厄災の家
都内の高級住宅街
平均して3億程度の家が立ち並ぶ一角がある
それなりに成功を納めたとされる人が多く住む地域である
敷地面積も広く小さいながらも庭があり隣家との境はしっかり守られている
そんな住宅街で異変は起こっていた
空を埋め尽くす程のカラスの群れ
縦横無尽に走る廻るドブネズミの群れ
一月の間も晴れ間のない降り続く雨
狙い定めた様に的確に落ちる神鳴り
犬や、猫の糞尿
その住宅街でただ一軒の家が見舞われた災害と呼べる被害
屋根は鳥のふんで覆われ、屋敷内の庭は犬や猫の糞尿で埋め尽くされ
もう一月も止まないこの家にだけ降り注ぐ雨と神鳴り
役所に頼み込んでも、駆除業者に何回頼んでも解決しない
その内に地域の自治会から要望が届くようになった
出て行ってくれ
曲がりなりにも都内有数の高級住宅地である
変な噂が立つと自分達の資産が減少する、当然の意見である
自治会や役所との話し合いは数回持たれたが解決出来ない
家の正式な所有者が不在で権利関係が行使できないからである
家に住む住人は限界を迎えていた
弁護士からは立ち退きを要請されている、期限は間近だ
理由はここに住む権利が無いから出そうだ
居住権を盾にしてみるが効果はない
賃貸契約が無いのだから保護される事はない
ならばと生活支援団体に助けを求め支援してもらうがそれもすぐに打ち切られる
噂が付きまとうからだ
あの家に関わると痛い目を見る
いつからかそういう噂が支援業界に流れる様になった
相談員に話を聞くと首をすくめながら答える
1日に数回必ず足の小指を角にぶつけるそうだ
どれ程注意しても打つ
不思議に思うがそれでもよく考えてみると法則がある
あの家関連の支援をすると打つ
それ以外の案件では問題ない
他の相談員らに話を聞いてみると実はと答えてくれる
他の相談員は必ずレゴのピースを踏むらしい
えっ?と思うかもしれないが踏むらしい
そういう話は回りが早い、噂は業界を駆け巡りその家に支援する団体は無くなった
そうなると出て来るのは怪しげな宗教団体である
有象無象の怪しげな人達が入れ替わり立ち替わり出入りする様になった
そして異変は続発する
男は頭髪が抜け始める、女はシワが増える
もう誰も近づかない
退去期限が訪れ、泣き喚きながら追い出される人達
代わりに見つけたマンションは同じ目に遭いすぐに退去
数回繰り返して、一軒家を借りるが地域の反対に遭い退去
呪われた一家は河原に住み着く
荒川河川敷不法占拠組合
怪しげな団体である
最後の希望を抱いて縋ってみたもの近くに行くまでに追い返された
それはそうだろう
雷雨を従え、カラスを引き連れ、ドブネズミやGを引き連れてこられてはたまったものではない
人権団体が遠巻きに支援活動をしているがそこに襲って来るのはカラスの糞の絨毯爆撃であり
蚊の攻撃である
判断は国まで巻き込んだ
国が下した判断は、強制退去
母国に強制退去されることで厄災はあの国へ移った




