グリウスの試練6
「私とウサギ
どちらの命が大切か…
どちらも大切な命ですが
私には私の命が大事です…」
「ほほ、正直な答えよのう
我が身が可愛いか
それが一番の答えじゃ
それにな、我らは救いを既に与えておる
生まれ変わり、すなわち輪廻転生じゃ
病に倒れても、寿命がきても必ず何かに生まれ変わる
まして無法にあって死んだ者とかのう
まあ、生まれ変わるのを嫌がって輪廻の輪から外れた者が
其方らの世界には一人おったがな」
「まさかそれはお釈迦様…」
「呼び名までは知らんが
其奴は生まれ変わってまで生きたいとは思わなかったようじゃな」
「我らは地球にも何度か訪れた
知識を与え、生き方を示した
だが人は変わらぬな
まあ、話が飛んでしまったな
其の方達を地球に返すとしよう
全ておるかな」
「あ、済みません
点呼しますよ」
先生が点呼をして全員がいる事を確認する
「はい、全員おります」
「うむそれでは其の方達を元の世界に返すとしよう
グリウスよ帰してやるがよい」
「え、私がですか?」
「当たり前では無いか
大賢者たるその方が出来ぬ訳があるまい
さっさと帰してしまうが良い」
「畏れながら申し上げます
私にはどの様にすれば良いか分かりませぬ
是非、ご指導下さいます様に」
「なんじゃグリウスよ
理解が出来とらんのか
情けない奴よのう
地球に帰れと願えば良いのじゃ
簡単じゃろうが?」
「まさかそれだけでこの者達を返せるのでしょうか?」
「当たり前じゃろう
主様の温泉に入ってしまったお前は
もはや人では無いのじゃ
それすら分かっておらぬのか
情けない事よ
それ、さっさと帰してやるが良い
その後でお前は我らが指導してやるわ」
「は、仰せのままに
では皆さん宜しいですか?
あのばすとやらも同時に送りますので
乗り込んでください
地球に帰れ!」
そう言うと、ばすから光が溢れ始め
あっという間に消えて無くなってしまった
本当にあれ程の人数を転位させる力がこの私に与えられたのか
そう思うと恐ろしさの余り体が震えてくるのが分かった
「さて、ようやく片付いたか
主様がお待ちじゃ
帰るとしよう」
「は、お供致します」
あのお方はお屋敷の前に出した椅子に腰掛けられておられた
イシュタル様が代表であのお方にお伝えしているようだ
おのお方はうんうんと頷いてにこやかなご様子
「グリウス、こっちへ来いよ」
あのお方にいきなり声をかけられて慌てていると
「主様がお呼びです
早く行きなさい」
アフロディーテ様が背中を押す
「参上仕りました」
「そう堅苦しくしなくていいぞ
肩が凝るだろう」
「早く自分の能力を掴み切る事だな
お前に出来ない事はほとんどない筈だからな」
恐ろしい事を聞いた気がして俯いていると
女神様方が
「主様、神国には如何なさいますか?」
「うーん、これもグリウスに任せたら如何かな?」
「グリウスにですか?
妾が参って打ち滅ぼせば簡単ではないですか?」
「神国が無くなればまた変な国が出来るからな
それもめんどくさいだろう」
「では、この世界を消せばいいのでは御座いませぬか?」
「それは神龍達もいるから可哀想だろう
つまらぬ召喚さえ止めれば良いのだから
グリウスを使いとして出せばいいさ」
「主様、また先送りをするのですか?」
「あ、そういや森に誰かが来てるみたいだぞ
グリウス、ちょっと見に行こうぜ」
「そうやってすぐにお逃げにならないで下さいませ
手を打つべきは打つで御座います」
「ああ、神国は既に手を打ってあるよ
行けば必ず召喚に手を出した者達は解る様にしてある
グリウスもこれで安心さ」
「あら、成る程これですか
分かり易くて良いですね、うふふ」
何やら物騒な事をおっしゃられておられる様だが
如何やら私が使者に間違い無いらしい
私はそれから10日にわたって女神様方から
あらゆる知識を戴く事になった
帝国内では森に向かう親善部隊の編成に忙しくしていた
グリウスを迎えに行くついでにあのお方とやらに
第二皇女を合わせようと言うのだ
帝国の第二皇女
帝国には残念ながら跡取りの王子が居ない
皇女が二人だけである
第一皇女は、身体が弱かった母親に似たのか
どちらかと云えば内気な少女
第二皇女は後添えに生ませた娘ではあるが
大変元気な少女である
姉は内気ではあるが魔法の力に恵まれ
魔導学園の主席を維持するほどの力を持つ
妹は活発ゆえに武技を好み
騎士学園の主席も狙えるとの噂
数年もすれば騎士学園に入学して主席間違いなしの声が多い
帝国は魔法と武技の両輪を手に入れてさらにその上を目指す事になる




