龍族の住処
銀牙の気配を目安に転位してみると
どうやら住処の真ん中だったらしい
見渡すと、歳を重ねた龍らしきもの達がトグロを巻いている
さっき話に聞いた上位族のモノ達らしい
「お招きに預かり参上したが、ウチの銀牙はどこにいるかな?
ソナタらに迷惑をかけたのなら、俺も一緒に謝ろう」
ウチの子供が迷惑を掛けたんならまずはお詫びだなと思いつつ発言すると
使いとしていて来ていた金竜が
「長老様方の御前である、頭が高い控えおろう」
どっかで聞いた事のある様な発言をする
俺は悪人役らしい
「頭を下げれば良いのか?」
頭を下げて謝って済むならいくらでも下げてやるが
それを聞いて収まらないのが女神ーズである
「貴様ら、龍の分際で主様に頭を下げろとは恐ろしい暴言
最早、命は無い物と思うが良い」
また同じことの繰り返しである
それでは来た意味がないではないか
「いや、そちらが大人しくウチの子を返してくれるなら
いくらでも頭を下げて詫びる事は問題ない
で、どなたに詫びを入れたら良いのか教えてくれぬか?」
金竜は、長老達に目を遣りながらも
「最早謝って済む段階ではないわ
お前達は、長老様方に大きな無礼を働いた
その罪は死んで償うが良い」
「そうか、でももう1度だけ聞こう
龍族の総意なのだな、間違いないな?」
女神ーズは先程の怒りは何処へやら、すっかり怯えて震えている
お前ら、龍族を皆殺しにするって叫んでた癖にいざとなったらこれかい
「まずは、1番の罪人、バカ犬から処刑してやろう
連れて来い」
そう言うと、後ろに控えている竜達に目配せする
はっ、と返事をして竜達が檻の様なものに入れた銀牙を連れて来た
身体は大きいがまだ子供である、怖かったのであろう
すっかり怯えた銀牙は尻尾を巻いて震えている
俺を見つけた銀牙は
「父上申し訳ありません、ごめんなさい」
と鳴きながら身体を震わせる
「銀牙、だからウロウロするなと申したであろう
怪我はないか?」
「はい、父上、怪我はございません」
「そうか、怪我はないかよかった
龍族達が話をしてくれんのでどうやら戦う事になりそうだが
お前はそこにいなさい、すぐ済むのでな」
「おお、すぐ済むさ
お前の父上とやらもすぐに殺してやる、我等龍族に叛いた罰を受けよ」
と言うなり、ブレス攻撃を仕掛けてくるが当たらんわな
パツ金お前やれと視線を送ると、はっと金竜に向けて指を指す
「主様のお許しが出た故、我が貴様を消してくれよう
消えてしまえ!」
掛け声だけで金竜は跡形もなく消えてしまう
背後に居た竜達は後退り、長老達は何事かと辺りを見回している
長老の1匹が
「怪しげな魔法を使うが、貴様人間ではないな?」
パツ金は長老達を見ながら
「我らは始祖たる女神
消えた竜に伝えておいたが聞いてなかったか」
「始祖の女神とは世界の最上位であると聞く
そのような女神が何故この世界に来ているのか?
恐らく始祖の女神を謀る不届モノであろう
構わぬ、皆のもの成敗してしまえ」
なんかどっかで見たような展開なんだよなぁ
まあ、やると言うなら仕方ない
1匹殺してそれで判れば儲けものだと思ったが、解らないなら是非もなし
「お前達、下がっていろ
俺が始末を付けよう」
そう言うと、すかさず紫髪が
「主様、ご注意下さいませ
今のお力では、本当の皆殺しになってしまいます
恐らく生き残るのは主様だけだと」
え、どう言うこと?
つまり対象を選べって事?
