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復活の日 1

「まず患者さんですが

 正直言って脳死状態です

 そもそも自己呼吸している時点でおかしいのですが

 脈や血圧も正常値と言って良いでしょう」

 医学では理解できない事が貴方なら解り治療が進むと思いましてね」


「はぁ、とりあえず手を触って大丈夫ですかね?」


「はい、大丈夫です

 触診で判断できますかね?」


「とりあえず意識を送り込んで内部の診断を行い

 怪我を治していこうと思います」


そう言って患者さんの手を取り、意識を内部に向ける

分かり難いかもしれないが意識を同調させ不具合箇所を到底するのだ


私の体から薄く光が湧き始めてを伝わって患者さんにも伝播する

その途端、私は激しく弾かれた様な衝撃を受けて手を離してしまった


「どうされました?」


「激しく弾かれてしまいました

 こういう事はよくある事ですが

 この場合は術を行った相手が死体である場合が殆どです」


「え、まだ生命活動をされてますよね?」


「はい、ですから戸惑っています

 初めてのケースなので

 再度やってみますね」


そう言ってもう一度手を握るように両手で行ってみた

相手に意識を向けて深く同調するように意識を沈ませていく

何かがあるそれは解る

生命に危険を及ぼすものを排除すべく意識を怪我の部分に集中させると

骨折部分や内属部分、そして頭部の傷が淡い光を放ちながら治っていく

肝心な脳の部分に入ろうとするとやはり入れない

たとえ死体だろうと入ろうと思えば入れる

入って最後に見た記憶を見つけ犯罪を正す事も行ってきた

もっと深く意識に入り込まなければと力を込めると

反対にコチラに入り込まれる感じがする

こんなことは初めてなので対応に躊躇している間に

意識が無くなる


「橘さん、どうされました?

 大丈夫ですか?」


「誰か!

 橘さんが倒れた!

