解析眼と十技眼
リアルの友人……友人?に読み難いと言われたので行間空けました。
「“霊結晶”?」
「はい」
早朝、王国から十二面体のクリスタルの様なものを手渡された。
「実は私は人間ではないんですよ」
「あぁ、それはなんとなく分かってた」
「そ、そうですか」
王国は精霊らしい、この世界の精霊族とは違うらしいが違いが分からない。
「今渡したのは王国の核と言って私の生命線のような役割を持っています」
「そんなもん空気に晒すなッ!?」
渡された結晶を胸に抱いて、落とさないように懐へ仕舞う。
それを見た王国は「大丈夫ですよ」と笑い飛ばし説明を続ける。
「カスイ様に渡したのにはちゃんとした理由があります」
「理由とな?」
「はい、まず第一に私が死なないようにする為です」
「ふむ?」
成程分からん。
「この霊結晶は私の核、いわば本体であってこれが壊されない限り私は死にません」
「まさかのゾンビスタイル、準チートじゃないか」
「チートというのは分かりませんが……そんなものを私自身が持っていれば意味がないですよね?」
つまりは安全な場所に保管するという事も兼ねて俺に渡したってことか。
「俺に渡さなくても、アンジェラさんとか施設の中に置いとけば良いんじゃ?」
「今の理由はあくまで第一です、本題は別にあります」
そう言うと王国は施設内のとある一室へ俺を案内した。
案内されたのは家具も何もない、ロビーより少し手狭な部屋だった。
「此処はどれだけ暴れようと音は出ませんし傷一つ付かない完全防音部屋です、有り体に言えば試験部屋です」
「此処で何をすると?」
「カスイ様には自身の力に慣れて貰います」
「力?」
彼女が何を言っているのか分からないよ。
俺に力だと?俺の拳は黒檀を貫通する程度しかないぞ、一体何が出来ると言うんだ。
「他人の天使を起こすのは慣れていないのですが…………」
王国は俺を部屋の中央へ連れていき、ペタペタと身体を触っていく。
上半身から顔へ指を滑らせ、目に差し掛かったところで手を止める。
「えっと…………?」
何をしているのか分からず、王国に聞こうとした瞬間。
バチィッ!
「あがっ!?」
唐突に全身に痺れが走り、脳が焼き切れる様な痛みに襲われる。
それを見て王国は満足したように手を合わせる。
「あぐっ……うぐおぉぉぉぉぉお…………」
痛みに耐えられず膝から崩れ落ち頭を抱える。
何だこの痛みは!今までに受けたどんな痛みより苦痛だ!これが力だとでも言うのか!?
“釣り合わない力は自らを破滅へと導く”という、俺もその力によって破滅へと向かっているのだろうか。
痛み始めてからまだ数分しか経っていないが、既に長時間痛みを受けた感覚がする。
そして一時間が経った頃、俺は考えるのを止めた。
「―――大丈夫ですか?」
目を開くと、目の前に王国らしきシルエットが立っていた。
辺りがボヤけて見える、ピントの合っていない顕微鏡を覗いているような感覚だ。
「前が見えねぇ…………」
「上手くいったみたいですね」
え、これで?大丈夫なの?怖いんだが。
すると王国は確認するように俺の頭を触る。
「異変は特に無い……かな?自分で視界の感度を変えてみてください」
「変えるって、どうやって?」
「それは分かりません」
「分からないんだっ」
投げやりだな、まあ自分の能力?の使い方知られてたらそれはそれでなんとも言えないからな。
視界の感度っつっても……やっぱ顕微鏡感、レボルバーかネジでも回せってか?
