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魔法使いの苦悩-ADVENT-~闇の聖女と光の魔王~  作者: 黒緋クロア
第三章 The story began to move.[動き始めた物語]
26/32

魔法使いの黒

 梨紅の心中は、穏やかとは言い難い状態にあった。目の前で仲間たちと話しているのは、間違いなく久城一真だ。しかし、彼の中にある“魔力”は、数週間前の物とは比べ物にならないくらい、“闇”に染まっていた。最初の爆発の時、梨紅は既に一真の存在を感じ取っていた。だが、一真だと断定することが出来なかった。




 身体は一真だ。だが、“中身”は、皆が知っている一真ではない。




 梨紅はそれを、確信していた。




「勇気、何かわかったか?」




「おうよ、ここの連中が何をしているのか……その裏付けも今、取れた」




 一真に答え、勇気は正義に視線を送る。その視線を受け、正義は頷くと、一真に向き直り、勇気の言葉を引き継ぐように続ける。




「魔物を使った実験が、ここで行われている」




「そうか……ありがとな、2人とも」




 一真は2人に礼を言うと、辺りを取り囲んでいる魔導隊の中から、ピンク色の髪を探す。特徴的なアホ毛は、すぐに見つかった。




「麻美、説明してほしいことがある」




 左目を左手で隠し、一真はそう言いながら、すぐに左手を離し、左目を開ける。緋色に染まった眼球の中心に、闇色に輝く全知の眼の紋章が現れた。




「……何かしら」




 麻美には、一真の行動の意味がわかっていた。全知の眼、ヴィアン・ト・エニスが解放されている今、全ての嘘は見抜かれる。




「お前らが魔物を捕獲して、実験を繰り返す理由だ」




 知られていた……今回、MBSFのメンバーが来訪した際、麻美たちは、梨紅たちを追い返すかどうかを迷っていた。上は当然、追い返すように言ってきた。だが、ここで追い返すのが得策かどうか、誰にもわからなかった。入られたが最後、桜田正義と進藤勇気はこの船を捜索するだろう。年始から探られていたのは気付いていたが、彼らはここまで、何のアクションも起こさなかった。一真の意向か、それとも何も気づかれていないか、それすらも判断出来なかった。




