獣人族の苦悩2
梟族長の拘束を受け、アーニャは身動きすら出来ない
その状態を確認して、梟族長は遠い目で語り始めた
「アレは2000年前のことじゃ
あの頃今の人族の祖先が栄えておってな。それはそれは大きな国を作っておった
じゃが人族は繁栄を極め、驕り高ぶる様になる そして「欲深い」
ワシら獣人達は、今と変わらぬ慎ましい暮らしをしておったが
あの者達は、世界を自分達だけのものと思い他種族を蔑み
思い通りにしようとしていたのじゃ
「自分達の姿を見て、神達と同様と思い上がる。
人族の創意工夫や考え方が良いのかどうかわからないが、技術とは使い方次第」
と、あのお方はおっしゃっておられた
我等も昔は森の外で暮らしておったが、人族が争いを仕掛けてくる
幾多の仲間達が死に、捕らえられた
捕らえられた者達は、死より辛い思いをしたのじゃ
我等の力の秘密を手にしようと思って、切り裂き生殺しで生かし続けてな
そんな時、あのお方はおっしゃって下さった
「森へ来なさいと」
あの時、森へ呼んで頂けなければ我等と人族との全面戦争で良くて相討ち、
最悪は他族を巻き込んでの世界的な破滅を迎えてもおかしく無かったのじゃよ
考えてもみよ、我等の力の秘密を一部ではあるが奪い、強化して合成させて
襲って来る恐ろしさを!
強化合成で魔人族が産まれた時は、あのお方も悩んでおったそうじゃ
そんな一触即発の折、あのお方は人族の帝都に行かれた
産まれて間もない仔猫を連れてな
仔猫が街を見たいと言っていたそうじゃがなにを思い立たれたのか解らん
仔猫を大事そうに胸に入れて帝都に着かれたあのお方は、弟子と会話し満足して
帰途に着かれた時、皇女の行列とかち合ってな
馬のいななきや鎧の音にビックリした仔猫が行列に飛び込んで
行列を止めてしまいおった
騎士達に捕まった仔猫は、投げ付けられたり踏まれたりして
四肢はあらぬ方向を向き最早虫の息だったが、
騒ぎを咎めた皇女の目に留まり連れ出された
「わらわの進軍を止めて騒ぎを起こしたのは、この仔猫であるか!」
皇女の前に膝を突いた騎士は、仔猫の首を掴み皇女へ差し出して
「皇女様の進軍を不届にも止めた仔猫は我等騎士団が仕留めております」
差し出された仔猫を見て
「ふむ、まだ生きておるではないか。よしわらわが直々に始末つけてやろう」
差し出された仔猫を石畳の路に落とし踏み付けて殺そうとした時
「止めんか!、小さな仔猫が行列を止めた程度でなにをしている」
声のする方へ騎士達は走り、青年と思われる男を取り囲む
「貴様、平民の様だが畏れ多くも皇女様の進軍を止めた仔猫を庇いだてするか!」
「その仔猫はワシが連れていた仔猫だ。大きな音にビックリして
飛び出しただけで寄ってたかって嬲りものとはどういう事だ
今すぐワシに返せばまだ救かるだろう」
「貴様が仔猫の飼主か、ならば貴様も同罪 死刑にしてくれよう」
「わらわの進軍を止めただけで死罪じゃ、ほれこの様にのぅ」
皇女に踏まえて仔猫は、息絶える
「貴様も平民の分際で生きておる価値は無いわ、死んで仕舞うがよかろう」