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グラドニアとの戦い

「タチアナさん、意味わかんないなー」

 聖女ミルティアは果実を齧りながら呟いていた。


 オーディルビス王国は、ディマンド公国に宣戦布告をして向かった。


 だが、途中で進路を変えグラドニア公国に襲い掛かったのだ。


 今ミルティアはその状況を抑え、エウロバと相談をしていた。


『なぜグラドニア公国か? は分かったよ。あいつら私に黙ってオーディルビスに宣戦布告したらしい。ディマンド公国への援軍だったようだ』

 エウロバからの連絡。


「だとしも意味が分かりませんね。帝国ならどこでも良いわけではないでしょうに」

 オーディルビスは既に軍港を占拠していた。

 そこにグラドニア公国の陸軍が迫っているのだが。


『グラドニアの現王は無能。また軍もマヤノリザにボロボロにされている。狙うならヘレンモールが駆けつけるディマンドよりもグラドニアだが。狙ってはないんだろうな?』


「ぜーんぜん。タチアナさんって結構気紛れなんですよねー。それでかなー?」

 タチアナは部下の『軍港占領による補給』に頷いたという話だったが


『とりあえずグラドニアはファッキンファッキン(くそったれ)だから良いとして、隣国には攻めるなよ? と伝えておいてくれ』

「はーい」


 ミルティアはエウロバとの交渉を終える。


「なかなか大変ですねー。二重思考できても追い付きません」

 ミルティアはエウロバと会話をしながら、他の地域に対して『祝福』を行っていた。


 大陸中央部で発生しそうになった嵐のエネルギーを吸い取っていたのだ。


「るぴあー、おなかすきましたー」

「……いや、あの今食べてますよね……???」

 後宮の主、ルピアが呆れ果てた顔をする。


 既に皿いっぱいに用意した果実は空になっている。


「今度はお肉が食べたいです」

「……はい、はい。今用意させます……」

 ルピアはそのままドアから顔を出し、料理を頼む。


 ルピアの今の仕事は、聖女ミルティアのお世話。

 ミルティアは『祝福』により世界各国の問題を解決している。

 それに集中させるのがルピアの仕事。


 過去の聖女は、妾全員で面倒を見させていたが、今はルピア一人でやっていた。


 それには様々な理由があるが、ミルティアはルピア以外の妾との性行為を望んではいなかった。


「お肉がくるまで口寂しいです」

 そう言って舌を出す。


 元々のミルティアの感情。

 先代聖女の記憶。

 そして聖女ミルティアに常に雪崩れ込む民衆からの祈りの声。


 それらが合わさって、ミルティアはストレスを感じる度に、食事とルピアとの逢瀬を望んだ。


 ルピアは未だに慣れない。

 ルピアから見ればミルティアは可愛い、手の掛かる妹でしかなかった。


 聖女の妾は覚悟はしていたので、性行為そのものに文句などはまったくない。

 だが、ミルティアに性行為するのが慣れない。


 そして、そんな躊躇うルピアを意地悪く責めるのが、最近のミルティアの楽しみだった。


「なにしているの? 後宮の主? そんなに嫌なら他の妾をいたぶるけど?」

「い! いえ! すぐに……」

 そのままルピアはミルティアに抱きつき、ゆっくりと口付けする。

 そこに


「聖女様、お持ちしました」

 扉の向こうからの声。


 マイセクローラの声。

「入って。机に置きなさい」


 ルピアは慌てて離れようとするが、ミルティアは離さない。

 二人抱き合った状態でビネハリスが中に入る。


 抱き合う二人を少し見るが、ビネハリスは特に反応を示さず


「熱々のお肉なので、少し冷ましてから食べられた方がいいかと。ではごゆっくり」

 そう言って部屋から出た。


 =====================

(タチアナ視点)


 グラドニア公国に着いた。

 軍港の占領はなんの問題もなかった。

 なにしろ守るべき海軍は既に降伏しているのだから。


 軍港には武器や食糧を溜め込む巨大な倉庫がいくつもあり、そこに兵士達は閉じ込めることにした。


 中身?

