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獣人族の苦悩

梟族長は、漸く追い付いた詫びを言いながら仔猫に目を向ける


「アーニャよ、此処まで逃げてきおったか」


「わたくし達の力不足で梟族長様にお手数をおかけしましたが漸く始末が出来ます」


猫族の女が、申し訳無さそうに頭を下げる


「なに、よいことよ。流石に4氏族で掛かってもこれ程とは思わなんだでな」


アーニャと呼ばれた仔猫は、戦闘と逃亡で着衣のほとんどの部分が無く

平常ならさぞ美しかろう毛並みも、血にまみれ泥にまみれて見る影も無い

腹部の一部が抉られた様に欠け、四肢すらつながっているのが不思議な位の攻撃を受けている

しかしながらアーニャの眼だけは、未だに生きることを諦めてはいないのが理解できた


「しかし、あの状態で結界を抜けて此処まで逃げて来たとはのう」

「やはりあのお方のおっしゃる通り生かしておくべきなのか?」


「畏れながら申し上げます。辛いですが禍根は絶つべきかと」


声の方へ目を向けると、虎族の戦士か失った右腕の付け根を押さえながら発言する

猫族の女も、申し訳無さそうに頷いている

狼族の女に目を向けて、意見があるがあるか気を向けると


「わたくし達狼族は、あのお方のお言葉に従いたいと思います」


「熊族はどうじゃな?」


片目を失い、腹部にも軽く無い傷を負った熊族は


「畏れながらあのお方に逆らうなどできませぬ」


「なるほど、其方達の意見ももっともであるな」


「猫族と致しましては、当事者であります。あのお方にも一定の御理解を頂けておりますので…」


「虎族は、猫族と同意しております」


梟族長は、此処へ来て迄判断を下しかねていた

種族の決定は重要である、守らない場合には必ず他の種族からクレームが入る

最悪は、森の生活を棄てて一族が移住すら決意しなければならない

移住は、種族の絶滅を意味する


しかして本音では4氏族も仔猫を殺したくは無い


殺したくは無いが、殺さねば種族が不幸を負う

考え抜いた上での合意ではあったが、アーニャの状態を見るに付け

これでは、まさに残酷な死では無いかと思う


「あのお方は、せめて安らかにと仰せられた。おそらく見ておられるだろうが

 このままじゃとアーニャ怨みが残るであろう

 そうなれば、あのお方が良かったと言われるか… あの時の様にならねば良いが」


その言葉を聞いて思い当たる事があるのか、4氏族達は顔色を変える


「梟族長様、まさかあの様な事が本当に起こったのですか?」

「わたくし達は、まだ若いので話しか聞いてないですが、まさかその様な事か起こると!」


梟族長は、昔を思い出す様な目つきで


「その方達は、また500年程しか生きておらんか…

 アレはわしが生まれて100年経った頃じゃが、もう2000年も昔の話じゃな」

「其の話の前に、アーニャの拘束をしておこうか」


梟族長は、ゴニョゴニョと聴き取れない言葉を呟くと掴んでいた杖から

白い光がアーニャへ向かって一直線に進み、アーニャを包み込んでいた

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