ギュルルルル―――ガチャ。
『《王冠》の扉が開きました、『第一守護天使』を発動します』
「へ?」
脳内で何かが動いた音と同時に視界が良くなった。
「出来……た?」
「おお、早いですね」
身体を触ってみるが特に変化は無く視界も良好、さっき聞こえた音は何だったんだろうか。
「何か違和感はありますか?」
「いや、特には『対象を解析しました』ん?」
『種族名 精霊族:王国 個体名 状態 通常 Lv1208 MP 13850/13850 STR 837 VIT 5270 INT 100 AGI 506 LUK 260 スキル『不動要塞』『自動防御』『第十守護天使』所持』
「…………」
「どうしました?」
何やら画面が浮かび上がっている。
個体名無し?レベル千二百?なにこれアスディバインハーツ?
よく分からんスキルがあるし、第十守護天使ってなんだ?
つか種族名王国って何だよ、王国って種族なの?マルクトが名前じゃいかんのか。
「何か見える」
「何かとは?」
「分からん、ステータス的な何か」
「……私にも分かりません」
「なんだそりゃ」
ハッハッハ、と二人で笑い合うが何をどうするかは結局分からない、アンジェラさんに助言でもしてもらおうか。
「まあ見えるようになったのならもうすぐ終わります」
「分かつった」
「まず霊結晶を持ってください」
そう言われ懐に入れておいた結晶を手に持つ。
重くはない、寧ろ浮いて飛んでいきそうで怖い。
「ではその霊結晶を見て、読み取ってください」
「読み取る…………」
さっきみたいな感じで…………
『対象を解析しました』
『対象 王国の核 個体 の能力が詰まった結晶、破壊すると個体と共に消滅する。特殊な核に対し個体の移設が可能。《模倣》によって個体の姿形や性格、行動を模倣する事が出来る』
おぅふ……マジで本体だったのか、こりゃ壊されないようにしないとな。
「一応説明みたいなのは見れたぞ」
「それじゃあ成功……なのかな?すみません、私もそこまで詳しい訳じゃないので、アンジェラ様に聞けば分かると思うんですが」
「それじゃあ後で聞くか、後模倣ってのが書かれてるけどこれは何だ?」
「あ、それも能力の一つですね、使ってみればわかります」
何か怖いので止めておきます。
「これが俺の力なのか?」
「はい!アンジェラ様からは対象の情報を解析し模倣する能力だと聞いていますから」
「へー……地味だな」
「目を使うので疲労感は溜まりやすいらしいですよ」
やはり俺には主人公属性が無い様だ、残念。
しかしこの能力は何に使うんだ?弱点が書かれているわけでもなしに、使い道が分かるだけな気がするが。
模倣とやらを使う為の能力なんだろうか。
「それでは朝食をいただきましょう、アンジェラ様の作る料理は昨日で久し振りでしたから」
「そーなのかー……あ」
「どうしました?」
「名前決めてない…………」
「はい?」
王国は理解不能というように首を傾げた。
どうしよう、決めるって言って何も考えてない、もう此処で適当に決めてしまおうか。
そういえば霊結晶もマルクトって言ってたな、ふむぅ…………
「……よし、お前の名前はラクサム・レイノだ」
「……ラクサム、ですか?」
キョトンとした顔で王国が聞いてくる。
「おう、ラクサムはマルクトのスペルを変えた、レイノはスペイン語で王国って意味だ、適当で悪いけどな」
あ、スペイン語って言っても分からないか。
王国は一度俯いたがすぐに顔を上げて言った。
「……いえ!不肖ラクサム!精一杯カスイ様に助力します!」
「え?いや、そこまでしなくてもいいけど…………」
「いえ!私がやりたいだけなのでお気になさらず!」
そう言うと王国……いやラクサムは意気揚々と部屋から出ていった。
気に入ってくれたならいい……かな?
