転生世界
我に還ったテレサは父上の元に走り寄り
「父上、大丈夫ですか?どうなさいましたか?」
と、慌てて声を掛けるが返事は無い
アフロディーテが近づくテレサを遮るように前に出て
「まずは、主様を寝台まで移動しましょう
それから、イシュタルに診断して貰います」
「判りました、大事無ければ良いのですが」
そう言いながら女神ーズの後ろを付いて来る
4人がかりで寝台に移動させると、イシュタルが神眼で容体を確認する
険しい顔をしながら懸命に鑑定をするが
「私よりも上位の主様の鑑定はやはり容易ではありません
一時的に意識を失っている状態だとは思いますが
安心出来ませんので、これより我等で治癒結界を張り
ご様子を伺うしか今の所は手が無いかも知れません」
「神がこの様になる事など有り得ないはずです
何か、外因があるのでしょうか?
外因か内因に依って対処が変わってきますので
原因を探らねばなりませぬ」
「父上は最近、小さな不調を言われておりました
何処となく何か変な感じがすると仰られて
大好きな温泉も楽しまれていないご様子でした」
テレサがそんな事を言うと
アフロディーテは、頷きながら
「それは我等も感じておりました
それ故、より注意してお側に控えておりましたのに
これは我等の怠慢と言ってよいのでしょう
主様のお側に控える者として、恥ずべき事です」
その頃には急を聞いた龍族の大長老達がまさに飛んで来て
家の周りに控えている
森の仲間達も一様に心配顔で集まって来ている
森の中が大騒ぎにならぬ様に
現在の主様はお休みをされているので
皆は解散するようにとへカティアが代表で伝えに行く
兎に角、原因を探らねば解決しないので
あらゆる方法で原因を探るが一向に原因は掴めない
その時、緑神であるスーリアが
「これはもしかして主様の精神の問題なのではないか
我等がどれ程の神気を当てて治癒させようとしても
回復の兆しすら無いのは肉体ではなく精神に違いないと思う」
と、言い出した
「ならば、主様がお戻りになるまでお待ちするしか手がないのか?
「いや、主様のお心の中に入る手立てがない訳ではない
ただそれに依って、さらに悪化する可能性もあるだろうし
今は、ご様子を伺うのが得策ではないかと思う
皆はどう思うや?」
イシュタルは
「主様のお心の中に入って、そのお考えを知るなどと
我等臣下が行うような事ではない、実に恐れ多い事だ」
へカティアは
「そうは言っても、現状で対処の仕様が無いので
そういう方法があるのなら一考すべきでは無いか」
そう言いながら紫髪のセレネを見る
セレネは再度考えながら
「今少し、様子を見ましょう
その後皆で再度相談する事にしましょう
ご容体を視るに、安定しておられるご様子ですし」
そう言って、テレサを見る
テレサは
「私は、お姉様方の様に神気はありませぬ故
総意に従います」
取り敢えず、今暫く様子を見ようと言うことで一致を見た
そんな相談が行われている時、俺は見た事がない世界を旅していた
多分これが宇宙なんだと思う様なありとあらゆる星々の間を抜けて
色んな星に降り立ち、色々な生き物、生物を見た
植物だけの星、生き物などいない様に見える星にも小さな命があった
地球の様に水があり、緑が広がり2つの太陽が照らしゆっくりと命を
育む星
水や緑も無い乾き切った大地に生きる昆虫達の星
何を食べて生きているのか解らないが、確かに命は存在した
地球や転生した世界とは異なり、命が少ない気はした
本当に何も無い星もあった
反対に非常に文明の進んだ星もあった
多分これが宇宙人なんだろうなって気がした
精神だけの存在になってあらゆる星や、生命を見知った
そして、地球や転生された世界の醜さを知った
文明の進んだ星は、言葉は必要ない様だった
お互いの思念が直接伝わり、思いを伝える手段を確立している様だった
思念を伝えると言うことは、嘘も伝わるという事だ
その為、嘘のない世界を実現している様だった
嘘のない世界が素晴らしいかどうかは知らないが
互いを害し合う事のない世界は美しいと思った
それぞれの世界で精神として暮らし、話し合い、色々な生き物種族を見た
他の星を攻撃する星
それは進化の過程で、俺達が住んでいる地球と非常に似通っていた
必ず、複数の命が有り、必ず弱肉強食の法則があるのだった
広島にて




