最貧国の女王
シリーズを完結まで同一サイトで載せたいなー、という動機から、今回連載となりました。
「龍姫と聖女シリーズ」の本編4作目となります。
オーディルビス王国。
巨大な大陸に、ただ一つ存在する国。
だが、その大陸は険しく巨大な山が多く存在し、人間はおろか生物が住める範囲も極狭だった。
海岸沿いの狭い土地に固まって住む人間たち。
海沿いの街の付近は塩害が多く、しかし大陸のほとんどを占める山脈には作物を育てるような場所はない。
幸い、海の幸には恵まれていた。それでも辛うじて飢えない程度の余裕。
世界で最も貧しい国と呼ばれる、オーディルビス王国。
その国は、新しい王に代わり大きく変わることになった。
「……おにいさま……」
新しい王。タチアナ。
彼女には日課がある。それが寝たきりとなった兄への挨拶。
本来はタチアナの兄達が継ぐはずだった。
それが、次男が病死。そのあとに国に襲いかかった流行病で長男が病死。
最後の三男は死ななかったものの寝たきり状態となり、廃人となっていた。
それにつけこみ、クーデターを起こしたのがタチアナの従兄弟にあたるバディレス。
それを認めず、タチアナを新王に推薦したのが先代聖女。
タチアナの新王就任と入れ替わるように聖女は代替わりした。
その代替わり。
今までとは別種の入れ替わり。
その入れ替わった新聖女、ミルティアの能力は先代までの聖女を上回った。
『奇跡』と呼ばれる特殊能力。
ありとあらゆるエントロピーを奇跡に変換してしまう化け物。
死者は蘇らない。無から有は生み出せない。
だが、それ以外は可能なことが多い。
そんな新聖女の能力で、タチアナの兄は覚醒した。
『……タチ……アナ』
まだ声は出ない。かろうじてできるのは目の動きと、口を動かすことだけ。
タチアナは兄の覚醒に気づき、即座に読唇術を学んだ。
本来は専用の人間も用意しようとしたが、兄がなにを言うのかわからない。国家機密に関わることは誰にも聞かせられない。
わずか3日でタチアナは兄の言葉を聞き取れるようになった。
その内容は
『あの 疫病を ばらまいた 神教を 滅ぼせ』
タチアナは慎重だった。
既に南群諸島を攻め占領している。これ以上の拡大はしばらく無理。
まずは内政を固める。
そういうつもりだったのだ。
だが、生き残った兄、ファレンスの話は具体的だった。
『なぜ バディレス は ていこくに 逃げたか それを しらべろ』
『帝国には 病が なかった こんな 離れた オーディルビスにも 病は きたのに だ』
『交易は 帝国とも している エルメルダと アラニアに 船はいっていた』
兄からの話を真剣に聞くタチアナ。
『俺が こうなったのは どうでもいい これも 運命 だが 兄貴 の 仇は 討たねば ならん』
寝たきりになり、水や食事は流し込まれることでしか摂取できない。
筋肉を誇り、尊敬する長男ディナンを力で支えると笑っていたファレンスの面影はない。
痩せこけ、青白い顔。
『ここに いたり タチアナ お前が王になったことに 意味はあろう』
「お兄様。今の聖女様のお力は凄まじい。必ずや良くなります。良くなったら王の地位はお兄様が……」
『無理だ 聖女様の お心はわかる。 俺は 治らん。 俺が 治れば、兄の復讐で 修羅となろう。今の会話が せめてもの慈悲』
はあはあと呼吸を乱すファレンス。
「お兄様、無理はなさらず」
『うむ……また後日にしよう……』
タチアナは頭を下げ部屋から出る。
そして部屋から少し離れると
「ビザルディ!!!!! ビザルディを呼びなさない!!!!」
怒鳴った。
怯え、震えながら跪く少女。
タチアナは両手に美少女をはべらせ、焼き魚を食べながら明るい声で言う。
「あのさー。こんななりだからさー。たしょーはしゃーないとは思うんだけど。一応私は王様で。君に命じたのは『王の兄の世話』なんだよー? わかってる?」
ファレンスは目と唇しか動かすことができない。
発声もできないのだ。
当然食事も、糞尿の処理もできない。
今までは意識がなかったこともあり1日1度の世話で、それもおざなりだったのだが、タチアナは国に戻るなり、兄を専用の部屋に移動させ、お付きの人間を3人用意した。
意識のある兄が困らないように、常になにかあれば世話できるようにローテーションを組ませるようにしたのだ。
だが、先程兄と会話したタチアナは、兄の服についた残飯や、拭き忘れの跡に気づいた。そしてなにより
「お兄様は意識あるの。わかる?匂いはわかるのよ? ちゃんと拭けよ」
尿の臭い。明らかな拭き残し。
「タチアナさまー。きっとあれなんですよ。ビザルディは奥手で処女だからー。慣れないんですー」
王に仕える少女の一人、マルウェスが笑う。
「ああ? そういうこと? あ、じゃあとりあえずお兄様に処女捧げなよ。」
その言葉に顔が青ざめるビザルディ。
「そ、それは……」
「なに? 王族の妾じゃ不満? じゃあそこらへんの兵士にでも輪〇してもらう?」
「い、いえ!? あ、あの……」
「脅しじゃなくてさー。王の兄なんだよ。王は気紛れで家臣殺せる立場なんだからさー。ちゃんとやってよね」
「す、すみません! 必ずや!!!」
ビザルディが下がった後にタチアナは憂鬱そうに唸る。
「親父が悪いんだよねー。もう王に対する敬意とか無くなってんじゃん。まあこいつがクーデター起こせるぐらいだもんなー」
そう言って、床に転がっているバルディスを蹴る。
「むーーー!!!!」
バルディスの口は布で塞がれていた。
「むー、じゃねーよ。口開くな。息が臭い」
タチアナは残酷な笑みを浮かべる。
「絶望しようがしまいが関係なく、お前は私のストレス発散の玩具だ。私が口を開くなと言ったら開くな」
そう言ってバルディスの顔を踏む。
「ふぎゅう!!!」
そのまま顔を踏み続けながら
「あんたが惨めになればなるほど、皆が理解する。王に逆らう罪はなによりも重いとね」
タチアナは少し思案し
「男との輪姦とかも計画だけして、まだしてないんだよねー。楽しみにしててね」
「むーーーー!!!」
暴れるバルディスを踏みながら
「さて、神教を滅ぼすと言ってもね。取りあえず聖女様と相談かな」