『種族名 精霊族:王国 個体名 ラクサム・レイノ 状態 喜悦 従属 カスイ』
朝餉を終えて、ロビーで習得したばかりの能力を色々と試していた。
『種族名 エゴ 個体名 見せかけの部屋 状態 通常 従属 カスイ Lv 10000 MP 0/0 STR 0 VIT 10000 INT 0 AGI 0 LUK 0 スキル『変形』 様々な形に身体を変形させる謎の生命体、その身体は未知の物質により構成され破壊は不可能である』
「ミヤちゃん……お前って凄かったんだな」
レベルの上限が分からなくなった、防御力高ぇな、王国以上とか。
対象というのは生命体にも使えるらしい、いやミヤちゃんが生命体かどうかは判断し辛いところだが、王国にも反応したからこれは間違いないだろう、分からないものは全て解析した方が早いな。
「主殿」
「ん?どうした朧」
気が付くと朧が側に居た。
「主殿にお頼み申し上げたい事がございます」
「お、おう?」
なんだか物々しい、何だ?やっぱり契約破棄してほしいとか?人間殺させてくれとかそんな感じなの?嫌だよ?
と、意味もなくそんな事を考えていたが違った。
「是非とも主殿に稽古を付けていただきたく存じます」
「へ?稽古?」
稽古っていったらあれだろ?師事の基に自分を鍛えるブートキャンプ、え?違う?
「何で?というかまだ安静にしてなきゃ駄目なんじゃないの?」
「それはっ!……そうですが、身体が鈍ってしまいそうで…………」
「あぁ…………」
分からんこともない、日課だった事を暫くやっていないと身体が付いていかなくなったりするアレだな、俺も長らく妹を愛でていない、寂しい。
「つってもなー…………」
……そういえば、朧のステータスも解析してみるか。
『種族名 龍族:夜刀神 個体名 朧 状態 砕身 従属 カスイ Lv1349 MP 13809/24360 STR 1190 VIT 1085 INT 842 AGI 674 LUK 284 スキル『霧霞』『夜霧ノ太刀』『完全開放』を所持』
おお、王国よりもレベル高いのか、防御力は劣るけどそれ以外は十分高いな。
砕身状態って何だ?骨が折れてるからか?砕身だと身体が砕けてる気がするけど。
「……駄目だ、魔力が完全に溜まってないだろ」
「うぐっ……な、なんのことやら」
「しらばっくれるな、そんな状態で稽古でも付けたらすぐ疲れるだろ」
アンジェラさんが言うには魔力というのは精神力の事らしく、魔法を使う時に消費されると同時に消費すればするほど疲労感が増し、尽き果てると身体が動かなくなるらしい。
「それに俺はお前に師事出来るほど強くない、稽古を付けてもらう相手を間違ってるぞ」
「そんな事はありませぬ!主殿は儂やそこらの魔物より段違いの力を持っております!」
「まさかぁ、そんな訳無いだろ」
「いえ、朧の言うとおりですよ」
と、背後から美声が聞こえてくる、我等がアンジェラさんである。
「どういう事ですか?」
「《繋結》を覚えていますか?」
「え?確か契約したらその能力が加算されるとかなんとか……あ!」
「貴方は朧と契約をしてその力を身に宿しています、それ以前にも弱っていたとはいえ夜刀神と互角で戦える力を有していた貴方は現時点で朧よりも強いことが証明されます」
Q.E.D.証明完了!?ナンテコッタイ!更にレイリーさんを化け物扱いできなくなってしまった。
え?じゃあミヤちゃんの防御力持ってるの?龍状態の朧はよく俺の手出血させられたな。
「……ですが、カスイさんに師事してもらう事は許可出来ません、カスイさんの言う通り魔力不足での戦闘は控えた方が良いかと」
「そんな殺生な!」
「いやそこまで?」
朧が「うむむ……」と唸っているのを見てアンジェラさんは溜息を溢し、それならばと提案をする。
「私とカスイさんは午後からとある機関に向かう予定です、貴女と王国は置いていくつもりでしたが、付いてきますか?」
「! 行きます!行かせてくだされ!」