 何も判断出来ない、お飾りの機関……一真たちが参入するまでは、何も出来ない。しかし、何もしないわけにはいかない。




「……将来的に、魔物を捕縛、洗脳、強化することで、こちらの戦力にするためよ」




 それは、自分たちに出来ることを考え、前に進もうとする彼らの結論だった。魔物を討伐する目的で存在するこの組織の未来を考えた、最良の選択。




「なるほど……年末に会った時から行っていたとなると、相当な量の魔物を使って実験してきたんだろうな」




 左目の紋章が黒く光る中、一真は呟く。麻美の発言を経て、ほとんどを理解したらしい。




「オレたちも、退魔……今年に入ってからは保護だけど、ずっと続けてた。そんな中、オレたちと出会わずに、どうやって魔物を集めた?」




「聞くまでもなく、わかってるんでしょ?」




 肩をすくめながら、麻美は答えた。それを受けて数秒考え、一真は続ける。




「恐らく、霊属性の予言……事前に魔物が出現する場所を予言して、オレらが気づく前に捕縛」




「ご明察」




「そうなると、天界の情報も改ざんする必要がある。天界にも協力者が?」




「それが可能であることは、進藤勇気くんの存在が証明していると思わない?」




 麻美の言う通りだ。勇気は天界の天使、人間界に天使が存在する生きた証明材料だ。




「そいつが、勇気が情報を知る前に改ざんしているのか……」




「探し出して、ぶっ飛ばす」




 出し抜かれたようで、悔しかったのだろう。勇気は両手の指を鳴らしながら、両目を吊り上げていた。




「まぁ、そう怒るなって」



 怒りを顕にする勇気をなだめつつ、一真は麻美たちを見回す。



「大体の話はわかった。確かに、オレたちは魔物の討伐って形で退魔をしていた。それを踏まえてくれたことは、ありがたいと思ってる」




 言いながら、一真は隊員たちに向かって歩き出す。それに対して隊員たちは、一真に杖を向けたまま、後ずさりする。




「だけど今、オレたちが行っている退魔は、討伐じゃなく保護だ」




「……つまり、私たちに実験を止めろって言うのね?」




 麻美の返答に、一真は頷く。




「けど、それを決定する権限は、私には無いのよ」




 麻美も、組織の人間だ。現状、異空間管理委員会の一部隊を纏めているだけであり、上司は何人もいるのだ。




「決定までに何カ月もかかるし、その間は実験も続くわ」




「どこに話を着ければ良い? ヴェルミンティアの本隊か?」




「本隊の上、委員会の役員よ」




「なら、オレが話を着けてくる」




 一真はそう言って、右手を振り上げる。直前の発言から、ヴェルミンティアに行くための時空剣を出すつもりだと予想出来る。だが……




「動かないで」




 右手を挙げた状態の一真に、左右から杖が突きつけられる。




「……あおいと、ハウルか」




「兄さん、時空移動は許可出来ません」




「カズ兄もわかってるでしょ? 何度も言ってるんだから」




「あぁ、何度も言われた。だけど、オレが一度でも聞いたことがあったか?」




 一真は右手を下げながら、あおいとハウルに向かって問う。2人はそれに答えず、一歩後ずさる。




「なぁ、ハウル? その許可ってのは、麻美には出せるのか?」




「……はい」




 ハウルは一真の2つ目の質問に、麻美の方を確認しつつ答える。




「なら、麻美。オレがヴェルミンティアに行く許可をくれ」




「私が、許可すると思ってるの?」




「いいや、全然」




 苦笑気味に言い、一真は右手を麻美に向ける。




「平和に事を運べる、最後の機会を作っただけだよ」




 一真の目からは、強い意志が感じられた。麻美はその視線を受け止め、毅然とした態度で問う。




「押し通るのね?」




「当然だろ」




「委員会との争いになるわよ」




「何を今更」




 そのやり取りの末、麻美は魔石フェノアールトを取り出し、詠唱もせずに杖に変えた。




「全、隊員に通達。久城一真を敵性判断、総力を挙げて確保!」




「“鳴り響け……」




 麻美が命令を出すと同時に、一真は既に魔法の詠唱に入る。その魔法は、梨紅から使用を禁止されている魔法……それも、闇に染まった魔力で放つ、悪意の波動。




「魔王の旋律”!」
















「……“福音”」












 それは、2つの巨大な力がぶつかったような衝撃だった。一真の放った魔王の旋律が、同系統、同レベルの物とぶつかり、衝撃だけが辺りに拡がった。




「……梨紅?」




 自分のことを、悲しげに見つめる梨紅に視線を向け、一真は呟いた。




 梨紅の行動に驚いたのは、一真だけでは無かった。魔導隊の面々はもちろんのこと、MBSFメンバーすら、梨紅に視線を集めていた。




「その魔法、使っちゃ駄目って言ったよね? 私」




 今にも泣きだしそうな表情で、声を震わせながら、梨紅は言った。一真が最初に“魔王の旋律”を使った時から、梨紅は再三、使用禁止と言って来たのだ。




「そんなこと言ってる場合じゃ……」




「魔法で麻美さんたちを押さえ付けて、異世界まで行って、また魔法で押さえ付けるつもりなんでしょ?」




 顔をしかめつつ答える一真に被せるように、梨紅は言った。その言葉に、一真は黙り込む。否定も、肯定もしない。




「そんなの、おかしいよ……一真は、そんなことしない」




「なら、このまま魔物たちを見殺しにするってのか? そっちの方がおかしいだろ!」




「止めるにしても、方法が間違ってるって言ってるの!」




 声を荒げる一真に、梨紅の方も負けじと叫ぶ。その目からは既に、涙が溢れ出していた。




「一真なら絶対、魔法で押さえ付けたりなんかしない! どんなに可能性が低くても、争わずに済む方法を探し出すの!」




「お前がオレの何を……って!」




「いい加減にしとけ!」




 2人の間に割って入るように、暖が、一真の後頭部を叩きながら言った。




「お前、今城泣かせて何やってんだ? らしくねぇぞ!」




 腕組みをしながら、軽い口調で、暖が続ける。しかし、眉をひそめ、口を尖らせるその様は、口調とは裏腹に、怒っているように見える。だが、














「……痛ぇな、この野郎」














 一真が呟くと同時に、暖の怒気とは比べ物にならない、凄まじい殺気が溢れ出す。それは紛れも無く、暖に向けられた物だった。一真はその殺気を右の拳に乗せ、振り向き様に、暖に向かって放つ。




