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復活の日 4

明治、大正、昭和と時を経て平成を迎え

この国は平和を謳歌していた


憚る事無く好きな場所に行けて好きな所に住む

ただ一箇所を除いて


為政者は立花の里を囲うように自衛隊の駐屯地を作った

昔には陸軍が駐屯地を作っていた

戦後、自衛隊が発足してその任を請け負う

GHQにもその秘密は知られる事無く時は流れた


出てくる者が居ないのだから知られる事も無いのだが

日本政府はその事実をひた隠しにした

一年に一度だけではあるが国と里との交流がある

その際には必ず京都から使者が立つことになって居る

遥か昔、帝に届けられた一通の手紙がそれを守らせている


現代から遡る事20年前国家をいや世界を揺るがす大事件が起こった

立花の里から移住者が出たのだ

江戸時代の武家を思わせる装束に身を包み

刀を差し、槍を掲げて隊列を組んで男が先に立ち

女衆は着物に薙刀を構えてまさに戦支度の体であったらしい

里を囲む指揮所は連絡の為混乱をきたし一触即発の危険すら有った

駐屯地司令の賢明な判断が無ければ数百の命が失われる、そんな事態であった


里の者は指揮所の手前で陣を張り、自衛隊はバリケードを築き銃器を構える

そんな中、一人の女性が陣から向かって来た


見れば着物姿であるが後れもなくただ指揮所に歩いてくる

自衛隊は銃器を構えながらも発砲の許可は出ておらず

着物の女性はスタスタと歩いて指揮所前にくる

そしておもむろに正座して袂から手紙を出すと恭しく捧げ持ち

頭を下げる

その行動に基地司令は銃器を下げさせて女性に向かい

同じ様に正座して礼をする

共に地面に正座している状態である

口を開いたのは基地司令


「お初にお目に掛かります

 私、この地の責任者基地司令の森脇と申します

 今回のこの戦支度は如何な御用でしょうか?」


「こちらこそ初めてお目もじさせて頂きまする

 立花誾と申しまする

 森脇様には我ら田舎者故失礼があるやも知れませぬが

 どうぞお許し戴きたく存じまする

 まずはこの手紙を受け取って頂きたく存じます」


「これは失礼致しました

 それでは受け取らせて頂きましょう

 これはどちらにお届けさせれば良いのでしょうか?

 それをお聞きしたい」


「その手紙は将軍様にお届け願えればと存じまする

 我等が当主、誾千代様よりお預かり致したもの

 どうぞ将軍様のお手元にお届け下さいませ」


森脇は返答に悩んだ末


「立花さんと呼ばせて頂きます

 健在ですが我が国には将軍は居りません

 我が国は国家の象徴として天皇を立て

 国の動きは総理大臣が代表を務めております

 さらに言えば誰かの一言で全てが決まる事は有りません」


「ですのでこの手紙は私の上司を経由して国の代表に届ける事になります

 その際ですが、中身は拝見することになりますが宜しいですね」


「なんと将軍様が居られぬと

 それでは仕方ありませぬ

 その手紙は帝にお届け願えればと存じます

 帝以外は読めませぬ故

 お返事が来るまでは陣にてお待ちする所存です

 何卒、よしなにお願い申し上げまする」


そう言って頭を下げて立ち上がった誾は振り向く事もなく陣へと帰っていった



手紙を預かった司令は先ほどの女性が話した言葉を頭の中で繰り返していた

誾千代?戦国時代の立花誾千代?

500年以上も昔の女武将の名前がなぜ今頃出るのか?