「分かりました、では王国にも連絡しておきましょう」
そう言うとアンジェラさんは振り返り歩いていく。
……アンジェラさんのステータスも見てみようかな。
そう思い集中しようとしたところでアンジェラさんが足を止める。
「そうそう、言い忘れていましたが」
そして俺の方へ振り返りそう言った。
「あまり他人のプライバシーに土足で踏み込むのはやめておいたほうが良いですよ」
「……ナンノコトデショウ」
「いえ、伝えておこうと思っただけです、では」
アンジェラさんは今度こそロビーを出ていった。
…………え?俺が能力使おうとしたのバレてたの?何で?怖ひ。
「? アンジェラ殿は何が言いたかったのですか?」
「さ、さあ、俺にはワカラナイヨ…………」
「そうですか?……ですが外に出る許可を頂きました!存分に堪能せねば!」
朧が子供のようにはしゃいでいるのを余所に、俺は「そういえばアンジェラさんに苗字付けてなかったな〜」と考えていた。
「二人多くないか?」
昨日連れて行かれた広場に四人で向かってすぐに放たれた第一声である。
「そこは……ご愛嬌ということで」
「……まあ良いけどよ」
何か言いたげだったが諦めたのか「付いてこい」と案内を始めた。
「これからまず王都支部の団に案内する」
「? 王都支部って?」
「忘れたのか?私達は帝都から来たんだ、王都に本拠地があるわけ無いだろ」
「あ、はい」
そういやそうだな、それでも一応王都にも団はあるのか。
「王都支部はあくまでも近況報告、神聖協会の監視役だ、人数も少ない」
「グレンさんは王都支部で働いてるんですか?」
「いや、普段は帝都だ、昨日の会議は団長の代わりに寄越されただけだからな」
副団長だから当たり前か、にしても監視役か、神聖協会はどれだけヤバいことやってんだろうかね。
そんな事を考えながら歩いていると、不意に男の叫び声が聞こえてきた。
「き、貴様は!!」
「ん?」
声のする方を見てみると、高そうな服に身を包んだ金髪の男が俺を指差していた。
「お前は…………」
…………誰だ?
「知り合いか?」
「ごめんなさい覚えてないです」
「目に悪い男ですな」
「貴族……ですかね?容姿的に」
アンジェラさんを除く四人が男を見て口々に言う。
すると聞こえていたのか男は怒りだす。
「貴様!またも私を愚弄するかッ!」
また?会ったことあったか?
「入国時に門前で騒いでいた貴族です」
「……あぁ!アラノ・エッグタルト!」
「アラン・エックハルトだッ!」
アランはズカズカと俺の方まで歩いてきた。
「貴様のせいで父上に怒られたではないか!」
「え、いや、自業自得だろ」
「違う!全てお前のせいだ!」
何という理不尽、殴っていい?ねえ殴っていい?
アンジェラさんから「駄目です」という目線を向けられ、代わりに嫌味な目線をアランに向ける。
「で、何か用?俺等これから用事があるんだけど」
「ふんっ!貴様なんぞに用など無いわ!」
じゃあ何で来たし。
「じゃあさっさと帰れよ」
「ぐっ…………」
何を粘ってるんだ?用がないなら帰れば良かろうに。
そう思っていると、アランは歯軋りしながら言ってきた。
「ち、父上が貴様と話がしたいと言っている、付いてくるがいい」
「え、嫌なんだが」
というか用あるやん、完璧に俺に対する用やん。
「な!この私の父上からの用足だぞ!断っていいわけが…………」
「いや、お前の父親の事知らないし、俺が行くメリットが無い」
正論を叩きつけるとアランは「ぐぬぬ……」と唸り。
「ち、父上に報告するからな!いいのか!」
「宜しく」
「〰〰〰ッ!覚えていろッ!」
悪役のテンプレの様な台詞を吐いて走り去ってしまった。
というか仮にも貴族なら護衛くらい付けろよ。
「何だったんだ?」
「気にしなくていいと思いますよ」
グレンさんは不思議に思っていたが、ラクサムに言われて「そうか」と案内を再開した。
にしても貴族様が俺に何の話をしようってんだ?
