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幾何学模様の転移人  作者: 妬舞禾翠
第一章 トリオン
5/50

天使と蜻蛉と魔物施設

リアルの友人……友人?に読み難いと言われたので行間空けました。時間がぬい。

「……んぁ?」


 目を開けると、天井が見えた。

 何故俺は寝ているんだ?昨日は何をしたんだったか…………


「ん…………」


 ん?何の声だ?隣から聞こえ「んんっ!?」

 すぐ隣でアンジェラさんが寝ていた。

 え、待って、昨日何があった!?

 昨日は確か魔術の練習で脳内変換してて…………

 あ、脳の使い過ぎで倒れたんだ、それでアンジェラさんに支えられて…………


「……どうしてこうなった?」


 俺が寝てしまったからか?でも離れて寝れば良くないですね、アンジェラさんがベッド使わないとかありえないから。

 じゃあ俺が悪いのか、うん、そうだな(思考放棄)。

 取り敢えずアンジェラさんを起こさない様にベッドから抜け出し「おはようございます」


「どぅわっはあぁぁぁあ!?」


 急な声に勢い余ってベッドから転げ落ちる。


「どうかしましたか?」

「どうかしたじゃないですよ!急に脅かさないでください!」

「脅かしたつもりはないのですが」


 分かってるよこん畜生!

 下着にシャツだけというアンジェラさんの格好に目が泳ぎまくる。


「あの、目のやり場に困るので、その、服を…………」

「……これは失礼しました」


 アンジェラさんはベッドから降りて服を着替え始めたので、俺は耳を塞いで後ろを向く。

 こちとら思春期男子だぞ!性的興奮を誘うようなことは止めて頂きたい!困るのはアンジェラさんなんだからな!


「大丈夫ですか?」

「だっ大丈夫です!」


 気が付くと目の前にアンジェラさんの顔があった。

 こういうちょっとしたことでもドキッとしてしまうから思春期は面倒くさい、さっさとおっさんになればそういうのも無くなると思うんだけどな。


「それなら良いのですが、カスイさんも準備をしてください」

「へ?」

「……王都に向かうので準備をしてください」

「あ、はい、すみません…………」


「しっかりしてください」と言ってアンジェラさんが部屋を出たので準備に取り掛かる。

 そういえば今日は王都に向かうんだったな、朝からハプニングが起きて忘れてた。

 確か王都には召喚された勇者が居るとか居ないとか、まあそれはついでだからいいんだが、王都近くにアンジェラさんの本拠地があるからそこに寄るとか言ってたかな。

 着けば分かるとは言ってたけど、どんなところなんだろ。

 準備を終え俺も部屋を出ると、アンジェラさんが待っていた。


「お待たせしました」

「いえ、では行きましょうか」


 宿を出て大通りを歩く。

 空は太陽がまだ傾いている途中、季節は春っぽいし午前七時くらいかな。

 町民達は朝からせっせと働いている、凄いな、俺が朝餉(あさげ)食べてる時間帯だぞ。


「まるで二四時間営業(コンビニエンスストア)…………」

「まずは街から出ましょうか」

「スルー……了解です」



 街を出たところでアンジェラさんが立ち止まる。


「此処からどうするんですか?馬車でも乗せてもらうとか?」

「いえ、走ります」

「成程、走る…………」


 余計な出費を出さずに足で…………


「走る!?」

「はい」

「いやはいではなく!」


 走るって何!?王都ってそんなに近いの!?


「昨日貴方が覚えたのは何ですか?」

「え?魔術ですけ……あ」


 そうか、魔術を使えば歩いて行くことも可能ということか?


「風と空を理解していれば身体を軽量化させるなどが可能です、試してみてください」

「は、はい」


 風と空は昨日《理解》した、後は脳内変換で速く動けるようになれば…………

 いや待てよ?軽くならなくても速くなれば良いんじゃないか?確か時を理解していたからそれを脳内変換して―――


『―――《知恵》の発達を確認、《加速(カソク)》を習得しました』


「―――おっ?」


 目の前に木の葉が飛んでいる。

 ありえないほど()()


「え?ん?あれ?」


 周りを見渡すと違和感を感じる。

 風の流れが見える、雲の流れが遅い、音の聞こえ方が違う。

 何だ?一体何が起きている?これも魔術の効果なのか?

