豊少年の苦難
豊少年は無事に元の世界へ帰ってきていた
無事に家に辿り着いた喜びに泣き喚いて
母親をオロオロさせてしまったがそれも落ち着いたようだ
明日の試験に向けて最後の勉強を始める
何が何でも試験に合格しなければならない
そのために小さい頃から頑張ってきたのだから
試験に備えて11時には休む事にした
「異世界召喚なんて本の中だけだと思っていたけど
本当にあるんだなぁ
でもあんな世界で行けていけるはずが無いし
戻ってこれて本当にラッキーだった
あいつらも本当は戻ってきてたりしてな
きっと何もない元の生活に戻れるんだ
まずは明日からの試験を頑張ろう」
そんな事を考えながら眠りに就くのであった
翌日、早起きして体調を確認し、以上のない事を確かめると
家族に見送られて試験会場へと足を進める
会場に着いてからも落ち着いた態度でいれた
試験が始まってからも始終落ち着いた態度で
思うように試験が進み、我ながら完璧だと自画自賛する
この調子で残りの試験日数もこなして行こうと思う
初日の順調な感じを持続させるべく早めに休み、明日に備える
そして2日目の朝、いつも通りの行動で駅に向かうと
電車が止まっていた
飛び込み自殺があったそうで当分動かないらしい
慌てて駅前に出て、タクシーを拾い試験会場に向かう
何とか時間ギリギリで滑り込みセーフ
2日目の試験開始
ここで予想していた問題が違う事に気づく
思う通りに成らない試験問題に腹を立てつつも
何とか記入して2日目が終わる
そして3日目、昨日の予想違いに対処するため
あれこれ悩んだのが裏目に出て何問か怪しい箇所が出た
だが、自身の採点では合格圏内は余裕だろうと判断する
数少ない友人と試験について話したりしながら
合格後の生活に夢を膨らませる豊少年であった
家に帰ると母親から
「豊ちゃん、あなた同じクラスに舞ちゃんと明日香ちゃんっていたよね?
最近、見かけなかった?」
「え、どうしたの?」
動揺を隠しながら返事をする
「いやね、なんか試験の前の日から二人とも行方不明なんだって」
「僕はあまり話した事ないから分からないなぁ」
取り敢えず無難な返事をしておく
「そうよね、あなたは女の子とあまり話なんてしないものね」
母親はそう言って夕食の準備に戻った
豊少年はあの日の事を思い出し
「やっぱあれは現実の事だったんだろうか?
あの二人が行方不明だなんて
でも僕は帰ってきた
どうしたらいいんだろう」
試験の結果とあの二人の事が気になって落ち着かないのであった
同級生の行方不明は、家出騒ぎを通り越して警察沙汰にまでなっていた
同級生は全員がクラスの中で警察官に話を訊かれ
豊少年も当たり障りの無い返事をしてうまく逃れた
そして合格発表の日がやって来る
家族は総出で送り出してくれて
「すぐに電話するのよ」
と母親から最後に言われた
「うん、分かったよ」
その言葉を残して豊少年は発表を見にいくのであった
そして会場
何度見ても何度見直しても自分の番号が無い
もう1時間以上見直している
母親からの電話は数十回はかかってきているが
出るに出られない
何故、僕の番号は無いんだろう
係の人に確認するも
「掲示してある番号以外は不合格です」
と、取り付く島も無い
涙が溢れてきて頭の中が真っ白になりそしてやっと現実を知る
「僕は落ちたんだ」
そう思った瞬間突然世界が変わった
「ここは?
まさか召喚された世界?」
見回すと、神と名乗った女の人達が居た
「少年よ、約束を覚えているか?」
「約束?」
「そうだ、お前が交わした約束だ」
豊少年は、必死になって思い出そうとする
「あの、もしかして試験に落ちたら死んだ方がマシだって行った事ですか?」
「ほう、覚えておるか、それは上々である
試験の結果は我等も見ておった、合格ではなかった様だな」
「はい、残念ながら落ちた様です
でも、来年こそは必ず合格して見せます」
「なぜ来年があると思うのだ?」
「え、だって勉強し直して来年も試験を受けますよ…
まさか試験に落ちたからって死んだりしないですよ」
「それは約束とは違う様じゃ
お前は約束を破るのじゃな?」
「いえ、アレはっそう言う決意で試験を受けますと言う
言葉です、本気に取られるとは思いませんでした」
「なるほどのう、そう言う言い方があるか
だがな、神と交わした約束は破れんぞ」
「神って何なんですか?
僕は来年に向けて勉強し直すんです
だから早く帰して下さい」
「少年よ、もう一度聞こう
お前の目的は大学に受かる事なのか?
その先は無いのか?」
「僕は、大学に受かる事だけを目指して勉強して来ました
僕の目標は大学に受かる事です」
「では、何かになりたい、何かを成し遂げたいという
目標は無いのじゃな?」
「それは大学に入ってから考えたいと思います」
「すまん、質問が悪かった様じゃ
お前のこれからの生きる目標を聞きたかったのじゃ
つまり、大学に行く目的じゃな」
「え、大学に行くのが目的ですよ
変な事聞きますね?」
「そうか、では初めに戻ろう
落ちたら死ぬと約束したがその約束を果たして貰おう」
「なんで死なないと行けないんですか?
アレは言葉のあやと言うものです
それを本気にするなんてあなた達ははおかしんじゃ無いですか?」
「お前は言葉のあやと言うが、約束は約束じゃ
人同士の約束ならあやもあろう
じゃが、お前は神と約束を交わしたのじゃ
到底、違える事は出来ぬぞ」
「神、神って何ですか?
あなた達が神って証拠があるんですか?
頭がおかしいんじゃ無いんですか?
早く僕を帰して下さい
あの子達も居なくなったと大騒ぎで警察が探してますよ
あなた達なんて誘拐犯で警察に捕まって仕舞えば良いんだ!」
「けいさつ?
何じゃそれは?」
「警察も知らないなんてどう仕様もないですね
早く僕を帰さないと大変な事になりますよ」
自称神達はお互いを見つめ合い答えを出す
「分かった帰してやろう
じゃが約束は必ず果たして貰う
己が出来ぬなら、我等が果たそう
覚悟しておく事じゃな
往生際が悪い奴よ、恐らく苦しみ抜くじゃろうが覚悟せいよ」
そう言って豊少年は元の世界に帰って行った