―――…
「……そうか、連れては来れなかったか」
「も、申し訳ありません父上…………」
アランは実父のドランに先程の話をそのまま報告していた。
「構わん、名も知らぬ者からの誘いなど断るのが当然だからな、貴様の籍も返してやろう」
「は、ありがとうございます……それにしても、何故あの様な落ちこぼれを?」
「何、国王陛下の捜す人物と容姿が似ていたものでな、話を聞きあわよくば城へ連行しようかと思っただけだ」
現在国王は人捜しをしているという、明日には国内に包囲網を囲うらしい。
捜し人が何者かは知らないが、上位貴族達はこの話題で持ちきりである。
「何故国王陛下はその者を捜しているのでしょうか?」
「さぁな……我々には理解の及ばない人だからな、何やら慌てた様だったらしいが」
最近の王都は雲行きが怪しい、用心はしておくに限るな。
―――…
やってきたのは金属で囲まれた豆腐建築、窓は無い。
「何というか……適当?」
「褒め言葉として貰っておこう」
此処が鐵櫻緋撃団王都支部……硬そう(小並感)
早速中に入れてもらうことに。
「おかえりなさい副団長」
「ああ、何か変化は?」
「現状動きは無く、諜報員の連絡も途絶えていません」
「上々だ、監視を続けてくれ」
「はい!」
団員との状況確認を流れるように終わらせる、流石は副団長というところか。団員の人もいい人そうだ。
奥の部屋まで案内され、グレンさんは近くの椅子を引っ張り出して座った。
「適当に座ってくれ……今日此処まで来てもらった理由だが、緋眼とその他の伝説の眼の事だ」
「緋眼……あの武神の瞳ですよね」
「ああ、緋眼は団長が持っている、時間があれば見られるかもしれん」
戦いのスペシャリスト……戦闘狂?いやいや、軍人だよ、うん。
「その他の眼というのは?」
ラクサムが挙手してグレンさんに聞く。
「伝説の眼は十種存在していて『十技眼』と呼ばれている、縹眼、緇眼、綟眼、緅眼と、色々ある」
「うぬぅ……儂にはよく分からんな…………」
聞いたことのない言葉が並んでいるぅ……学年主席である俺にも分からない言葉が存在するなんて……当たり前だな。
「中でも異色な眼が素眼だ」
「ソガン?」
「素人の素に眼で素眼、色の塗ってない絵の様に白いらしい」
「白い眼だったら白眼もそうなんじゃ?」
「あれは瞳孔も角膜も白い、白目剥いてるのと何ら変わらない眼だ、素眼はまだ人間らしさが残ってるさ」
ふむ、素眼と白眼は違うのか、白眼は弓術特化だったかな?
「素眼は何に特化してるんですか?」
「全てだ」
「「は?」」
三人の思考が重なった瞬間である。
え?ゑ?ヱ?全て?オール?アッル?アレ?ヴィザス?
「全てとは?」
朧が恐る恐る聞き出す。
それに対する返答に俺達は頭を抱えた。
「魔法や技術、人間業全てを扱うことの出来ると言われている」
「「…………」」
「人間業だけですか?あまり使えそうにありませんね」
アンジェラさんはケロッとした顔で口に出す。
「いやいやいや!人間業だとしても全てですよ!?十分ヤバいじゃないですか!」
「人間業を習得したところでこの世の中で使い道など限られているでしょう?」
…………言われてみれば確かに魔物とかが普通に居る異世界だしな、魔物に会ったことないけど。
「成程…………」
「主殿!?納得しないで頂きたい!」
朧が俺の肩を揺らしてくる、ハッ!俺は一体何を…………
「アンジェラ様が凄いのは分かりますけど、それを一般人に言うのはどうかと」
「貴女達は一般人じゃないでしょう?」
カスイ→流れ人
朧→夜刀神
ラクサム→精霊
「ホンマやん」
「普通でしたな」
「そうですね」
「おいおい…………」
と、そこでグレンさんが首を傾げる。
「アンジェラって誰だ?」
「あっ」
やべっ、グレンさん達はアンジェラさんの事天使って呼んでるんだっけ。
