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帝国の思惑 4

「お許し下さいませ!

 どうか我が命をもってルナ様をお助け下さいませ!」


ロバート公爵が慌てて龍母達の前に飛び出して跪く


「ロバートととやら、時はすでに遅し

 それはその方にも理解出来よう」


「剣を抜いたのはルナ様であります

 剣を抜いた方が止める事は出来ぬ通り

 しかしながら申し上げまする

 ルナ皇女様は未だ子供に御座います

 子供の喧嘩を神龍様方が買っては末代までの笑い物と

 なってしまうでしょう

 どうぞここは大人の貫禄でお引きくださいませ」


「成程、そういう言い方もあるが

 我らとて売られた喧嘩は必ず買うことにしておるのじゃ

 相手が蟻であったとしても全力で戦うのじゃ

 それが相手に対する礼儀とゆうもの

 生死はその後の結果に過ぎぬ」


「絶対者に対しての礼儀がなっておらんのがそもそもの原因ではあるが

 その方たちの王は今回の使者の件で何も伝わっておらぬのかな?」


「恐れながら申し上げます

 今回の使者立ちはグリウス殿のお迎えの件

 それと同時に森の主であらせられるハジメ様との友好の儀

 これに尽きまする

 しかしながら、我の不手際にてルナ皇女様には歴史をきちんと

 お伝えしておりませんでした

 これは私の不始末であり、帝国とルナ皇女様には罪はありませぬ

 どうか今回の不始末は私の命をもって寛大な処置をお願いしたく存じます」


「都合が良すぎぬか?

 そなたの命一つで収まる話ではないぞよ」


双方の話を聞いていたグリウスがこことばかりに口を出す


「龍母様方、そしてロバート公爵様、ルナ皇女様

 ここは一つルナ皇女様に頭を下げて貰ってお許しを願うことで

 納めていただけませぬか?

 ルナ皇女様は知らぬ事とは言え、ハジメ様方に無礼を働きましたが

 それは知らなかったルナ皇女さまにも言える事なのです

 正直に申しますと私は帝国の臣民であります

 ルナ皇女様のお味方ではありますが

 龍母様方を敵に回すような愚かさを晒したくありませぬ

 ですので、龍母様方におかれまして何卒ハジメ様にご理解頂いて

 お許しのお言葉を賜りたく存じます

 また帝国側と致しましては、ルナ皇女様よりお詫びのお言葉を

 お伝えして是非和解していただきたく思います」


「グリウスよ、我らになんのメリットがあるのじゃ?

 小娘一人に頭を下げて貰っても腹の一つも肥りはせぬがな」

「そうじゃな、我らの怒りは主様に無礼を働いた事じゃ

 帝国を一撃にて滅ぼし、主様の御威光を高らかにこの世界に

 広めるのじゃ」

 

その時、ぼそっと声が聞こえる


「もういいだろう、森に帰るぞ」


たちまちにして龍母達は変化にて元の女形になり

主様の元に跪いて


「主様、我らの不手際如何様にもお詫び申し上げまする

 問答無用にて消し去るべきで御座いました」


「だから面倒くさいって言っただろう

 帝国の思惑何て初めから分かっているんだから

 相手にするだけ面倒くさいじゃないか」


「主様、それでは主様の御威光に傷が付いてしまいます」


「馬鹿野郎、そんな事はどうでもいいんだよ

 それより大事なのはノンビリする事だ」


「おい、ルナとロバート

 もう森に帰るからかまうなよ」


呼びかけられたルナ皇女とロバート公爵は

頷きながらも


「ハジメ様、せめてお詫びを受け入れて頂けます様に 

 お願い致します」


「もういいって言ってるだろう

 それ以上メンドクサイ話をするな」


そう言った途端に異変は起こった


森の中に黒雲が沸き上がり雷光が飛び回る


「主様、これは召喚では?」


「これはちょっと前とは違う規模だなぁ

 でも神国の匂いには間違いなさそうだがなぁ」


暫くの間、雷鳴が轟き暗雲が立ち込めていたが

それもゆっくりと消えて行く


「ハジメ様、これは一体何事で御座いましょうか?」


ロバート公爵は驚きながらも声を掛ける


「ロバート、無礼であろう!」


龍母達がまさに柳眉を逆立て怒りの感情を飛ばしてくる

ロバート公爵は魂を飛ばされる思いで座り込んで


「お許しを、お許しを」


と繰り返すのみになってしまっていた


屋敷の周りにいた警備の騎士団は

龍母達の顕現に腰を抜かして使い物にならない状態で

あり、ルナ皇女に至っては口をパクパクさせてこれもまた死を覚悟している


そこに急に現れたのは黒髪の女神だった


「主様、お急ぎお戻り願います」


「どうした? また召喚で変なのが来たのか?」


「今回は次元が違いまする

 最早、早急に手を打たねばなりますまい」


「そうか、致し方ないな

 グリウスよ、お前はすこしは事情を知っているだろうから

 伝えとくが帝国の守りを固めておくがよい

 数日したら判明するだろうが

 今は大人しく急いで帝国にかえるのが得策だな」


「は、このグリウス主様のお言葉を必ずや皇帝陛下にお届け致します」


「うん、その後はまた連絡をいれてやるから

 帝国の守りを固めておくがよい

 ルナとロバートも皇帝に宜しく言っておいてくれ」


そう言った途端にあのお方達は一斉に消えてしまった


「ルナ皇女様、ロバート公爵様、

 お命が助かりまして宜しかったですね

 これ以上の滞在はお許しが出ないと思われますので

 急ぎ、帝国に帰ることに致しましょう」


「グリウス殿、我等は許されたのか?」


「うーん、そういう事では御座いませぬ

 ハジメ様から見れば我らの行い等、取るに足らぬ事

 龍母様方から見れば、主をないがしろにされた無礼と取るのですが

 それよりも急ぎ帰って皇帝陛下にご報告申し上げて

 防衛に力を入れねばなりませぬ

 折角、ハジメ様が教えて下さったのです

 これを無駄にしては本当に清国と同じ目に合されるでしょう」


「神国と同じ目にとはどうゆう事じゃ」


「おそらく神国はこの世界から姿を消すことになるでしょう

 それは正に神の鉄槌と言えることですが…」


「あの巨大な神国が消え去る...

 そんな事が起こるのか」


「ハジメ様に取って出来ぬことはありません

 例えではなく本当にです

 あのお方は全ての神の頂点におられるお方なのですから」


それを横で聞いていたルナ皇女は今更ながら

自分の無知を知り命があることを感謝するのであった


 

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