プロローグ
俺は文月学園高等部2年、柊当麻だ背が高いわけでも特別イケメンなわけでもない、その辺にいる高校生だ。あの時までは…
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その日は雲ひとつない晴天だった。夏の暑さが残る9月上旬、ウチのクラス(2-3)は現代文の授業でやる調べ物学習のため、図書室へと集まっていた。「今日は調べものという事で、ここに集まってもらいました。一応国語の授業なんで、本や資料で調べてもらいます。司書さんの迷惑にならないように気をつける事」と現文の科目担当で2-3の担任でもある上原楓が言った。ア◯レちゃんのような丸メガネに時代錯誤のおかっぱ頭、タイトスカートを履いた新人の女性教師だ。
「当麻くんは誰を題材にするの?」と隣にいる広瀬優香は俺に話しかけた。「太宰治かな…」と俺は返事をした。彼女は俺の幼馴染だ。真っ黒で整えられたロングヘアはハーフアップに仕立てられており、綺麗な二重まぶたに鼻筋がスッと通っているその姿は美少女と形容できるだろう。が何故か恋人が出来たことがない。「太宰を題材に…ぶっ…」と優香。そう、この通りくだらない事を言う所謂"残念な美少女"といったところだ。
「当麻くん、本、探しにいこう」と優香はパイプ椅子から立ち上がりながら言った。「そうだな」と俺も優香の後を歩いた。