「? 名前を隠してるんですか?」
「天使で通ってたから急に別称で呼ばれてるのは変だろ?」
小声で王国と話を付けてグレンさんを誤魔化そうとする。
「そこら辺はまた後で、眼の話の続きを教えて下さい」
「あ?あぁ」
グレンさんは納得いかずとも話を続けた。
上手く誤魔化せなかったと思うが、先延ばしにすれば忘れてくれるだろう、多分、きっと、メイビー。
「まず縹眼だが、薄青色の眼で後方支援に長けている」
「後方支援?」
「防御支援、回避支援、回復支援とそこら辺だ、代わりに戦闘力は武器に依存するが」
戦力ではないのか、放っておくと面倒になるタイプだな、敵側に居たら速攻で潰すべき奴だ。
「次に緇眼だ、黒色の眼で先を見通すと言われている」
「見通す?千里眼みたいな?」
「いや、緇眼は過去と未来を見通す事が出来るらしい」
過去と未来か、時間関連は強いって誰かが言ってた。
そこでアンジェラさんが頷きながら聞いた。
「ふむ……時空魔法とは違うということですか?」
「ああ、生物にも使える分時空魔法よりも確実だろう」
「その時空魔法っていうのは?」
「物体の時を識る事が出来る魔法です、生物には効果がありません」
記憶読みみたいな感じか、それを凌駕するって凄いな。
「綟眼や緅眼等他の眼に関しては情報が少ない、属性威力が変わるだとか星の力がどうとかだった気がするが」
「色々あるんですね…………」
眼って凄い、しかもそれが魔眼とかじゃなく普通の人間に付く物だってことも。
俺が強いのは修行したからか、もしくは別世界から来たから適応されないのか。
俺の力も似たような奴なのかな?ラクサムも目を使うって言ってたし、琥珀眼だから違うのかね。
と、話が終わり暇を持て余したところで背後から威圧感のある声が聞こえてきた。
「―――お前に客人とは、珍しい事もあるものだな」
「ッ!団長!?」
振り返ると、鮮血の様な色の長髪に一つ結び、黒い革のコートを身に着け、口に煙草を咥えた緋色の瞳の女性が立っていた。
この人が団長さん?……思ったより怖くない、寧ろ格好いい、姉御肌だ絶対。
「ん……天使様、戻ってたのか」
「ええ、目的の人は見つかりましたから」
そう言ってアンジェラさんは俺を見て示す、そういえば元々俺目当てだったんだっけ。
「カスイです、どうも」
取り敢えず挨拶、挨拶は大事、たとえ見知らぬ相手だとしても。
「……エルケット成分が多いな」
「カイはカイですから」
「?」
よく分からない会話を始めた、俺に関する話のようだが理解出来ない。
「だ、団長は何故こちらに?」
「ん?現場調査みたいなものだ、問題はなかったがな」
「そ、そうですか……良かった…………」
グレンさんは冷や汗を掻きながらも、椅子の準備やお茶を出すなど団長さんの世話?をしていた。
「グレンさんが献身的だ…………」
「それ程に慕っておるのでしょう」
「さっきまでとは思えない口調ですね」
「尊敬できます」
「お前らな…………」
口々に発する言葉にグレンさんは一言言いたげだったが、団長さんが居るからか溜息を吐くだけで何も言ってこなかった。
「王国が居るのは分かるが、そこの龍は誰だ?」
団長さんは朧を睨むように見てアンジェラさんに聞く、一瞬で朧を龍と見抜くとは。
「彼女は朧、カスイさんが契約した龍の夜刀神です」
「そうだったのか!?」
グレンさんは目を見開いて声を上げる、そういえば説明してませんでしたね。
「夜刀神か…………」
団長さんは朧をじっと見た後に俺に視線を向けて言った。
「カスイ、私と試合をしてくれ」
「なっ!?」「なぬ!?」「あっ」「…………」
「…………はい?」
俺は人と戦うことが多い運命の星の下に生まれたようです。
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