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帝国の思惑

第二皇女は馬車に揺られながら

考え事をしていた


なぜ私がグリウスとか云う賢者をわざわざ迎えに行かねばならないのか

父上や重臣供が言うには


「森には大変高貴な方が住われております

 その森に招かれたグリウスを迎えに行くのに

 第二皇女様が選ばれたのです

 決して失礼の無い様にお願い致します

 帝国の将来が掛かっております

 何卒、帝国の皇女らしいお振舞いにて

 ご挨拶して頂き、ご機嫌を取り結んで頂きとう御座います」


「我らの悲願は森の資源を得ることじゃ

 それが叶う千歳一隅の機会

 これを逃す訳には参らぬ

 其方には我の弟であるロバート公爵を付ける

 知恵者と名高いロバート公爵と共に積年の願いを叶えて参るが良い」


「皇女様、私がお供致します

 いつでもご相談下さい」


叔父上まで付いて来るとは大層な迎えだと思うが

それ程までに高貴なお方とはどの様なお方なのであろうか?

正直言って産まれてこの方、自分より高貴な人間と会ったことは無い

礼儀作法は完璧に出来るが、自分より高貴な人間など居るのかと思う

どの様な方が居るのかは父上もはっきりとはおっしゃってくれなかった


しかし長年の願いである森での資源確保を確実にするには

相手の機嫌を損ねる事なくうまく持っていかなくてはならない


なぜ私ではなく姉上を選ばなかったのかと少し恨みがましい気持ちになる

如何すれば森を自由に出来るか?

なぜ姉上では行けなかったのか?

森には魔法が掛かっているらしい

それで人間は森に入れなくなってしまった

昔からあらゆる魔法で森に入ろうとしたらしい

しかし森に掛かっている結界は破れない

森に結界を作ったのは神だと云うが神はカテリーナ様である

この世界にカテリーナ様以外の神がいると云うのか?

我等はずっとカテリーナ様を信奉してきた

そしてカテリーナ様に愛されて生きる技を与えられてきたのだ

それをカテリーナ様以外の神とやらに挨拶をしろなどと

われら皇族にその様な真似が出来ようか

森は魔法が掛かっている

その魔法は我らの魔法では太刀打ち出来ない…


もしや姉上にはできず我に出来ることとは?

私にはカテリーナ様から与えられた武技がある

森には入れないが今回は向こうから出てくる筈

それはもしや私が…

父上は仰られたではないか千歳一隅の機会と

ならば私は応えて見せよう

そう思い腰に履いた神剣を撫でるのであった


馬車が止まった


もう森に着いたのか

騎士達が馬車の周りで私が降りれるように用意をしているらしい


「皇女様、森に到着致しました

 休息所を設けておりますので

 そちらにお移り下さいませ」


馬車の扉が開くと目の前には森が広がっていた

馬車に付けられた階段を降りて横を見ると

慌てて作ったにしては綺麗な屋敷が建っている


ロバート叔父様もやって来て


「さあ、こちらで休みましょう

 森には使者を出しますので

 返事待ちになります」


私の手を取り、階段を降りるのを手伝ってくれる


急拵えの屋敷に入ると王城ほどでは無いが

それなりに造っているようで不便は感じない

付き従うメイド達もそれぞれの用事の為に忙しそうだ



「ルナ皇女様、お茶が入りました」


そう言ってメイドがお茶を持って来てくれる


「この様な森の側でご不便とは存じますが今しばらくご辛抱下さいませ」


「何、気にするで無い

 私は父上よりお役目を賜った

 何としても果たさねば成らぬ

 其方らも普段通り仕えてくれ」


「はい、ありがたきお言葉

 精一杯勤めさせて頂きまする」


王城ではなく森の側に居るのではやはり心細いのであろうな


その日は何事もなく暮れて行った


2日目の朝、朝食が済んだ頃合いで叔父上が現れた


「ルナ皇女、使者は送っております

 つきましては森から誰が出てくるかによりますが

 グリウスだけですとただの迎えになってしまいます

 それでは陛下の御心に従えませぬ

 その場合は再度グリウスに使者として立ってもらい

 会席したいと存じます」


「叔父上、そのお考えで宜しいと思います

 しかしそのグリウスとやらはそんなに大事な者なのですか?」


「はい、グリウスも賢者としてジョブを頂いております

 現在、帝国には賢者は三名が

 のこり二人はいずれも高齢者になります

 従いまして非常に貴重な存在となりまする」


「私は賢者とやらがよく分かりませぬが

 それ程貴重な者なのですか?」


「はい、賢者と申す者は世界の理を理解して

 あらゆる魔法を使い、果ては錬金術まで行う者

 さらに国の指針を示す者で御座います」


「何と、それ程の知恵者なのですか

 ならば我ら皇族が迎えに参っても問題がない訳ですね」


「左様でございます」


「取り敢えずは森からの返事待ちと言うことですか

 森に住む者達に付いては教えて貰えるのでしょうね?

 私は、父上から高貴なお方としか聞いていませんが

 我らより高貴なお方とは一体?」


「それにつきましては我らもはっきりとしたことは

 お教えできません

 ただ、カテリーナ様の前の守護者で在らせられたアンゼリカ様が

 恐れていたお方である事は間違い無いそうです

 何せ1000年以上も前の事ですので記録が殆どありませぬ故」


「おお、アンゼリカ様のお話は聞いた事があります

 大変お美しくて人族に多大な恩恵をもたらせて下さった女神様ですね」


「はい、アンゼリカ様からカテリーナ様に守護者が代替わりした経緯は

 もはや神話の様な話ですので本当の事は分かりませぬが

 我等にはカテリーナ様のご加護があり、さらにはカテリーナ様のお使いである

 神龍様が付いておられます

 万が一にも我等に歯向かう事はないと存じます」


「その言葉を聞いて私も心強く思います

 そうですね、私が使者としてこの森を解放させる事にしましょう」

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