 当然全部没収です。


「タチアナ様。すぐ近くに陸軍が展開しているとのこと。奪うものを奪ったら、もう出港すべきです」

 将軍からの意見。


 確かにそうだろうね。

 ただ

「あまりにも弱兵すぎる。士気が低すぎる。これは海軍だけ? 陸軍もそうでは?」

 無理にディマンド公国を今すぐ攻める必然性って実はない。


 なにしろ、私がやろうとしたのは

「帝国のある大陸への足掛かり」なのだ。

 別にディマンド公国には拘らない。


 ディマンド公国は、オーディルビスと友好国のアディグル王国が隣国にあるから狙っただけだ。


 グラドニア公国が狙えるなら別にそれでいい。


「……一度当たりますか? しかしここで敗れれば我らはディマンド公国を攻める余力を失います」

 まあそうでしょうね。

 でも


「その時は略奪した食糧と武器を慰めにしましょう? 展開しなさい」


 今いるのは軍港。

 私が陸軍と当たってもいいと判断した理由は、軍港は周りを城壁で囲っているからだ。


 軍港は国家機密。勝手に入り込まれないように四方を囲うのが当たり前。


 つまりこの軍港は籠城戦のような形を取れるのだ。


 籠城戦ならば、遠距離が得意な我らは有利のはず。

「弱兵相手に経験を積むしかない。今はその好機」



 街の占領というのは簡単なものではない。

 ディマンド公国を選んだ理由も、アディグルからの援軍が頼めるからだ。


 なにしろ南群諸島を占領するときに、一番苦労したのが治安安定までの統治だったのだ。


 南群諸島占領自体は500の兵で済んだ。

 戦いらしい戦いにならなかった。


 だがその後の戦略統治には1500の兵士が必要になったのだ。

 治安維持の為に、民が納得し安定する為には占領よりも人数が必要となる。


 オーディルビス単独では国全体の支配は難しい。

 あくまでも友好国と連携しながらの状態でないと無理。


 そういう点では、民衆のいない軍港に籠もり籠城戦を行うのは最適に近い。


 ただ問題が無い訳じゃない。

「捕虜の兵士達はどう?」

 ディルアルハに聞く。

 士気が低いとは言え、自分達の命がかかれば別だろう。

 閉じ込めてはいるが、食糧は潤沢に渡していた。


 なにしろこの軍港、大量に食糧あったからね。

 多少は問題ない。


「はい。こちらに害意がないことが伝わりホッとしているようです……というか、平和ボケというか……」


 投降が早すぎたのも「こんなんで死にたくない」らしい。そして

「降伏すれば殺されないだろうと思っていたようで。不気味なぐらい素直です……」


「反乱には気をつけなさい。騒ぐようなら見せしめに殺すのも躊躇うな。逆に素直ならば厚遇なさい」



 迫る陸軍はすぐに見ることができた。

「数はそんなに多くないわね」

「ざっと3000かと……。恐らくは近くにいた部隊でしょう。本隊は別かと」


 またこの行軍が明らかに遅い。

「本隊と合流を狙ってるの?」

 攻城戦は基本的に攻める側の人数の方が必要となる。


 小部隊で単独でぶつかるのは得策ではないだろう。


「……確かに本隊と合流は必須でしょうが……なにはともあれ、こちら側の兵を探らなければいけないかと。なにしろ、軍港が占領されたことは分かっても、こちらの人数までは分からないはずです。例え出陣時の人数が知られていても、既に半分は次に向かった、という可能性もありますし……」


「普通なら、一度は戦ってくると」

「戦わなくとも使者は送ってくるものでは……?」


 なるほどね。


 でもなんかマゴマゴしてこっちに来ない。


「こちらから攻めるのは下策です。こちらはその間に備えを十分にしておきます」

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