獣人族の苦悩3
「わらわには、人族の守護神で在らせられる アンゼリカ様の恩恵があり
わらわの言動はアンゼリカ様と同意であるのじゃ
そのわらわに逆らうなとアンゼリカ様を愚弄する行いである
よって其の方を死罪に致す、最後に申し開きがあれば聞いてやろう」
皇女はそう言うと、平民の男を睨み付けた
「仔猫が飛び出してしまった事は、ワシの監督不足てあったが
殺す程の事か、それともアンゼリカがそういう事を許しているのか?」
「其の方、よりによってアンゼリカ様を呼び捨てにするなど万死に値する
ただの死に方では済まさん!」
「ちよっと通して下さい!」
「皇女様、お待ち下さいますよう!」
騒ぎの人混みを掻き分けて出て来た男に、皇女はイヤな顔をする
「これは大賢者殿ではないか、大賢者殿も死刑を見に来られたか?」
「皇女様、このグリウス伏してお願い申し上げます
どうぞこの方を何事も無くお帰し下さいませ」
さらに男の方へ向かい、跪き
「師よ、どうか御怒りを御納め下さい。このグリウスの願いを御聞き届け下さいませ!」
60歳を超えたであろう白髪の痩せた大賢者グリウスの顔には、血の気は無く絶望に満ちている
「死んだ仔猫なれば、師のお力を持ってすれば息も還しましょう
何卒、其のお力を持ってお許しください。伏して御聞き届け下さいます様」
グリウスなれば大賢者としてこの国に、いやこの世界に知らぬ者は無い
そのグリウスが死んだ仔猫を捧げ持ち、涙を流して必死になって許しを求めていた
「大賢者グリウス殿、この者はアンゼリカ様の御名を穢したのです
到底許さない罪です
たかがこの男の仔猫一匹死んだだけで、大賢者グリウス殿ともあろうお方が
何ですか!
わらわに許しを乞うより、平民に許しを乞うとは我が国の大賢者の態度では
ありますまい」
「この上はアンゼリカ様にご顕現願い、大賢者グリウス殿といえど屹度罰を与えて頂けなければ
わらわの気が許しませぬ」
「皇女様、あなた様は失礼ながらまだお若い
知らぬ事も沢山有りまする。この年寄に免じてお下がり下さいませ
この国10代に渡って支えてきたグリウスの願いです」
「父上は大賢者グリウス殿を重用されておるが、わらわの代ではどうなるか?
アンゼリカ様の恩恵を受けた我が身により、そのお力にてご顕現願い恥をそそがねばならぬ」
其の言葉を聞いて大賢者グリウスは、身を震わせ声無くこの国が絶望の縁に立つのを知る
「我等が守護神たるアンゼリカ様!
この皇女の声をお聞き届け頂き、我等の国の為ご顕現下さい!」
「大賢者グリウス殿、無礼な平民よ 間もなくご顕現されるアンゼリカ様の神罰を受け
畏れながら悔やむが良い」
これ以上は無い程の嫌な顔で皇女は叫んだ
「アンゼリカが来るのか?」
平民の男に聞かれて大賢者グリウスは、声を震わせながら
「お許しを」 としか言わなかった
間も無くして空に稲妻が走り、使い魔であるドラゴンを2匹従えたアンゼリカが顕現する
2匹のドラゴンは辺りを威嚇しながらアンゼリカを守る様に前に出た…が
何かに怯えた様に後ずさる
訝しげに、前方を見たアンゼリカは皇女と跪き頭を垂れる大賢者グリウス、そして男を確認して
「皇女、何用ですか」
アンゼリカの顕現にその場の者が一斉に跪き…男は立ったままだった
皇女は跪きながら、男に向けて「無礼者!土下座しなさい」と叫ぶ
男は知らぬ顔でアンゼリカを見ている
アンゼリカは、
「そこな男、我は人族の守護神たるアンゼリカである。敬意を示すが良い
ドラゴンに喰われてしまうぞ」
そしてドラゴン達を見ると何故かドラゴン達が目を合わせようとしない
機嫌でも悪いのかしらと首すじを撫でてやると、小刻みに震えている
恐るものなど無いドラゴン達が何かに怯えてるのだ