアの占領。

 その顛末はすぐに全国に流れた。


「結局まともに戦わずに占領完了と」

 聖女ミルティアは果物を食べながらルピアと話をしていた。


「……戦争って、そんなに簡単なものではないのでは……?」

 ルピアからの疑問に


「そらそうですよ。今回のグラドニアには既にボロボロになっていたからですね。しかし、タチアナさんが自分で指揮取って軍動かす現状は早くどうにかしたいなー」


 ミルティアはモリモリ果実を食べる。

「……タチアナのこと、心配なのね……」

 少しホッとした顔で見るルピア。


「そらそうですよ。オーディルビスは単独でなんとか回りそうなのはタチアナさんが有能だからです。次の戦いは確実に人が死にます。タチアナさんが巻き込まれては困る。一度戻ってきて欲しいんですけどねー」

 ミルティアは果物をほおばりながら


「しっかし人がいませんねー。見つけられていないだけなのか。本当にいないのか。取りあえずやる気のない王族は総とっかえかなー」


 ミルティアはルピアに奉仕されながら笑っていた。


 =====================


『ドクドレ、個人的には素直にヘレンモールにサリルハンドを攻めさせた方が良かったと思うのだが?』

 ジェイロウからの遠距離会話。


 ジェイロウは帝国本国におり、エウロバを守っている。

 ドクドレはアラニアに戻り様々策を練っていた。


 その二人だが遠距離会話装置で常に連絡は取り合っている。その中で疑問に思っていたことをドクドレに聞くジェイロウ。


「……警戒しすぎだ、と笑われそうだが」

 ドクドレは少し憂鬱そうに言う。

「ヘレンモールと直接戦ったことがあるが、感触としてはあいつは近接戦闘の指揮はそうでもない。我等、四将軍の方が上回る。問題は攻城戦など離れた戦いだ。アンジ公国は弱国だが、少ない人数で城攻めに何度も成功している。本人も言っていたようだ。自分は城攻めが得意だと」


『……なるほど。籠城戦はむしろ圧倒されると予想したのか?』

「圧倒ならいいがな。軍港で戦えば、形勢不利となればすぐにでもオーディルビスは海に出る。ヘレンモールは海でわざわざ戦わん。つまり海を挟んで睨み合いとなる。これでは双方戦力は維持されたままだ。理想としては反アラニア勢は潰し合わせるべき」


 ドクドレは鋭い目で地図を見ている。


「だから、グラドニアを取り込んだ上で争わせた方がいい。野戦中心の方が双方の力は削がれる。……それと、そろそろツーバックが暇だ暇だうるさい。援軍という名目でいかせるのもいい。しばらくグラドニアで争わせ、あの国の国力を削ぐ。最近のグラドニアの停滞の原因は王にあった。タチアナがまともな治世をすれば化けるぞ」


 =====================

(タチアナ視点)


 グラドニア占拠は様々な問題があった。

 なにしろ問題なのが無血開城だったことだ。


 要は家臣も軍もそのまま残されてしまっているということ。


 こいつらどうしよう?

 そんな問題。放置しておけば確実に反乱を起こされる。

 だが、それに対する政策は既に考えていた。


「我等は聖女様に帰依している。兵士ならびに貴族は聖女様を信仰せよ。出来ないならば追放だ。なお平民は信仰を変える必要はない。問題になるのは兵士と貴族だ」


 要は信仰変えるやつだけを公職につける。

 そして

「兵士以外からは武器を没収する」


 これによって、意欲のあるやつだけを拾い上げる仕組みを作る。


「貴族や使えない兵士が多すぎる。鎧のない兵士など使い出がない。全員故郷に帰して開墾させた方がマシね」


 占領したグラドニアを豊かにして、ここを足掛かりに帝国内に領土を広げる。


 だが、そんなになにもかもうまく行くわけもない。


「タチアナ様! 密偵より報告! ディマンド公国に援軍に駆けつけていたアンジ公国のヘレンモールが! こちらに兵を率いて向かっております!」


 ああ、今度は無血って訳にはいかない。

「ディルアルハ! 国境沿いを警戒しなさい! ヘレンモールと対峙するわよ!!!」

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