「はい、怒りをそのまま放射すると周り全部が消滅してしまいます
消滅させる対象を竜族に限定すれば、我らは無事で御座います」
「お前ら、女神ーズだろ?死なないだろう?」
「いえ、主様は我らの上位で御座いますので
そのお力により我らは消えてしまうのです」
なるほどそれで消えてしまわないかと震えていたのか、理解したぜ
「んじゃ、そこの竜達からするか
消えちまえ」
そう言うと、消えた金竜の後ろに居た30匹程度の竜達が消えていた
なるほどこう言う具合に使うのかと感心していたら
長老達の後ろから真っ白い大龍が現れて
「我は、龍族の長たる白龍と申します
我が眠っていたとは言え、この度のご無礼平にお許しを
以下様な罰でも受けますので、どうぞ部下達を殺すのはお止め下さい」
「ほう、仕掛けて来て止めてくれと言うか
俺は、先に詫びると言ったはずだ
誰に詫びれば良いかとも聞いた
だが、帰って来た答えは死ねだったぞ」
「全ては配下の指導が疎かだった我の責任で御座います
我の命で済むならどうぞこの命をお召し下さい
何卒、配下の者達はお救い下さいます様に」
「なあ、なんで今になってそんな事言うんだ?
お前達龍族はこの世界で1番偉いと思ってるんだろ?
だから逆らう俺達を殺そうとしたんだろ?
逆に殺されかけて今になって鳴きを入れたって遅くないか?」
地面に這いつくばる白龍を見て長老達は
「大長老様、その様なお姿はお止め下さい
我等が一斉に掛かればこの様な者どもは一掃できまする
どうぞ、頭をお上げください」
「馬鹿者どもが!お前らはこの方々を見て解らんのか?
始祖の女神様方を従えるこのお方こそ真の神である
それも解らず、長老などとは烏滸がましいにも程がある
皆でお許しを乞うしか最早助かる道はない
お身体から溢れている神気に気づかぬとは情けないにも程がある」
白龍は地面につけた頭をさらに地面にめり込ませて
一心に龍族の行く末を祈るのであった
そんな姿を見て、長老達は俺の方を見直して後退り
白龍に負けない勢いで頭を地面にめり込ませて
「申し訳ありませんでした、真の神様の御子であられる
フェンリル様に無礼を働いた事
我等の罪であります、どうぞ我等を罰せられ大長老様をお助け下さい」
どいつもこいつも頭を地面に叩きつけるからホコリが舞って仕方ない
そんなにしてまで謝るならなんで初めから話し合いに応じなかったんだよ
「全て、我等の不徳と致すところ
言葉もございませぬ
お許し頂けるなら、我等龍族真の神様に逆らう様なことは一切致しません
この地も明け渡し、未来永劫お仕えさせて頂きとう存じます」
「いや、お前らの住処は取らないよ
それよりもうちの子は返して貰って良いかな?」
そう言うと、恐ろしい勢いで長老達が檻を開ける
開いた扉から恐々と銀牙が出てくる
大丈夫そうだと思った銀牙は一目散に俺の後ろに来て隠れる
「銀牙や、怖かったな
これに懲りたら次からは知らない所へウロウロするんじゃないよ
今回は良い薬になっただろう」
銀河は自分が引き起こした騒ぎの大きさに言葉もない様で
後ろで震えているが、そっとケモミミが近づいて頭を撫でてやっていた
「うちの子は帰ってきた
しかしお前達の仲間は大勢が死んでしまった
これでは帳尻が合わないのではないか?」
白龍に聞くと、白龍は
「真の神様に敵対して全滅しなかった事こそ僥倖で御座います
これ以上の何を望みましょうや」
そう言って再度頭を下げて手に持っていた宝玉を差し出す
「これは我等が龍族の命の珠で御座います
これを持つ者は龍族を従える者、真の龍族の王で御座います
どうぞ、真の神様がお持ちになり我等の王としてご指導ください」
その言葉に龍族一同が一斉に頭を下げて願ってきた
「俺は、神としては未熟だ
お前達の王としては力不足だろう
せめて、友達仲間としてじゃいかんか?」
「主様、それでは此奴らをお許しになるとおっしゃるのですか?
女神ーズは不満らしい
だが、頭を下げてくる龍族を皆殺しにする趣味は俺には無いし
出来るなら仲良くしたいと思うと説明すると
「わかりました、主様のお考えに従いましょう」
そんな事言ってると龍達の方から騒ぎが起こった
む、手打ちが気に入らなかったのかと聞き耳を立てていると
そんなことでは無いらしい
何が起こったか聞いてみると、長老の一人が
「畏れながら申し上げます
真の神様の神気を浴びて産気付いたモノがおりまする」
え、俺のせいなのか
なんで俺の周りは子供が産まれるんだ?
誤字報告頂きありがとうございます
十分注意していますが抜けてる様です
これからも教えて下さい