「カズ、あんた今、何しようとした?」




 拳は、2人の間に割って入った愛の目の前で止まった。正確には、正義と勇気が一真の右腕を掴むことで、愛に当たる直前で止まったのだ。




「今のは、いつものツッコミじゃ済まされねぇぞ? 一真」




「冗談にしては、笑えないな」




 勇気と正義に言われつつ、一真は愛から視線を反らさず、2人に答えることもしない。




「お兄様、どうして……」




「プチ子、友美を連れて離れなさい」




 愛も、一真から視線を反らさない。一真の目を、漆黒に染まった眼球を睨み続けながら、プチ子と友美をこの場から遠ざけようと指示する。




「でも、お兄様が」




「恋華!」




 プチ子が渋る中、愛は恋華の名を呼んだ。それだけで、全てが伝わったようだ。恋華は無言でプチ子と友美の腕を掴むと、彼女たちを取り囲んでいる魔導隊の前線まで跳躍し、その中に2人を投げ込んだ。




「暖くんも下がって」




「嫌だ!」




 暖を安全圏に逃がすべく、沙織が暖の腕を引くが、暖は腕組みをしたまま仁王立ちし、てこでも動きそうにない。





「我が儘言ってんじゃないわよ」






 動こうとしない暖に、愛は続ける。拳を強く握り、今にも暖を殴りつけそうな雰囲気だ。





「カズのこの目、あんたにも見えてんでしょ?」





「見えてるよ」





 即答する暖に、愛が一真に向ける視線が更に細く、鋭くなる。




「それでも、オレはここにいる!」




「――どうなっても、知らないから」




 親指を突きあげた左手で、自分の胸を指し示す暖に、愛は遂に折れる。暖や沙織を自分の意識から外し、一真にのみ集中する。




「おい、正義? こいつ、一真だと思うか?」




「さぁ、どうだろうな……今城の判断を仰ぎたい所だ」




 勇気と正義は言いながら、互いに視線を交わし、タイミングを計ると、同時に一真の腕から手を離し、後方に跳躍する。




「今城! どうなんだ、実際!」




「一真だよ。だけど、体内の魔力が闇に染まってるの!」




 梨紅の返答を聞き、勇気は顔をしかめる。彼の予想した中で、最も厄介な状況のようだ。




「……ダークサイドに堕ちたってことか!」




「暖、次におかしなこと言ったらぶっ飛ばすから」




 勝手に一人で納得する暖に、愛は冷たく言い放ち、額に青筋を浮かべる。だが実際、暖の発言は的を射ていると、勇気は思っていた。思い当たる節があるのだ。




「けど、魔力の暴走にしては、オレの知ってる前例とは似ても似つかないぞ!」




 勇気の知ってる前例とは、魔力が暴走した後、魔力の持ち主が爆発するという末路だ。持ち主の意識は消し飛び、脳は液体から気体へ変化するなど、悲惨極まりない。異空間管理委員会に実験材料にされた魔物たちも、これと同じ状況にあったと、勇気は睨んでいた。だが、




「一真は意思がある! 暴走しているようには……」










「――もう、構わないだろう」









 勇気が言うと、一真の口角が、微かに上がる。その変化に気付いた愛は、瞬時に、両足の爪先から五角形の紋章を放ち、床を抉る。破片が一真の足に飛ぶ中、愛は紋章を放った反動で後方に飛び、空中で身体を後転させる。





