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約束とは

「早く、早く呼んでください。神様」


「ふむ、少年よ女神様を呼んでみよう」


そう言いながらこの世界の神は


「始祖の女神に願い奉る

 我はこの世界を管理する神

 神の名において願い奉る 

 今一度、我の前に姿をお見ください」


すると白いモヤモヤの様な物が現れ

人の様な形に変化して行く

そして現れたのはあの時の女神だった


「人の神よ、我に何か願いがあるのか?」


「始祖の女神よ、現れて頂きありがとう存ずる

 ついてはこの少年が願いがあると言う

 その為に呼ばせて頂いた」


「そうですか、其方も事情は知っていると思いますが

 それ以上何を望むのです?」


「我はあくまで人の神

 人の願いを聞き届ける使命じゃ」


「成程、そう言う事ですか

 では少年、今更なんの願いがあると言うのじゃ?」


「僕は死にたくありません

 この神様は女神様なら助かるって言いました

 だから僕を助けて下さい

 僕を殺したら殺人罪で捕まりますよ」


「あっははは、今になって何を言うかと思えば

 そんな事か

 お前の死は決まっておる事

 誰にも助ける事は出来ぬ

 勿論、妾にも無理じゃな」


「そんな、どんな事でもしますから

 助けて下さい

 こんな事ならあの子達と同じように

 あの国に行けばよかった

 そうしたら死なずに済んだ筈なのに」


「ああ、あの娘らは死んだぞ

 神国に行って3日目に死んだわ」


「え、そんな。

 嘘ですよね。だって勇者と聖女なんでしょ?」


「冥土の土産に聞かせて置いてやろう

 あの娘らは生きる力が無かった

 どの世界でも、一部の世界は違うが

 ほとんどの世界は弱肉強食がルールじゃ

 それに勝てぬ者は死ぬのみ」


「なぜ死んだんですか?

 悪い事なんてそんなにしてないはず」


「悪い事をしなければ生きて行けるなど妄想じゃな

 生きる為には殺さねばならぬ

 殺せねば死ぬのみ」


「どう言う事ですか?」


「あの娘らは確かに勇者と聖女じゃ

 だが覚悟が無かった

 勇者と聖女だろうと覚悟が無いと奴隷にも負ける」


「神国の奴らは必ず初めに奴隷と戦わせるそうじゃ

 そこで奴隷に勝てないと死ぬ

 それだけの事じゃ」


「そんな、じゃあ、人が殺せないとダメなんですか?」


「お前がいる世界ならば人を殺す事はまず無いじゃろう

 しかしな、あの世界は人を殺す事は当たり前の事じゃ

 やらねばやられる

 だがな、お前は違うぞ

 お前は神との約束を破ったのじゃ

 決して許される事では無い」


「この世界の神よ」


「はい、此処におりまする」


「最早、時間の無駄じゃ

 早々に引き上げてその方の役目を務めるが良い」


「承りました、始祖の女神様

 それでは失礼させて頂きます」


そう言って、この世界の神は消えていった


「さて、そろそろ良いじゃろ

 そこでお前に聞こう

 生まれ変わるのが良いか?

 生まれ変わらぬのが良いか?」


「え、どう言う事ですか?」


「お前は死ぬ、これは変わらぬ事じゃ

 だが死んでからの事は決まっておらん

 だから生まれ変わるか、どうするかを聞いておる」


「生まれ変わるとどうなるんですか?」


「生まれ変わると、新しい命を授かる

 ただどんな世界で生まれ変わるか?どんな生き物かは不明じゃ」


「生まれ変わらなければ?」


「お前達の世界の何と言ったか

 そう、仏とか言ったな

 あの者の様に生まれ変わる事を拒んだ者もおるのう」


「仏様は助けてくれる人でしょ?」


「何を寝ぼけた事を言うか

 あやつは生まれ変わっても生きていく苦しみを

 もう一度繰り返すのが嫌なので拒んだのじゃ

 虫に生まれるかも知れん、草に生まれるかも知れん

 人に生まれるかもしれんが同じ生き方はないじゃろう」


「そうだったんですか?

 助けてくれるんじゃ無かったんですか?

 仏教は救ってくれるんですよね?

 そう聞いてますよ」


「それは人の願いじゃな

 まさに取り様の話じゃ

 人は都合の良い方に傾く

 最早時間じゃ早う決めい」


「死にたく無いんです

 元に戻りたい

 家に帰りたい

 お願いします、助けて下さい」


「最早これまでじゃ

 この世界の神に祈る事じゃな」


そう言った女神は消えて行き 

僕も消えて行った


僕が消えた時

世界は動き始める


僕も身体が消えた瞬間に

家族は寝ていた筈のベットにしがみつき泣いている

医者は手の出し用も無く、警察もどうすれば良いか分からず立ち尽くす

そうして僕の短い人生は終わりを告げた

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