旧家では名前を引き継ぐ事もあるとか

きっとそうに違いないと思いながら東京行きを決意した

送れば良いのだが昔からの決まりで里とのやり取りは司令が動く事になっている

しかも今回に限っては戦支度までして出向いてきた

事は既に報告済みだが市ヶ谷からの返事はまだ来ない

返事を待ち、再度手紙の件を伝える事は正しい判断だとは思うが

今回に限ってはその判断は正しく無いような気がする

地面から立ち上がり、裾を払って陣を一瞥すると

急ぎ基地に戻り報告に向かおうとするのであった





「誾様、如何で御座いましたか?」


「やはり誾千代様が仰られた通りであった

 後数日で我等は新しい立花の地を各自で見つけねばならぬ

 その為の手紙じゃ

 我等の悲願を果たす日も近いはずじゃ」


「おお、それは良き事に御座います

 我等、家臣一同心よりお喜びを申し上げまする」


「この地に臥して500年

 やっと其方らにも自由を与えてやれる

 辛い思いをさせて心より詫びをさせて貰う」


「勿体なきお言葉、我等一同銀千代様と心を一つにして

 これまで生きておりました

 これこそ我等が生きる道で御座います」


「まずは返事待ちじゃ

 くれぐれも諍いを起こす事なくのう」


「は、皆にも再度申し伝えまする

 お方様は一度お戻りになられますか?」


「いや、ここで待つとしよう

 間違いがあってはならぬでな」




自衛隊は大騒ぎであった

市ヶ谷に飛んだ森脇がもたらした手紙は

化学検査を経て毒物等の検査をして防衛省から官邸へ

宮内庁にも連絡が行き、返事待ちの状態となった

その間に勝手に開いた手紙の解読が始まっていた

が、読めない

世界の言語に精通した学者もコンピュータにおける解読にも

一切識別不能の文字と言えば良いのか解らない文字が書かれていた

そこで初めに届けろと行った徳川を思い出す

現在の子孫は存命である

早急に呼び出して読んでもらう事にしたが

話を聞いて呼び出された徳川当主は読めない

当主曰く、知識として代々伝わる話はあるが

書類として残っている物は無く口伝でしか伝わってない

しかも将軍が手紙を読むのでは無く読む者は水戸家であった

水戸家当主が口に出して読んでいるのを平伏して聞くのが慣例だった

それではと水戸家を呼び出してみると口伝は消えていた

そうなると読めるのは皇室のみとなる


皇室からの返事では厳重な警備をして間違いなく届けてほしいと連絡があった

警視庁、皇宮警察、そして自衛隊との合同による警備が敷かれ僅か数キロの道のりを

大使の面会と偽り届ける事にした


が、大失敗

万が一を考えてコピーを届けたのだが

陛下がご覧になられた時に読めない事が判明した

宮内庁からの抗議で原本が再度厳重な警備を経て届けられ

陛下がご覧になられる時刻に皇居に落雷が落ちた

陛下より宮内庁を通してお言葉が届けられ

それに対して官邸は頭を抱えた


お言葉によると

立花の里の住人?は日本各地へ数名ずつが移住する

その移住に対して国は万全の体制で手を貸せ

さらに一切の監視をするな


官邸もそれには抗議した

確かに明治の時代に戸籍はある

だが数百年に渡ってその地域でしか生きていない人間を

他の地域で生活させるとなると現代の生活にどうやって慣れさせるのか?

数年の訓練や指導では間に合わないと

槍や刀をさして街を歩かれたらたまったものではない

各地の警察や国の機関に通達を出しても守り切れるものではない

そう言う抗議をやんわりと伝えるが宮内庁は折れない

戦前ならいざ知らず、現在では象徴天皇制である

どうしようと思っているうちに

大事件が起こった

 

世界各地に地震が勃発し不安を煽るかのように太平洋で海底火山が噴火を始めた

環太平洋火山帯が順次噴火活動を開始して

スマトラ沖で大噴火、飛んでアメリカでイエローストーンが噴火開始

津波や火山灰の対策に各国が右往左往しているうちに

宮内庁からの要請は通ってしまう

富士山や阿蘇山、桜島など鳴動を始めておりいつ噴火してもおかしくない

状況の中、森脇司令は命令書を携えて基地に帰還した

手紙を受け取ってから10日経っての帰還だった

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