「沙織!」




「“魔龍の咆哮”!」




 愛の言葉を合図に、暖の隣に居た沙織が、一真に向かって咆哮を放つ。衝撃波となった咆哮は、一真に向かって真っすぐに飛んで行くが……




「“鳴り響け、黒の旋律”」




 右手を衝撃波に向け、一真は呟く。すると、一真の身体から微かに、風が放たれた。風を身近に生きる正義だけが、それを感じることが出来る程度の風だ。


 それに、衝撃波が触れる。同時に、衝撃波は霧散したのだが、それだけでは終わらなかった。霧散した衝撃波は風を巻き込みながら再構成され、沙織に向かって放たれた。




「なっ……」




「伏せっ!」




 沙織に衝撃波が迫る中、暖は、その場から動けずにいる沙織の肩を掴み、引き寄せ、床に倒れこむ。




「伏せるんじゃないの? まぁ、良いけど」




 倒れる2人を見ながら、愛は自分に迫る衝撃波を防ぐため、目の前に大きな、六角形の紋章を作り出す。一真のプロテクションのような、物理防御の紋章だ。だが、




「――げっ」



 不協和音が響くと同時に、愛の作った紋章が粉々に砕け散った。




 闇を孕んだ風を纏い、触れた攻撃を反射する魔法、“闇の旋律”。しかも、反射した攻撃には、対象破壊能力が付加されているようだ。






「攻撃に触れた物を破壊する力――あんた、沙織に向かって何てもん使ってんのよ」




「そうだな……直撃していれば、ただでは済まなかっただろうよ」






 事も無げに言う一真に、愛は抑えることなく、溢れるままに殺気を放つ。それに中てられ、沙織や暖、彼らを囲んでいる魔導隊の面々は息を詰まらせる。




「そう、つまり私に殺されたいわけね」






 愛は言いながら、自分の両手の甲と足の甲に、三角形の紋章を展開する。紋章は赤く輝き、熱気を放っており、ぼんやりと揺れて見える。




「紋章術“スペル・ドライブ”」






 その言葉を一真が耳にした瞬間には、愛は既に、一真の背後に達していた。それに一真が気づいた時には、愛は既に、右手を突き出しており……




「ぐっ――!」






 振り向こうとした一真の脇腹を捉えた愛の掌底により、一真の身体が吹き飛んでいく。一真は、程なくしてエントランスの壁に激突し、轟音と共に壁を破壊した。




「今の凉音、勇気より速かったんじゃないか?」






「いやいや、流石にオレの方が速いだろ。これでも、雷の速さで動いてんだ」




 正義に答えながらも、勇気は床に視線を向ける。愛が最初に立っていた位置から、一真の背後だった場所まで、床が焼け焦げているのだ。






「……でもまぁ、人間にあるまじき高速移動だったのは確かだな」




 呟きながら、勇気は、一真が激突した壁に視線を向ける。生身の人間なら、確実に絶命に至るであろう攻撃だが、一真なら当然、何かしらの対処をしているはずだ。






「――紋章術、異世界ワノグロッサの技術か」




壁の瓦礫を崩しながら、一真が姿を現した。勇気の予想通り、傷ついた様子は見られない。






「そんな名前だったかしら? カズが私を、無理矢理連れて行った世界」




 言いながら、愛は一真を見据える。


 紋章術“スペル・ドライブ”とは、一真の言う通り、異世界であるワノグロッサにおける技術だ。彼の世界では、物を温めること、物を冷やすことなどを始めとした、あらゆる日常生活においてこの技術を使用している。



 一真はかつて、彼の世界に愛を連れて行き、この技術を習得させた。最初は嫌な顔をしていた愛だったが、元々の判子使いとしての経験もあり、数日で基礎を習得。地球に帰ってからは、一真の助言を参考に、生活や戦闘に応用できるようにアレンジしてきた。そして、今に至るのだ。






「カズが、判子使いだった私を紋章術士“スペル・ドライバー”にした。その意図は、未だにわかんないけどねぇ」




 言いながら、愛は腕組みをし、一真を睨みつけ、目を見開く。






「カズはその時、私を“抑止力”だって言った。その意図だけは今、なんとなくわかったわ」




 床を焦がしながら、愛は一真に向かって駆けて行き、右拳を構える。






「クソ野郎な“あんた”を、ぶちのめせってことよね!」




 そう言い放つと、愛は一真の顔に向かって、真っ直ぐに拳を突き出した。





「抑止力……的確な言葉を使ったものだ」






 自分の顔に迫る拳を見つめながら、一真は呟く。それと同時、1秒も違わず、愛の右拳が一真の顔を捉えたはずだった。






「ちっ――」






 突然、一真の姿が消えたのだ。愛は勢いを殺せず、体勢を崩し、瓦礫の山に倒れ込みそうになる。だが咄嗟に、紋章によって強化された手で瓦礫に手を着き、片手で身体を支えると、そのまま足を振り、愛は豪快に壁を蹴り壊した。






「詠唱略、“フォスタ・クオ・ダール=ピアード”」






 愛は、一真が消えた瞬間から、攻撃が来ることを予想していた。だが、避けることは難しいと判断したのだろう。だから、新たな瓦礫を生み出し、少しでも身を護ろうとした。結果としてその予想は当たり、短い詠唱が聞こえた。一真は横に跳ぶことで攻撃を回避しており、愛がいるであろう場所から視線を反らすことなく、少し無理な体勢ながらも、漆黒の槍を連続で放ったのだ。


