第2話
「どうよ!カッコいいっしょ!」
片耳イヤホンで聞き終わったがが頭が空っぽで何も入ってきてねーよ。
確かにイントロはかっこ良かったけどさ
「まじでこのアキラ&ミキって人たちヤバいよ……」
(ヤバいのはこっちのセリフだって!アキラ&ミキって本名のまんまじゃねーか!)
「ミキちゃん、めっちゃ可愛いっしょ!しかもミキちゃんは家庭的で手作り料理動画とかも出してて、まだまだインディーズなアイドルって感じがするのがいいんだ。そう、そして、この曲を演奏しているのが、謎のギタリスト。アキラ。どうやら彼女がミキちゃんのプロデューサー兼作詞作曲振り付け演奏担当。ってのも性別も年齢も不明だから複数人説があるんだが……それが今時のティーンエイジャーたちにウケてるらしい」
(たしかに母ちゃんは歳のわりにはキレイだけどさ、しかも料理動画ってなんだ?晩飯作ってる時に動画撮影してたけど、あれか?しかも父ちゃん何カッコつけてんだよ。たしかに初老の冴えないおっさんがやってもウケないだろうけどさ……)
「そして、曲だけじゃなくて、この可愛い衣装まで手作りで地道にやってて好感が持てる」
(母ちゃんの特技は裁縫だったな!)
「だがしかーし!極めつけは曲よ曲!これがヤバい!本格的にメジャーデビューしたら、そこいらの奴らなんて目じゃないね。6オクターブの音域から出るパワフルな歌唱力に80年代の洋楽を思わせるキャッチーだけどゴリゴリのロック系ミュージック!しかもギターソロがな、聴かせてくるんだよ!」
(確かに父ちゃんは80年代音楽好きだよ!むしろ産まれて聴いてたから世代だよ!)
「アキラちゃんはな!ギターテクをもろに見せつけてくるのよ、これがこれがお前に弾けるかって感じで、最近のミュージシャンじゃそういうのやらないからさ」
(最近の人間じゃねーからな!)
「今度、インディーズながら地上波デビューらしいぞ!深夜だけどな」
「はぁ!?マジかよ!」
「おう、マジマジ!」
どうやら俺の知らないところで危機が迫っていたようだ……