兄の弔いと、王都への進撃
お兄様の亡骸が送られる事になった。
「……聖女様、感謝します」
「アラニアの四将軍の一人、ジェイロウと一騎打ちの末討ち死に。武人としては望ましい死に方では?」
聖女様はこちらに転移で来られたのだが、何故か私に抱きつきながら話をしてくる。
「聖女様、暑いです」
「やーーーーっと男の臭いがなくなるかなーって」
男の臭い。
そう言えばミルティアは男苦手なのかな?
あんまり気にしたことも無かったけど。
「それで、葬儀ですがここグラドニアで行いたいと思います。それと……」
オーディルビスで葬儀をやるのが普通でしょうけど、兄は帝国本国に殴り込んで死んだ。同じ大陸に墓があった方が喜ぶ。
お兄様の死は覚悟していた。
それはいい。本人も満足だろう。問題は……
「私は別に万能でもなんでもないので、お兄さんとやった娼婦の行方なんて知りません」
先に答えられる。
そこまで抑えているが、行き先は知らない、と。
「別に国としては認知しない。と言い張れば良いだけでは? 貴族が高級娼婦孕ませても知らん扱いはよくある話ですよ?」
そう。それはそうなのだが。
「……よりによって、なーんで王家の指輪渡してるんだ……」
よっぽど気に入ったのか。
王家の指輪と言っても一目で分かるものでもない。
普通はバレない。
単なる贈り物扱いされればそれで終わりだろう。
問題は
「……嫌な予感がする……」
勘。勘にすぎないが、わざわざ強く警告した宰相。
きちんと配慮して妊娠済みの女を選んだディルアルハ。
そこまでやってるのに、女に王家の指輪を貢いだお兄様。
「まあ、私も同感ですが。先の話に気を取られることなく、お国を強くされてください。率直に言えば、オーディルビスは単独で運用してほしいんです。現状聖女に帰依している国で、向上心持って強くしようとしているのはオーディルビスだけです。期待してるんですよ」
そう言って頬にキスをされる。
「ええ。兄の仇は強国になったことで晴らします。まずはこのグラドニア。兄の葬儀が終わり次第攻め込みます」
兄は花に囲まれた棺に入れられて送られて来た。
「……お兄様……」
そこまで悲しくはない。
もう覚悟はしていた。今湧き上がっているのは復讐心。
「……結局、神教の元神皇の受け渡しもまだだしね」
龍姫からの返事は「まだ聞くことがあるから、あなたの兄の生きてる間は無理」と言われ、兄も納得していた。
だが、そもそも受け渡しをする気はあるのか……。
「ディルアルハ。黒い旗を掲げなさい。黒い旗で戦う事こそが、亡くなった王族に対する弔い」
「かしこまりました。それで、どこに攻めましょう」
どこ、か。
「ええ。色々考えました。ここまで戦線が硬直している現状を見るに、敵の動きは相当鈍い。このまま一気に王都を攻める」
「は!?」
「あなたも言ったように、下手に戦い本気になられたら困る。家族を守るためなら本気になるでしょう。だから一気に駆け抜ける。明日まではお兄様の追悼しましょう。兵士達に十分な食糧と、睡眠を与えなさい」
「し、しかし!? 下手に攻めると、挟みうちに……」
「そら、そう思っていたから考えていなかったんだけど」
でも何日睨み合ってるのか。明らかに向こうの軍の動きは遅い。ならばこのぬるま湯な状態から一気に王都を攻め落とす。
「全軍で行くわよ」
「な!? 退路は!?」
退路。そんなものは
「ないわ! 生きるか死ぬか! 落とすか全滅するか! 数は敵が勝る! 数で劣る我等は! 気概で上回るしか無い!!! 落とせねば死ぬ! そう思って攻めるわよ!!!」
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「グラドニアはくれてやれ。問題ない」
足元に跪き、体液塗れで微笑んでいる少年の頭を撫でながら、ドクドレは喋っていた。
「ジェイロウは既に王族に毒を盛った。ならば俺は軍に毒を盛ろう。グラドニアの戦いで紛れ込め。いいな」
「はーい!♡」
笑う少年の笑顔を見ながら
「ヘレンモールの足止めも見事だ。グラドニアが落ちるまで足止めさせておけ。オーディルビスとヘレンモール。戦いの舞台はグラドニアだ」