 漆黒の魔法陣から、10秒足らずの間に数十本の槍が放たれる。いくら瓦礫で身を護ると言っても、限度がある。流石に、直撃は免れないはずだ。










「……凉音、1人で突っ込んじゃだめだよ」











 魔法陣から槍の発射が止み、砂煙が辺りに立ち込める中、その声が響いた。






「うっさいわね、頭に血が上ったのよ」






「落ち着いた?」




「それなりにね」






 砂煙が薄れ、愛と話す声の主が姿を現す。






「助かったわ、豊。ちび達もね」






 声の主は、両肩と頭にカーバンクルを乗せた豊だった。風、火、水の精霊である雅、溶、潜の3匹の力で結界を張り、一真の攻撃を防いだのだ。






「……今の一真、普通じゃないよ」






「言われなくても、わかってるわよ」






 豊に答えながら、愛は瓦礫から立ち上がり、豊に向かって歩き出す。






「あんた、何処に居たの? ずっと姿が見えなかったけど」






「真上」






 豊に言われ、愛はそのまま真上に視線を向ける。すると、体育館のような2階が目に入った。






「……上で何してたの?」






「寝てた」






「ずっと?」






「うん、一真がぶつかった揺れで起きた」






 その返答に、愛は顔をしかめる。確かに、睡眠時間が少ないような話は朝方にした覚えがあった。だが、皆が調べて回る中、1人眠っていられるものだろうか。






「あんたって、自由よね」






 豊に言いながら、返答は待たず、愛は一真に視線を戻す。一真は既に体勢を立て直しており、よく見ると、身体が緋色に輝いている。どうやら、肉体強化は済ませているようだ。






「ふん、ただ黙って待ってる程、優しく無いわけね。ますます、一真とは程遠いわ」






「……君は、誰?」






 真っ直ぐに一真を見据え、豊が確信を突く。一真の身体でありながら、一真では無い。それは、誰もがわかっていた。一真は、仲間に本気で手を上げたり、危険な魔法を使ったり、ましてや追い打ちをかけるなど、決してしない。






「――黒“ナイトメア”」






 一真が、ゆっくりと答える。彼の口から出た名前に、梨紅だけが反応を示した。その名は、彼女がよく知る名前――彼女自身であり、そして、彼自身でもある名前。






「ふっ……ははははははははははははははははははは!」






 一真が笑い始めると、同時に、一真の身体から、漆黒のもやが溢れ出した。





 一真の身体の、穴という穴から、闇が溢れ出す。それは、魔界のそれよりも濃く、暗い、魔力だった。






「何、あれ……」






 構えていた杖を下ろし、右手で口元を押さえながら、麻美が呟く。あおいやハウル、他の魔導師たちも、その光景に動揺が隠せずに居た。その禍々しさ、闇の濃さ、どれを取っても、異常な事態だ。






「――沙織ちゃん?」






 皆が一真に目を奪われる中、暖だけが、他の異変に気付く。




沙織の様子が、おかしいのだ。小刻みに震える身体、目は紅色に明滅し、額には尋常じゃない量の汗が見える。






「今城! 沙織ちゃんが……」






 暖に呼ばれてようやく、梨紅は沙織の異変に気づき、2人に駆け寄る。それに続き、恋華と勇気もやってきた。






「一真の魔力に中てられてる……暖くん、沙織をここから離れさせて」






「――大丈夫よ、梨紅」






 自分の額に触れながら言う梨紅に、沙織は弱々しく呟く。暖の腕に支えられながら、少しずつ呼吸を整えることで、震えと発汗は治まってきたように見える。






「私よりも、久城くんを……早くしないと、このままじゃ――」






 沙織の言葉に、梨紅、勇気、恋華、そして暖も、一真に視線を向ける。依然として、魔力の放出は続いているのだ。このままでは直に、一真の身体から全ての魔力が無くなってしまう。




 魔力の枯渇……それは即ち、一真の死だ。






「ナイトメア? 捻りの無い名前ね、中学生でももう少しまともな名前をつけるわよ」






「ナイトメア・ベルグ・ラグナディン……それが、オレの名前だ」






 黒いもやを見据えながら、愛が言う。だが、それに答える声は、一真の口から出たものではなかった。黒いもやから、聞こえてくるのだ。






「――もっとも、正確に言えばオレは、“ナイトメアの魔力”ということになるけどな」






「何それ? 一真の魔力じゃないわけ?」






 ナイトメアに向かって、愛が首を傾げる。それに対して答えようとしているのか、空中を漂っていた魔力が集まり、何かの形へと変化していく。






「そもそも、“久城一真の魔力”なんてものは存在しない。魔力は全て、久城一真の前世である魔王、ナイトメアから引き継がれたに過ぎない。いわば、借り物なんだ」






 ナイトメアの説明に、梨紅はかつて、一真がエリーとのやりとりを話してくれたことを思い出していた。












(オレの体に流れてるのが、ナイトの魔力だってのはわかる……でも別に、ナイトに魔力を借りてる訳じゃない。前はナイトの魔力でも、今はオレの魔力だ)




(自分を蝕む力が、君自身の力だと言うの?)