 すると、アンジェラさんの方からパチンッという音が聞こえ、違和感が払拭される。


「能力を解除しました……如何でしたか?」

「いや、何か、周りが遅く見えました」

「上々です、では後はお願いしますね」

「え?」



「後はどのくらいですか!」

「…………もう少しですよ」

「分かりました!」


 俺は今平原を走っている。

 ()()()()()()()()()()()()

 初めは何をお願いされたのか理解出来なかったが、しゃがめと言われ背に跨がられ、ゴーサインが出たから走る。

 何だこの状況。

 因みについ先程習得した……《加速》とでも呼ぶか、自分の体感速度を変化させ、周りが遅く感じる様になり、高速で動けるようになるという能力だ。

 魔力が減った感覚がしなかったから()()としているが、魔術の一つなのだろうか?どちらにしろ頭が痛くなる。

 走り始めて十分程度、二度馬車を追い越したから相当速いと思う。


「……ぬおっ!?」


 パチンッという音とともにバランスが取れず、思わず転けそうになりギリギリで耐えた。


「着きました、降ろしてください」

「へ、へい」


 アンジェラさんを降ろし、目の前を見る。


「たっけぇ…………」


 そこには終わりの見えない壁がそそり立っていた。


「では入りましょうか」

「え、あ、はい」


 アンジェラさんはさっさと王都入り口へと向かう、説明とか無いんですね。


「王都に入ってまず何をするんですか?」

「当初の目的は手間が省けたので……私の用事を終えてから本拠地に向かいましょう」

「分かりました」


 用事は知らんが早速本拠地か、どんなところなんだろ。

 そんなこんなで入都手続きをしにいく、冒険証見せるだけで良いから楽だね。


「おいどういう事だ!」

「お?」


 列に並んでいると、前から怒鳴り声が聞こえてきた。


「入都には身分証明書が必要です、無ければ入都費の銀貨十枚を払ってください」

「私はエックハルト家の息子だぞ!良いから通せ!」

「ですから…………」


 何だ、ただのDQNか、ほっとけば終わるだろう。


「知ってますか?アンジェラさん」

「彼はアラン・エックハルト、王都で有名な貴族であるエックハルト家の長男です」

「へー、偉い人なんすね」


 あれ?それにしては入都渋られてるような。


「彼は家に泥を塗った人ですから、当主にせき止められているのでしょう」

「何したんだ…………」


 なら時間かかりそうだな、話つけるか。


「ちょっと行ってきますね」

「本気は出さない、良いですね?」

「了解です」


 アンジェラさんに断りを入れて前に向かう。

 貴族と門番は押し問答で全く話が終わらない、よくやるな。


「おい」

「む、誰だ貴様は、私を誰だと思っている」

「知らん、早くしてくれ、もしくはどっか行け、後がつかえてんだよ」


 急いで欲しい、暇過ぎるから。


「なっ、貴様私を誰だと思っている!私はエックハルト家の貴族だぞ!」

「知らんがな、貴族ってんなら人の配慮を考えてもらいたい」

「き、貴様!私に対してなんという口の利き方だ!」


 するとアランだったか?が腰の剣を抜き取り俺に向けてきた。

 それを見た人達は声を上げ、門番は槍に手を添える。


「おいおい、貴族ってのはすぐに手が出る奴らなのか?」

「五月蝿い!私に歯向かうとどうなるか教えてくれる!」


 そう言って剣を振り回してくる。

 何だこの剣筋は、まるでゴミの様だ。

 一歩二歩と下がりながら攻撃を避ける、当たらなければどうということはない。


「っと」


 剣の起こした風でフードが外れる。


「なっ」

「あん?」


 アランは俺の顔を見て驚愕の色を見せた。

 何だ?何かおかしいところでもあったか?


「ふっくくく……貴様琥珀眼(落ちこぼれ)ではないか!よくも私をコケにしてくれたな」

「は?」


 落ちこぼれ?何で?


