冒険者登録するよ
「どんな田舎から来たんだお前は」
「すみません、何にも無い所なんで」
「見たところ荷物も持ってないようだが
もしかして金も持ってないのか?」
あー日本語通じてるけど金は違うんだろうなぁ
てか、持ってきてた財布や、スマホなんか白狼に預けて来たしなぁ
「すみません、お金は持ってません
お金ないと街に入れないんですか?」
「いや、金は無くても街には入れるが
ステータスとかジョブの確認はお金がいるぞ
司祭様に献金して見てもらうからな」
「それによって仕事を与えられたりしてみんな生計を立ててるんだ
俺たちだって、番人のジョブがあるからこうやって仕事をしている」
「金が無くて司祭様に献金出来ないなら、冒険者にでもなるしか無い
冒険者ならステータスさえあれば何とか食って行けるだろう
しかし、お前はマトモなステータスさえ無さそうな感じだがな」
少し憐れんだ表情を浮かべながら門番はそれ街へ入れと顎を向ける
冒険者?
そういや異世界転生希望者の大半は冒険者になるんだったか
なんか飛んでテンプレ通りに進んでるみたいだけど
俺も冒険者になって魔王とか倒すんだろうかなぁ
とにかく街へ入れって許可くれたんで入ってみよう
街の中は意外と綺麗だった
石と木の組み合わせで出来た建物が多く中世の街並みの様な感じ
店があり看板もあるけど、書いてある文字は日本語じゃねえな
だが読める、如何してか判らんが読めるそれでいい
とにかく金が無ければそのステータスやジョブとかも不明なままだしな
冒険者とやらになって金を稼いで献金すっぺ
歩いてる人に声かけて、冒険者組合の場所を聞いた
目の前じゃねえか
西部劇に出て来るような両開きの小さな扉を開いて入って見ると
難民キャンプかって言うくらい人がいた
それも汚いやつばかり
俺も大概汚いとは思う、だってこっち来てから風呂入ってないし
着替えもないし、洗濯もしてないしでも俺の方が綺麗と思ってしまう
帰ろうかな、森に
気を取り直して、受付らしいのを見つけて声をかける
「すみません、ここで冒険者になれるんですか?」
受付みたいなとこに座っていた金髪ねーちゃんが
胡散臭そうな顔で全身を見た後
「冒険者になるんですか?
見たところ、あまり若くない様ですが
若くないと危険ですよ
如何してもと言うなら受付はしますが」
「年齢制限とかあるんですかね?」
「いえ、年齢に制限はありませんが森に入って探索や
採取とかのクエストがありますので若い方の方が有利です
それにあまり能力が無さそうですよね」
ほっとけや!運転手しかした事ないわい
「それと登録にはジョブとステータスが必要になりますが
お判りですか?
不明な場合は冒険者見習いの登録しか出来ませんが?
その場合だと、力仕事ぐらいしかないですよ」
「いや、ジョブとかステータスとかを知るのにお金が必要で
冒険者になればお金が稼げて、それで知ろうかと思ったんですが」
受付嬢は、見下げた顔をしながら
「失礼ですがあなたの歳を考えると今更ジョブの確認をしても
遅いと思います
その歳でジョブが発現しても役に立つとは思えません
そもそもジョブの発現は子供の頃に司祭様にお願いして
行うものなのでこう言ってはなんですがお金のない家庭では
献金できずに死ぬまで力仕事ばかりです」
要するに負の連鎖が続く訳だな
さらに受付嬢が
「読み書きって出来ます?
文字って知ってますか?
近頃は冒険者でも読み書きが出来ないと契約が出来ない場合があります
如何してもって言うなら、見習い登録は出来ますが
今と変わらない生活ですよ」
読み書きか
さっき看板読めたしなぁ、書く方は如何かな
「文字は読めます、書くのは書いた事無いので解りませんが
多分書けると思います」
「あのね、読み書きには訓練がいるのよ
アンタのようなおっさんが読み書き出来る筈がないでしょう
嘘をつくのは1番いけない事とミューゼ様も仰られています」
「あの、ミューゼ様って誰です?」
受付嬢は顔を真っ赤にして体を震わせながら
「ミューゼ様は我々に加護を与え見守ってくださる守護神様です
まさかミューゼ様を知らないと?」
「すみません、見たことも聞いたこともありませんが?」
「帰りなさい、お前のような者はこの街に相応しくない
登録は出来ません」
あなたからお前になったぞ、あ、その前にアンタがあったか
段々腹が立ってきたな
たかが読み書き程度でこれほどまでにバカにされるとは思わなかったわ
だがここで引き下がっては服も買えんし
「すみません、なんとかならんですかね?」
騒ぎを聞きつけた他の職員らしき人が現れて受付嬢と小声で話ししてる
内容を理解したのかこちらに向けて
「お話は伺いました、冒険者登録には登録用紙に記載し内容を確認して頂く
必要がありますが大丈夫ですか?」
何が大丈夫か知らんが、なんでもやってみよう
「はい、登録お願いします」
新しく現れた職員は嫌がる受付嬢に指示を出し、登録用紙を用意させた
「ではこれが登録用紙です
名前を書いて、内容を読み上げて下さい
それで登録出来ますから」
A4用紙程度の大きさの羊皮紙みたいなの出してきてこっちに投げ渡す受付嬢
こいつおもろいやっちゃな
受け取った、登録用紙を見ると確かに読める
さっき看板読めたから間違い無いけどな
滔々と読み上げると受付嬢の引き攣った顔が見える
最後に名前書くんだっけ
えーっと 三神創っと
おー日本語で書いてるのにこの世界の文字に変換されてるし
もしかして俺チート持ちになったんだろうか?
「えーっとこれで良いですか?」
書いた登録用紙を受付嬢に渡すと、震えながら受け取り
「登録用紙は受理します、検討しますので明日お越しください」
確認の為、横にいる職員に聞く
「登録に1日掛かると言うことですね?」
横に居た職員は困った顔で
「すみません、登録は当日ですのでこれから登録出来ます」
ふーん、この受付嬢登録したく無いのか
これは突っ込むべきだろうな、舐められて運転手が出来ますかってんだ
「こちらのお嬢さんは検討しますと言われましたが、あなたは1日で登録出来ると
言われた、どちらがほんとなんです?
それと私は学が無いそうなんで、登録しても見習にしかなれないそうですが
それについても確認させて頂きたい」
「学が無いと言われた件に付きましてはこの通り
登録用紙に記載朗読出来ておりますので問題ありません
また、登録の検討に付いては彼女の理解不足による発言です
ですので、あなたの冒険者登録はこれより行い発行されます」
ふむふむ登録できるんだね
「なるほど理解できました、なんせ学が無いもんで理解するのに手間が掛かりました
で、登録については再度確認しますが、冒険者ですか冒険者見習ですか?」
「当然、冒険者として登録します」
「そうですか、それはお手数をお掛けしましたね
で、人前で学が無いとか、お前とか言われたことについては
冒険者組合としては如何な見解ですか?」
「それに付きましては、私が代わりにお詫びします
冒険者あっての組合ですのでこれから宜しくお願いします」




