表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/40

ファレンスの願い

 ディマンド公国は混乱していた。

「……来ないな」

 攻めてくるはずのオーディルビスが来ない。


 何故かグラドニアを攻めて、そこの軍港を占拠し、そこから動かない。


「軍港を拠点にされるのはマズい。上陸戦の必要がなくなる。適当に沿岸を荒らせばそれで済んでしまいます。我等はグラドニアに援軍に行こうかと」


 ヘレンモールはディマンド公国から出てグラドニアに援軍に行くことを提案した。

 なのだが


「これは陽動作戦かもしれません」

 ディマンド公国の将軍。

 ディマンド公国はヘレンモールを歓迎はしていない。だが、ヘレンモールが優秀であることは誰も疑っていない。

 いざという時にはいて欲しいのだ。


「そうかもしれませんね。ですが、どちらにせよ私は海戦では役にたちません。オーディルビスがこちらに向かってから引き揚げても間に合う」

 ヘレンモールの役割はあくまで上陸戦での撃退。


 そこに帝国本国から使者が来たと連絡が来る。

 内容は


「……わたしにグラドニアの援軍に向かうようにと……」

 現状オーディルビスはグラドニア公国に止まっているが、現状のグラドニアに取り返す余力がないという内容。


 グラドニアの隣国、エネビットからの援軍も想定したが、両国は不仲であり難しい。他国ですぐに軍を派遣できるとすれば、既に援軍に駆けつけているアンジ公国。


 内容に特に文句はない。特に移動時の食糧に関しては全て帝国本国が手配するというのはヘレンモールにとっては助かる話だった。


「帝国本国からの指示です。これで動こうかと」

(恐らくアラニアが狙っているのは、城攻めとなればこちらの被害が増えるということだろうな……)


 だがヘレンモールから言えば、不慣れな海を舞台にした上陸戦の指揮の方が不安だったのだ。城攻めならば何度も経験がある。


 なにしろヘレンモールの師匠にあたる、前大将軍のガダベニルは「城攻めの天才」と呼ばれていたのだ。


 その教えを受け継いだヘレンモールも城攻めが得意。


 そのためすぐにでも離れようとしたが


「いやいや! 困ります!」

「ヘレンモール殿! ここで抜けられるのは!」

 ディマンド公国からの引き止めに、怪訝な顔をするヘレンモール。


 少なくともヘレンモールは歓迎されていなかった。なのですぐに離れても問題なかろうと思っていたのだ。


 だが、ディマンド公国から見ると

(グラドニアの海軍があっさり壊滅したんだぞ……?)

 士気は低いと聞いているが、それでもかつて海軍の強国と言われたグラドニアの敗北は衝撃だったのだ。


 グラドニアが負けるぐらいだ。オーディルビスは間違いなく手強い。

 では我々だけで勝てるのか?


 というのは不安要素だった。


 そして例え海軍が敗れても、陸にはヘレンモールがいる。ヘレンモールが上陸撃退戦をやる。

 となると軍はまだ動きやすい。


「帝国本国にはこちらからも報告します。少しお待ち願いますか?」

 ディマンド公国の話にヘレンモールは戸惑っていた。


 =====================


 元気になったファレンスはニコニコしながら筋トレをしていた。


「素晴らしいな! やはり動くのはいい!!!」

 自分はすぐに死ぬ。

 それは分かっている。

 長く寝たきりで過ごす運命の代わりに、元の健康体の身体を手に入れたが、その代わりが寿命。


 それでも悔いはない。

「ふははははははははっっ!!! 胸が高まるな!!! 戦場で死ねることは武人の誇り!!!」


 帝国本国に殴り込みをかけ、殺される。それでも起き上がれないまま病死よりも遥かに望み通りの死に方。


「お兄様。決死隊の選定をしております。聖女様からは10名までと言われているのですが」

 タチアナが話しかけるが


「決死隊など不要だ! 俺一人でいい! 他の人間は本戦のために残しておけ!」

 大声に少し顔が引きつるタチアナ


(……まあ、決死隊がいないからなぁ……)