「ふん、今ここで貴様を罰してくれる!」


 うわっ面倒くせぇ、手加減って苦手なんだよなぁ。

 武器を取る……いや、落とすか、丁度いいのがあった。


「喰らうがいい!」


 アランが大振りに剣を振ってくる。

 そこに俺は駆け寄り、柄に狙いを定め放つ。


「―――赤城颪(あかぎおろし)!」

「なッ!?」


 赤城颪、群馬県中央部から東南部において、冬季に北から吹く乾燥した冷たい強風であり「上州空っ風」とも呼ばれる。それを基に強風が如く鋭い手刀を相手の手に打ち付け、手首の関節を外す技。尚、数分すると元に戻る。


「暴力反対」

「は?な……は?」


 アランは何が起きたのか分からないように狼狽えていた。

 門の横に放置して門番に話をしに行く。


「あの人気にしなくていいんで、並んでる人の受付お願いします」

「は、はあ、分かりました」


 それだけ言ってアンジェラさんの元へ戻る。


「もうすぐで順番回ってくると思います」

「そうですか」


 淡泊、別に何かを求めていたわけでは無いけど。

 あ、フード外れたままだった。

 にしても落ちこぼれって何だ?俺はこれでも優等生の部類に入る人間なんだが。

 確か目を見て言ってたよな、この目が落ちこぼれ?どういうこと?


「カスイさんはどのような方から師事されたのですか?」

「え?」


 不意にアンジェラさんが聞いてきた。

 師事って、俺の技のことを言ってるのかな?


「どうしたんですか?藪から棒に」

「少し気になりまして」


 師匠か……そうだなぁ。


現実主義(リアリスト)ですね、机上の空論だとか、不確かな事は一切せずに現実的に証明するような人でした」

「成程」

「俺が物心付いた頃と言いますか、気付いたら師事されてましたね、実質俺の親みたいな人です、まあその影響か性格が似てしまいましたが」


 生き方の全てを教えて貰った、裁縫、料理、掃除、会話、運動。

 最後に、()()()()()

 銃は剣より強く、剣は銃より強いという矛盾の中、俺が教えてもらったのは、()()()()()()()()()()()()()()()