 一真自身を蝕む力――エリーは一真に、そう言った。








「魔王から引き継がれた“ヴィルフェイラ-雫-”は、使い続けることで円熟し、所持者を暴走させる」






 ナイトメアは話を続けながら、少しずつ形を整えていく。魔力は今や人型になり、地面に降り立とうとしていた。






「本来、暴走すると魔力の量が急激に増加し、人間の身体を崩壊させ、星の魔力として還元されるという一定の流れがある。だが、久城一真は数多の異世界を回り、それらの世界の魔力を取り込んだ。それによって、ヴィルフェイラの円熟が早まり、かつ、魔力が変異を引き起こした」






 魔力は地面に触れると同時に、靴に変わり、足を形成し、胴に至り、両腕が生まれ、顔と髪が作られてなお、魔力は漂い続けている。






「その変異で生まれたのが、意思――つまり、オレだ」






 緋色の前髪、挑戦的な目。久城一真の姿を象り、黒“ナイトメア”が不敵に笑った。





「一真の姿になるとは、どういうつもりだ?」






 中指の腹で眼鏡を押し上げながら、正義が問う。その表情からは、彼にしては珍しく、怒りが読み取れた。正義の言葉に応えるように、愛は両手の指を1本ずつ鳴らし、勇気は自分の周りで電気を弾けさせ、音を鳴らす。2人とも、相当に頭にきているようで、正義と同様に、今にも飛び掛からんばかりの形相だ。