 早く来てくれ」


倒れた橘さんを引き起こしながら医師は叫んでいた



私はまるで海に浮かんでいる様な感覚だった

体全体が海に浮かんで波間に漂うというか乳児が母の腕の中にいる感じなのか

安心し切って任せている様な感じだ

生まれ持った力と訓練で一瞬ではあるが意識を失っただけで済んだ

ただ身体は動かせない様だ

頭の中に波が押し寄せてきて私の記憶をさらっていく

物心が付いた頃からの記憶を全てさらっていく様な気持ちになる

そうか、記憶を読み取られる感じはこんな感じなのかと思いながら

ただ揺蕩っているだけだ

小さい頃の悪戯や父に叱られた事

初めての帰省で祖母の住む家を見て泣き出した事

怖く無いよと抱き締めてくれた母の暖かさ

古くて大きい家だったと思う

萌馬母親は家に居る事が少なかった様に思う

父は必ず家に居たけれど

母は居たりいなかったりで寂しい思いをした

中学の時の初恋や失恋

大学を出てから祖母の住む田舎に帰り

聞かされた事実

色々な思い出が波に攫われて消えていく


子供の頃から自分が怖かった

手を握りあえば感情が解った

幼稚園のお友達に気持ち悪いって言われて

泣いて帰った事も何度もある


泣いて帰って母親に「私変なのおかしいの」と言って

困らせた事も数回ではない


学校に上がる頃になるとそういった力をコントロール出来るようになって来て

握手程度では怖がられることは無くなったがやはり相手の考えることが

見て理解できる様になりしれはそれで辛いものがあった

好意、悪意、好色そんな感情が相手から発せられているのが見えて

一体そんなものが見えてどうなるのか怖くて仕方無かった

そんな時祖母から送られてきた数珠で助けられた

その数珠はそう言った感情を受け付けなくするというか

感情が分かりはするがコチラに影響を及ぼさないと言えば解ってもらえるか

兎に角その数珠のお陰で安定を取り戻し

対人関係では悪感情の人とは付き合わず目立たない様にして

学校を終えた

就職に関しては両親から大学は出ても良いが就職は当分禁止と言われており

周りの子が内定貰ったとかはしゃいでいるのを羨ましく思った事もあった

なぜ私は就職してはいけないのかそんな疑問を両親に聞いた事がある


「よくお聞きなさい 

 お前には昔から力がある

 それも恐ろしい程の力があるんだよ

 ただ感情が解るだけではない

 そうだなこういえば良いか

 魔法使いみたいなものだといえば解り易いだろう

 時が来たのだ

 お前はお母さんと共におばあちゃんの元に行きなさい

 そこで全てが解るだろう

 悲しむことも、恐る事もない

 お父さんはお前の事だけを考えて生きて来た 

 これからもそれは変わらないし

 私が生きている間はお前を必ず守ろう

 だから安心してお母さんと出かけて来なさい

 帰ってくるのを楽しみに待っているよ」


そう言って少しだが悲しそうな顔で説明にもならない話をしてくれた


大学を卒業して一月も経たぬ間に本家である祖母の田舎に向かった

九州の田舎で暮らす祖母は小さい頃の思い出では

優しかったけど怖かった

所謂普通に聞く他所様の祖母とは違い

いつもとても大きな仏間の様な部屋で座っていた記憶がある

黒く大きな仏壇に沢山の蝋燭が灯され欄間に掛けられた沢山の写真

それらに見下ろされて怖かった記憶が蘇り

そう云えばあの頃はよくおねしょをした

母が居ない時などは、替わりに親戚の叔母さんたちが世話をしてくれたが

不思議と叔父さんたちを見ない家だった

叔母さん達が代わる代わるに表れて私のおでこに指を付けて

目を瞑る

母もよくそうしてくれた

不思議とそうされる事で安心して眠れる様になった

ただ一人だけ本当に偶然なのかもしてれないが私にそっくりと云えば

言い方がおかしいが本当にそっくりな人が居た

叔母様達の中でも一人だけ浮いた様なと云えば良いのか

本来ならば私がその叔母様にそっくりと言わなければならないのだが

その叔母様には特に親切というか気にされていた気がする

母もその叔母様には正に傅くと言う方がピッタリな行動をしていた

祖母も見てはいないが家の中で1番偉い人はといえばその叔母様の様な気がしていた


卒業してから初めての母との帰省

小さい頃に見た大きなお屋敷はそのままだった

見上げる様な門をくぐりこれまた大きな玄関に着くと

叔母さん達が出迎えてくれる

大きくなってとか綺麗になってとか当たり障りのない事ではあるが

気恥ずかしい思いをした

ひとまず帰省の挨拶をして祖母の前に行く

相変わらず大きな仏間に座り込む祖母は本当に小さく見えた


「帰ったかえ、めでたい事じゃ

 ゆっくりとするがええで

 話もあるがまた後でな」


祖母はそう言って機嫌よく笑ったのを覚えている

帰省して2日目の昼に私は祖母に呼び出された


「どうじゃな?ゆっくり出来てるかな」


「はい、疲れも取れて元気です」


「そうかそうか

 良い事じゃ

 それでなお前さんには大事な話があるんじゃ

 まずは我が屋の事からじゃ


 お前さんはうちの事を聞いとるかのぅ」


「うちは橘ですが、ばあちゃんの所は立花だと聞いています

 それくらいですが」


「おお、そうか

 確かにうちは立花じゃ

 これはな本家が立花で分家は橘になるのじゃ

 そして立花を名乗るのはうちではこの祖母一人じゃ

 その立花の名前をお前さんに名乗って貰いたいのじゃよ」


それは養女としてこの家に入れと言うことなのか?

両親と別れる事になるのか?

そんな事を考えていると祖母は


「心配するこたぁ無い

 お前さんの親はそのままじゃし 

 名前が変わるだけの事

 但し、引き返せぬ

 それだけは夢夢忘れるでないぞ

 わしもまだ死なんでのぅ」


そう言った後で祖母は姿勢を正して


「我が立花の家は遠くこの地を治めておった立花家を祖とする

 殿様は東北に飛ばされおったが家名は残してくれた

 今では立花のなを継ぐ家は向こうが正統ではあるが

 当家は女家として続いておる、これが重要な事じゃ

 女家の祖として立花といえば誾千代様じゃ

 城を守り領民を守り女丈夫として名を残された

 そして綿々と立花の女にのみ伝わる力がある

 お前を怖がらせ悲しませた力じゃがな

 立花の女はその力で生きて来た

 人を助け、怪我を治し、更には国も治した

 立花の力はこの国の隅々にまで及んでおる

 それをお前には授けねばならん」


そう言って祖母は仏壇に手を合わせた

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