 その結果が俺な訳だが。


「俺の尊敬する人ですね」

「……そうですか」


 アンジェラさんは興味深そうに頷いた。

 因みに精通もしました、正直恥ずかしいので思い出したくないです。

 と、話していると順番が回ってきた。


「身分証明書を見せてください」

「どぞ」


 俺は門番に冒険証を見せ、確認を終えて返される。


「受理しました……先程はありがとうございます」

「いえいえ~」


 去り際にお礼を言われたので手を振りながら返事を返す。

 よし、やっと王都だ、どんなところだろ。


「付いてきてください」

「あ、はい」


 アンジェラさんに案内されるままに王都を歩く。

 案内されたのは高台だった。


「着きました、ご覧ください」

「おぉ!―――」



「―――此処が王都ウィルセント、別名『人間の都』です」


 全体で数十(キロ)はありそうな王都。

 此処からでも聞こえる人々の声、賑やかで色鮮やかな都の全貌。

 美しい景色が目の前に広がっていた。


「綺麗ですね」

「外面は、ですが」

「はは…………」


 王都の中心の方には一粁程広い広場に噴水が建てられており、奥には教会らしき建築物とでかい城が見えた。


「さっき言ってた人間の都というのは?」

「前提の話をしますが、この世界には四種類の種族が存在します、人間、魔人、亜人、精霊と、それぞれの地域で生を謳歌しています」

「此処は人間の地域である、ということですか?」

「大まかに言えば、この王都には人間しか居らず他の種族は一人も居ません」


 人間しか入れない国って事なのかな?他の種族も見てみたいものだ。


「他の国へ行けば見られますよ」

「そうですか」


 ……今気付いたけど、アンジェラさんって何気に俺の心読んでるよな、何か魔術でも使っているんだろうか。


「では用事に向かいましょう、付いてきてください」

「はい」



 という訳で連れてこられたのはこちら。


『(反)神聖協会』


 先程見えた教会……ではなく、真反対の地域に位置する小さい施設だ。

 反って何だ?教会の反対にあるから?反乱でも企てているのだろうか。

 アンジェラさんは意も介さず施設に入っていく、ので俺も付いていく。


「失礼します」

「あ?おぉ、天使じゃないか」


 入ってすぐ目の前の椅子に制服の様なものを羽織った青髪の女性が酒瓶片手に座っていた。


「……貴女だけですか?」

「他のは各々の準備で遅れるらしい、で?」


 そこで女性は俺を指差し言った。


「そこの坊やは誰?」

「あ、えっと、迷っていたところをアン……天使さんに拾われて、お返しに手伝いをする事になりました、カスイと言います」


 相手がどういう人かは分からないが、アンジェラさんとは知り合いらしいから自己紹介をば。


「彼は《虚空》であり《王冠》です、それ程の能力を持っていますから」

「ふーん…………」


 女性の目が俺の身体を上から下へ動く、暗器の確認でもしてるのか?俺は持ってないから大丈夫だが。


「……琥珀眼か」

「ッ!」


 腰を落とし構えを取ったところでアンジェラさんに手でせき止められた。


「警戒せずとも大丈夫ですので」

「……分かりました」


 一連の行動が分からなかった人に説明しよう。

 ヤツは今俺とアンジェラさんに対して()()を見せた。

 丁度俺の確認が終えたと同時に感じた殺意、反射的に身体が反応したが、アンジェラさんに止められたというわけだ。


「アハハハッ!面白いじゃないか!坊や!」


 構えを解くと、女性は殺意を消して笑い出した。


「……新人苛めは楽しいですか?」

「勿論!肴に持ってこいだな!」


 女性は酒をラッパ飲みして笑う、新人苛め?どゆこと?


「えっと…………?」

「紹介します、彼女はレイリー・ラグダット、『瑠蜻菁璃団(るせいせんりだん)』の団長であり、通称《蜻蛉(とんぼ)》です」


「宜しく〜」


 るせい……え?何?青要素多そうな名前なんですが。


「何ですか?その瑠蜻菁璃団って」

「彼女を筆頭とした陽動部隊です、精鋭騎士顔負けの実力はありますね、彼女に至っては軍隊一つに値します」

「この化け物っ!」

「失礼だな、君」


 いやいや、一人で軍隊並みの戦闘能力とか化け物でしょ、怖いわー怖い怖い。


「ん?他って言ってましたけど、ラグダットさんみたいな人がまだ居るんですか?」

「レイリーでいいよ、まあそういう事だな、私以上に強い奴も居るよ」


 何ということでしょう、化け物以上?それ何て破壊神?

 何故化け物の巣窟に来てしまったのか……アンジェラさんに付いていったからですねはい。まあ俺も化け物の域に入っている訳だが。


「何しに此処来たんですか?」


 来たはいいが何もすることがないように思える。


「ちょっとした会議があるのですが……他が居ないなら始められませんね」

「あれ、連絡行ってなかった?会議は明日に持ち越しだってよ」

「誰が伝達でしたか」

「ミドリ」

「来てませんね」


 アンジェラさんが真顔で怒っている…………!

 ミドリっていうのは他のチームの人なのかな?会いたくないが会ってみたい(矛盾)。


「ではまた後日、生命の樹(セフィロト)に居ますので何か用があれば」

「はいはい、よくも一人で……いや、今日で二人?どちらにしろよくやるね」

「目標がありますから」


 アンジェラさんは踵を返して施設から出てしまった。

 それを追おうと振り返るとレイリーさんに声をかけられた。


「カスイ君、だっけ?」

「はい?何ですか?」

「座右の銘は?」

「は?」


 突拍子の無いことを言った、座右の銘?