「どういうつもりも何も、16年も収まっていた身体だからな。少なからず、この形状に慣れているんだ」






 言いながら、意思を得た魔力――黒“ナイトメア”は、感覚を確かめるように、腕や足を動かす。






「とはいえ、人間の身体なんて、魔力を入れておく器みたいなもんだけどな。動くとなると、どうにも遅い」






「……あんたの感想なんざ、聞いてないわよ」






 勝手に喋り続けるナイトメアに、愛が冷たく言い放つ。だが、彼はそれに答えることなく、背後の一真に振り返る。






「魔力で作った身体の方が、何倍も速く動ける。骨も、肉も、全て魔力――人間の身体なんか早々に捨ててれば、オレに意識を乗っ取られることも無かったろうに」






「……何?」






 ナイトメアの発言に、正義たちは首を傾げる。ナイトメアは彼らに視線を向け、その様を見ると、薄く嘲笑する。






「近くにいたお前らが気付かないんだから、オレの成りすましもなかなかのもんだろ?」






 その言葉に、梨紅たち8人の表情が驚愕に染まる。彼の言うことが正しいなら、一真はもう、何か月も前から少しずつ、意識を乗っ取られつつあったということだ。






「でもまぁ、大晦日に麻美に会った時は、流石にバレたかと思ったけどな」




「えっ……」






 予想もしていなかったタイミングで名前を呼ばれ、麻美は一瞬、思考が止まる。だが、すぐに頭を働かせ、大晦日の記憶を引っ張り出す。




 魔物を捕えた麻美は、夜空を飛行し、ここに向かっていた。その最中、上空から飛んでくる一真から逃走を図った。そして……






「――冷たい魔力?」






「あぁ、あの時点で闇に染まってたんだけど、繕うのが間に合わなくてさ」






 昔の失敗談を語るように、ナイトメアは笑いながら続ける。






「ヤバいかな? って思ったけど、まぁ何とかここまで来られたわけだ」






 満足気に頷くと、ナイトメアは再び、一真に視線を向ける。心なしか、魔力が出てくる量が減って来ているように思える。






「さて、そろそろ出尽くすか」






「出尽くす……? カズ君の身体から、魔力が?」






 恋華の言葉に、ナイトメアは頷いて見せる。






「そう、魔力――久城一真の、命の源」






 その言葉に、愛、正義、勇気の3人が動いた。それぞれがもてる全力で駆け、ナイトメアに一撃を入れようと迫る。だが……






「そうだ、お前らに感謝しなきゃいけないこともあったんだっけ」






 言いながら、ナイトメアは左手で指を鳴らす。すると、愛たち3人の進行方向に、黒い穴が現れた。それを前に、3人は足を止め、距離を取る。






「お前らのおかげで、良い駒が集まった」






 黒い穴は少しずつ拡がっていき、どの穴からも獣の唸り声が聞こえてくる。3人が眉をひそめる中、最初に気付いたのは沙織だった。






「……私たちが保護して、魔界に帰した魔物たち」






「正確に言えば、魔王の旋律で“洗脳”して、異空間に“保管”しておいた魔物たちだけどな」






 ナイトメアが言う中、3つの穴から順番に、大量の魔物たちが姿を現した。





 魔物たちは、ナイトメアと一真を護るように整列し、正義たちとの間で壁になる。






「お前らにとっては雑魚だろうが、時間稼ぎにはなるだろ」






「時間稼ぎ?」






「オレも、馬鹿じゃないんでな。お前ら全員を相手に出来るとは思ってねぇよ」






 勇気に答えると、ナイトメアは右手を真上に伸ばす。すると、空中を漂っていた魔力が集まり、右手を介してナイトメアの中に入り始める。






「そうだな――魔界にでも行って、人間界に攻め入る準備でもしようか。久城一真は魔力こそ借り物だったけど、魔法知識に関してはトップクラスだ。割の良い洗脳魔法でも作って、その辺の魔物をいじってやれば、いくらでも駒は作れる」






「身体以外、全部奪っていくってわけね……真正の屑が」






「その屑に全て奪われて、お前らの大好きなお仲間は、ゴミ以下に成り下がるわけだな」






 ナイトメアの発言を聞き、愛と勇気に、我慢の限界が訪れた。2人は無言で魔物の群れに突っ込み、勇気は雷を纏わせた三叉の矛を振り回す。愛は長髪を振り回しながら、魔物を殴り、蹴り、吹き飛ばす。だが、完全に密着し合っている魔物に阻まれ、ナイトメアと一真には辿りつけない。






「ほら、急げよ! 早くしないと、抜け殻になるぜ?」






 暴れる2人を楽しそうに眺めながら、ナイトメアは魔力を取り込み続ける。一真の身体からは既に、微かにしか魔力が放出されていない。時間が無いのは、目に見えていた。だが……














「――ねぇ、あなた」














 突如響いたその言葉に、愛も、勇気も、そしてナイトメアでさえ、動きを止める。その空間に存在する全員の視線が、声の主――梨紅に向けられた。






「……随分と静かだったじゃねぇか、片割れが死にそうだってのに」






 ナイトメアは右手を下ろし、梨紅に向き直る。対する梨紅は、ナイトメアに向かって歩きながら、話を続ける。






「あなたは、ナイトメアの魔力が意思を持った存在……ってことは、ナイト本人の意思とは無関係なのよね?」






「あぁ、ナイトメアとの繋がりは無い。今は、お前の中に居るんだったか?」






「いないわ。ナイトもエリーも、閻魔界で仕事中」






「それは重ね重ね運が良いな。彼らがこいつの中に居たら、意思が芽生えた時点で存在を消されていたかもしれない」






 ナイトメアが汗を拭うような動作をし、一瞬だけ梨紅から視線が外れる。彼が次に梨紅を見た時、梨紅の手には退魔刀の華颶夜が握られていた。






「あなたが逃げるのは勝手だけど、一真も連れて行くの?」






「もちろん。魔力枯渇で死にかけても、代替の魔力を注げば命は繋げるからな」






 梨紅の脳裏には、一真がかつて友美を治療し、魔力枯渇状態で自室に帰って来た時の様子が蘇っていた。どうやら、ナイトメアもその記憶を有しているらしい。






「久城一真の存在は、オレにとって邪魔でしかない。現状、こいつの頭にある知識だけでも、十分な脅威だからな」






 言いながら、ナイトメアは左目を閉じ、左手で撫でる。それだけの動作だったが、正義たちの受けた衝撃は、計り知れなかった。






「こいつが無くても……な」






 ナイトメアが漆黒に染まった左目を開くと、そこには、紫色に輝く全知の眼-ヴィアン・ト・エニス-が現れていたのだ。





 ヴィアン・ト・エニスを通して、ナイトメアは梨紅たちを見る。彼の目には、梨紅たちの身体能力、魔力量などを数値化した情報や、予想される動きなどが、個別に表示されていた。






