神国の行方 4
ルナ皇女としては前回の手痛い失敗を取り返す必要がある
「森のお方様
先日は大変失礼致しました
本日はどうか小さき部屋では御座いますが
お寛ぎくださいます様」
そう言ってスカートの裾を持ち上げ軽く礼をする
と、
「ルナ、控えよ!」
いきなり父上の声が響く
父上に大きな声出されたことなど一度もない
何事かと父上を見上げると
汗まみれの父上がいた
いきなり全員が跪いて頭を下げる
「森のお方様
先日は我が娘ルナが大変失礼を致しました
まさにお詫びの仕様も御座いませぬ
ルナの罪はお許しいただけないでしょうが
代わりに私が罰を受けますのでどうかルナの命はお助け下さいませ」
「森のお方様
初めてお目にかかります事をお許し下さいませ
ルナの母で御座います
この度は我が娘ルナが大変な失礼を致しました
神龍様方も大変お怒りだったとの事
母たる私も陛下と同じように罰を受けますのでこの子の命だけは
どうぞお許し願えます様に」
その声を聴いた途端に
ロバート公爵以下すべての者が
「陛下に代わり我ら全員が罰を受けますので
どうぞお情けをもって陛下をお后様、ルナ様をお助け願えます様に」
慌てて自分も跪いて頭を下げる
まさか自分が起こした事は国中が大騒ぎすることなのか?
未だに信じられず、それ以上に恐ろしくなり
身体が震えている
俯いたままで隣りのお姉様を見ると
こちらも震えながら泣いていらっしゃる
一体この森のお方様とはどういった存在なのか・・・
「森のお方様
ここはグリウスにお任せ下さいませぬか」
「陛下、お后様、お嬢様方、そして皆様
どうぞ頭を上げて席にお付きください
このような事はかえって森のお方様のご気分を害しますぞ」
そう言って大賢者グリウスは席に着く
その声を聴いた全員が慌てて顔を見合わせて席に着く
「さて、陛下宜しいですかな?
先日のルナ皇女様の失態と申し上げて宜しいかと思いますが
神龍様方のお怒りは既に解けております
そして森のお方様はお怒りでは御座いませぬ
ここまではご理解頂けましたか?」
そう言ってグリウスは辺りを見渡す
納得出来ないながらも全員が頷くと
「それでは今回に限り森のお方様の
お話をさせていただきます
私は以前、賢者として歩き始めたばかりの若輩でした
森の監視を任務として仕えさせて頂いていたわけですが
森のお方様にお声を頂いて大賢者グリウスとなりました
本来、死ぬまで研鑽を積んでも成れるものではありませぬが
お方様のお力にて到達致しました
その際に、帝国の繁栄と行く末はお前に任せる
との仰せで御座いましたので助言、諫言をさせて頂く事とします」
「先ず我ら人族の関係から申し上げます
我ら人族は平民、貴族、王族、大きく分ければこうなります
そして等しく崇拝信仰しているのが守護者様であります
守護者様をお創りになりその役目を決めているのが始祖の女神様方となります
始祖の女神様方は始まりの女神様と言われるように最上位に位置する神であられます
その愛は尊く、その怒りは全てを打ち砕くと言われております
そしてその始祖の女神様方の上に立つお方、それがここにおられる森のお方様であります」
その言葉を聞いた途端、私は死ぬべきだと思った
父上様、母上様、そして姉上様、さらには叔父上であるロバート公爵
全員が汗まみれになって震えている
身体が弱っていると聞いた商大臣などは正に死にかかっていると言っても過言ではない
息も絶え絶えに最後の力で椅子から落ちまいとしている
まさか神の頂点におられるお方にあのような事をして仕舞うとは
この国を救うためには自分が死ななければならない
だがそれだけで許されるか
いつ死のうかと考えていた時
「ルナ、詰まらん考えはよせ
お前が死んだら親が悲しむだろう」
その声を聴いた瞬間
遥か彼方から恐ろしいほどの魔力の爆発が届いた
それはこの世界から神国が消えた瞬間であったらしい
「森のお方様
あの魔力反応は?」
大賢者グリウスが森のお方様にお伺いをたてる
「女神たちが先走ったようだな
計画のやり直しだな」
疲れたような顔でお方様は椅子に背を付けて目をつぶる
すると部屋のあちこちに光の柱が現れてそれぞれの光の中から
奇麗な女の人が現れた
「主様、お呼びで御座いますか
我ら、神国の消滅をご報告申し上げます」
そう言ってその女の人達は跪いて頭を下げる
大賢者グリウス殿、そう大賢者グリウス殿と呼ばなければならない
慌てて椅子から立ち上がり、急いで跪く
「これは始祖の女神様方
ご挨拶させて頂きます
こちらにおられる方々は帝国皇帝とそのご家族に御座います」
それを聞いた皇帝以下一同は飛び上がり慌てて跪いて頭を下げる
「初めまして始祖の女神様方
私は帝国皇帝であります
始祖の女神様方にはご機嫌麗しく恐悦至極に存じます
森のお方様はじめ、女神様方にも我が帝国においでいただき
心より感謝いたします」
「よい、我等は本来干渉せぬものとなっておる
今回は主様のお手を煩わせる馬鹿者を始末しただけに過ぎぬ
その方らも召還などに手を出さず分を守るがよい」
「有難きお言葉
我ら一同肝に命じてこれより進んでまいります
何卒、我等を見守り下さいます様にお願い申し上げます」
目を瞑って聞いていた森のお方様が起き上がり
「それではそろそろ失礼するとしよう
グリウス、早急に誰か神国のあった場所に行かせて
後始末を頼むぞ」
「は、承りまして御座います
当初の通り、ロバート公爵様にお願いする所存です
それで宜しいですか?」
「うん、任せた
おれは当分この世界から離れる予定だ
お前は生きているだろうが
皇帝達はもう会うことはないだろうな
良い国の運営をするのだ
グリウスの助言を聞けば帝国は繁栄するだろう
そうだ、ルナよ」
いきなり声を掛けられ飛び上がりそうになりながらも
「はい、森のお方様」
「お前が死ねばすべて収まるとは限らぬ
逆にお前が死ねば、帝国は滅ぶだろう
姉と手を取り合ってこの国を導くがよい
良い婿に出会い、良い子を生せ
姉の子をを宰相にそしてお前の子を皇帝に
そうすればこの帝国は1000年以上続くだろう
だだし、グリウスを無下にすれば滅ぶ
忘れるでないぞ」
そう言ってあのお方は女神様方と消えてしまわれた