「えっと……『現実至高主義』、ですかね」

「ふむ、その心は?」


 どんどん食い下がってくる、何が言いたいんだろうか。


「至高主義って絵画があるんですけど、その絵って幾何学模様で構成されてるんですよ、俺もそれに習って現実的に行動したいと思いまして」


 まあ『至高主義の構成』は抽象的なものなんですけどね。


「成程……じゃあ最後に一つ」


 レイリーさんが俺に何かを投げつけてきたのでそれを手に取る。

 見てみると、それは蒼い十字架のネックレスだった。


「自分を見失わないように……御守りあげる、大事にしてよ?」

「は、はあ……ありがとうございます」


 ネックレスを首にかけて、今度こそアンジェラさんを追いかけた。



 外に出るとアンジェラさんが待っていた。

 訝しげの顔で。


「な、何ですか?」

「いえ、手が早いと思いまして」

「俺何もしてませんよ!?」


 少し話していただけで何故こう疑われるのだろうか、ただ喋ってただけなんだけどな。


「アンジェラさんから俺に対しての信用ってそんなにないんですかね…………」

「そんなことはありませんよ?」

「ならいいですケド………」


 俺はしょぼくれながら道を歩いた。


「本当に、手が早い蜻蛉ですね…………」

「何か言いました?」

「いえ何でも、行きましょうか」

「はーい」



「此処です」

「此処ですか」


 王都を出て少し進んだ先にある森を数十分歩いた先にそれはあった。

 目の前にあるのは兵舎の様な建物、此処が本拠地らしい。


「此処で何してるんですか?」

「大まかに言えば……研究、でしょうか」

「研究?」

「ええ、魔物の研究です」


 魔物を研究してるのか、どんな研究なんだろ。


「この施設に収容している魔物も居ますが……先に貴方にやって頂きたい事があるのでそちらを優先しましょう」

「分かりました」


 収容されている魔物は気になるが、先に用事を終わらせた方が見回りやすいか。

 なんだってやってやんよ、セクハラ以外。

 扉を開き兵舎の中に入る、が。


「…………」


 どう見ても兵舎ではない。

 窓一つないコンクリートの様な壁で囲まれた内装だった。

 謎のシャッターが一つと幾つかの通路だけで物は何一つない、あるとすれば真ん中に剣が刺さっている事か。


「あれは何ですか?」

「後程説明します」


 あら、頼み事が優先なのね。

 シャッターには近未来感のあるパネルが付いており、通路からは何やら妙な気配が漂っている。

 気配と言えば、この施設からも感じる、まるで生きているかのような気配だ。

 アンジェラさんに案内され部屋の奥に書かれていた魔法陣に乗ると、瞬間移動、転移と言った方が正しいか?まあ別の場所に移動した。

 薄暗く、目を凝らさないとアンジェラさんの顔が見えない程の灯りしかない部屋。


「……何ですかこれ?」

「この施設に繋がれた物ですね」


 赤黒い心臓のような球体が部屋の中心に浮かんでいた、これが灯りの元みたいだ。


「No.C9『見せかけの部屋』、この施設の個体名です」

「個体名……って、この施設生き物なんですか!?」


 さっきの気配は間違っていなかったということか。

 此処でその説明をするってことはこれが本体(コア)なのかね。


「ええ、固形の()()です、害はありませんが頑丈な皮膚を持ち何者にも破壊することの出来ない空間を持ちます」


 さっきのコンクリートの部屋もその一部ってことか、俺達は魔物の胃の中に居るような構図ってわけだ。


「それで、此処で何をすればいいんですか?」

「こちらと契約して頂きます、魔力量は貴方の方が上なので主従契約で良いでしょう」

「成程?」


 初めてやるから上手くできるか分からんが、さっき何でもやるって意気込んだばっかだからな。


「えっと……八対二で魔力を…………」


 グゴゴゴゴゴゴゴゴゴ―――ッ。


「……ん?」


 何やら身体が軽くなった感じがした。


「終わりましたね」

「え?そうなんですか?」


 あっさり終わったな、契約ってこんな簡単なのか。

 というか同意を得てない気がしたが、施設だから感情とか無いのかね?


「施設の大きさを変えるように命令してみてください、試しですから……箱型でいいでしょう」

「分かりました」


 見せかけの部屋だっけ?長いな、ミヤちゃんで。

 頼むミヤちゃん、施設内はそのままに手のひらサイズの箱型になってくれ。

 俺は目を閉じて施設に語りかけるように念じた。

 すると、風が俺の肌を撫でた。


「……おっ?」


 目を開くと森が広がっていた。

 そして手には綺麗な箱を持っていた。


「マジで箱になったのか…………?」


 アンジェラさんも周りに居ないのでどうすればいいか分からない。

 箱だから開けたら何か起こるのだろうか。


「いいや、開けよ」


 箱を開くと、さっき居た剣の刺さった部屋に居た。


「成功ですね」


 振り返るとアンジェラさんが立っていた、施設の中にずっと居たのか?

 箱を開けたら施設の中に入れたから、扉から外に出ればさっきの森に出るのかな?そうなったら施設はどうなるんだ?箱に戻る?後で確かめるか。


「では剣の説明……いえ、実際に触れた方が早いですね」


 アンジェラさんは俺の手を掴んで剣の元へ向かう。

 アンジェラさんの手ってスベスベて柔らかいんだな…………


「では、ご武運を」

「え?」


 アンジェラさんは俺の手を剣に触れさせる。

 すると瞬時に目の前の景色が変わり、おどろおどろしい空間に剣とともに放り出された。


「…………え?」


 此処でどないせいっちゅうねん。

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