 オーディルビスもグラドニアに比べれば士気が高いだけで、暫く戦争をしていなかったという点では脆弱な軍隊。


 特に遠距離攻撃に特化しているせいで、白兵戦を戦える兵士が少なく、その中から例え10人でも引き抜き、死地に送り込むということが出来ないのだ。


「分かりました。それと聖女様のお力にも限界があります。残り4日です……」

「それだけあれば十分だ! 有り難い話だ!」


 ファレンスはニコニコしながら

「ディルアルハに会いたいな。可能か?」



 タチアナは急いで聖女に相談したが

「別に構わない」とされ、二人で転移でサリルハンドに向かった。


「ディルアルハ!」

「これはファレンス様!!!」

 ディルアルハはビックリした顔でファレンスを迎える。


「聖女様の奇跡だ。だが、それも数日。今のうちにディルアルハに会いたいと思ってな」

「……数日……そうですか。ですが、武人にとっては戦場で死ぬことは誇りです」

「ああ、その通りだ。少し話をしたい。いいか?」

「はい!」



 最初は普通に思い出話をしていた二人だったが

「……ここに娼婦はいるのか?」

「娼婦ですか? おりません。なにぶんオーディルビスは軍属娼婦がおりませんし、今は軍港を抑えただけの段階で、女性がおりませんから」


 ファレンスは腕組みしながら


「……死ぬ前にしたいなーと」

「……あー」

 ディルアルハは天を仰ぐ。


「……タチアナ様には……言いにくいですもんね……」

「……どの面下げて言えばいいのか分からんな。それにこれは見栄でしかないが。妹には『仇のために戦場で散った兄』として憶えてほしいからな」

 ファレンスもタチアナを心から愛し、信頼していた。


 自分の仇はタチアナが取ってくれると信じている。

 だからこそ、みっともない事が言えない。


「……オーディルビスは……その。少ないんですよねー」

 ディルアルハは言葉を濁す。


 オーディルビスは海洋国。農業が盛んではなく、殆どが漁が仕事。

 そうなると女性も外で働き続ける。


 ディルアルハの言っている「少ない」というのは、「性の為に尽くす目的の女性が少ない」である。


 基本的にオーディルビスの女性は筋肉がつき、化粧も殆どしない。潮風が強く化粧が乱れてしまうし、文化としても美しく着飾るという文化がない。


 他の国には当たり前のようにある「娼婦」という職業もほぼ0。

 それは「貧しくて娼婦買ってる余裕がない」もあるし、「そもそもそういう文化がない」もある。


 他国の「娼婦」は、着飾り、性を売りにするプロフェッショナル。金は貴族並みに稼ぐものもいるし、待遇も上級娼婦になれば、自分の意志がなければ性行為する必要すらない。


 そんな人間を養う余裕すらオーディルビスにはずっとなかった。

 王宮もそう。常に火の車で余計な人を囲う余裕がない。


 また代々の王が子沢山で、妾を囲う必要も少なかった。


 その辺りからオーディルビスで、妻以外の女とやる。というのは割と大変なのだ

「……ビザルディかマティーネとやらせてくれればいいんだが。あの二人とやるにはタチアナの許可が必須だしな……」


 以前タチアナが媚薬を大量にぶち込んでビザルディとやらせたが、それは口戯。


 ファレンスはせっかく元気になったので性行為がしたい。


「……そうですね……街に行きますか? ここから近い街にいけばあるでしょう。二人ぐらいなら抜け出せますし」


 ファレンスは死を覚悟している。

 だからこそ。

「うむ。済まないがセッ〇スしたい。行こう」


 男二人で抜け出して、女を買いに行くことになった。


 =====================


「ディルアルハを殺せばオーディルビスは崩壊する」

 アラニアの第二軍将軍、ドクドレは遠距離会話装置でジェイロウと相談していた。


『崩壊させてどうする? オーディルビスは敵ではないぞ』


「いずれ敵になるさ。タチアナは聖女様の尖兵。聖女様の勢力拡大のための尖兵として、必ず帝国を荒らす」


 ドクドレは冷静だった。


『……しかし、今はオーディルビスの力を使って、反アラニア勢力を駆逐する時だ』


「なかなかそれが難しい、というのが俺の結論だ。タチアナとディルアルハの組み合わせはなかなか厄介だ。俺としてはヘレンモールを殺したら、次はディルアルハだ」


 知将と呼ばれるドクドレ。

 彼から見て、オーディルビスは脅威に映っていた。


「スパイに色々オーディルビスを探らせているが、タチアナは決断力のある将の器があるし、ディルアルハは参謀として有能だ。王と将軍の関係としては変だが、あの二人の能力としては最善だ」


『……そうか。ならばエウロバ様に相談しよう』

 ジェイロウの言葉に


「我がアラニアが帝国を抑えるのは簡単ではない。このままでは十年はかかろう。それを三年で終わらせる。その為にはなんでもするさ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