「なるほど、全知の名に恥じない情報量だな。だが……」






 ナイトメアは呟きながら、暖に視線を集中させる。視線が合った暖は首を傾げつつ、眉をひそめる。






「川島暖。貴ノ葉高校1年、一般人。総合身体能力B、魔力無し、退魔力無し、霊力微量――犬や猫と同レベルだな」







「酷すぎるだろ! おい!」






 暖に言うだけ言って、しかしナイトメアは、釈然としない様子で眉をひそめる。






「普通以下の能力にも関わらず、久城一真が懸念する存在……か」







言いながら、ナイトメアは暖に向かって右手を伸ばす。彼に向ける視線は、冷ややかな物に変質しており、微かに殺意を内包していた。






「始末しておくに、越したことは無いか」






「へぇ、面白そうな話になってるじゃない」






 ナイトメアの行動と発言に、愛は口角を上げ、口元だけで笑って見せる。もちろん、彼に向ける視線はするどいままだ。






「マサ! 恋華!」






「言われなくても」






「させるわけ、無いよ!」






 愛が声をかけるまでも無く、正義と恋華は2人揃って、暖を護る体勢になる。




「え? ちょっ、何でオレが狙われて?」






「さぁ? わからないけど」






 狼狽える暖を横目に、いつの間にか1人で立てるようになった沙織は、大鎌を取り出し、暖とナイトメアの間に割って入る。






「久城くんに思う所があったなら、八つ裂きにさせるわけにはいかないわ」






「いや、始末するとは言ってたけど、八つ裂きにとは言ってないよ? 沙織ちゃん」






 沙織の背中に苦笑いを向けながら、暖が呟く。その様子を見たナイトメアは、目を細め、伸ばしていた右手を下ろす。






「まぁ良い、今は魔力を集めるのが先――えっ?」










「……あ、バレた」










 一真に視線を戻したナイトメアは、あまりの出来事に一瞬、目を疑う。全知の眼を持ってしても、信じ難い光景が、そこにあった。






「もうちょい、暖のこと狙ってても良かったんだぜ?」






「――久城一真!?」






 完全に意識を乗っ取っていたはずの一真が、緋色の魔石“クロス”を手に、身構えていたのだ。






「どうも、オレのそっくりさん。いや、自称ナイトメア? 確かに凉音の言う通り、自分で名乗るにはかなり痛い名前だと思うぞ」






 不敵に笑う一真と、狼狽えるナイトメア。全く同じ顔、同じ声の2人が向き合う状況は、誰が見ても異質でしか無かった。






「一真! 大丈夫なの?」






「いや、ちょっとダメだな!」






 心配そうに叫ぶ梨紅に、一真は即答する。しかし、あまりにも明るく言い放たれた後ろ向きな発言に、その場の全員が反応に困る。






「今のオレって、身体に残った意識の残りカスみたいなもんでさ? 魔力もほとんど残ってないし、すぐに吸収されて空になって」






 そこまで一息で伝え、一真は息を吸い、仲間たちの顔を見回しながら、微笑み、言った。

















「……そしたらオレ、死ぬから! 後は、任せた!」

















 その発言、その表情からは、微塵も後悔を感じさせず、一真は言い切る。自分の死を受け入れたその物言いに、愛が、勇気が、正義が……恋華が、沙織が、そして梨紅が、顔色を青くする。





 梨紅の目から涙が溢れ、頬を伝う。


 かつて、異世界に旅立った時よりも遠く……もう、手の届かない所に行ってしまう感覚に、梨紅の身体が震える。




「――ふざけたこと言ってんじゃないわよ!」




 愛の怒号が轟く。その表情は、青く染まっていた時と打って変わって、怒りと悲しみに満ちていた。だが、一真は愛の方を向くことなく、ナイトメアに視線を戻す。




「さて、自称ナイトメア……いや、そう呼ぶのはナイトに申し訳ないか」




 言いながら、一真はナイトメアの身体を爪先から頭まで観察する。顔こそ同じだが、黒い靴、黒いズボンに、中は黒のタンクトップ。上はかなり独特で、左袖が無く、右は長袖、黒地に赤のラインで装飾されていた。




「――真っ黒だな、上から下まで」




 眉をひそめながら、一真は呟く。しばらく考えた後、一真は目の前の男を指さし、告げる。




「お前の名前、黒な」




「……今すぐ、消えろ」




 額に青筋を浮かべながら、ナイトメアこと黒は、一真に右手を向ける。すると、




「凉音!」




 先ほどの愛の怒号と同等か、それ以上の声量で、一真が叫ぶ。それを受けて、愛は言葉を発することなく、一真の言葉を待つ。




「お前の能力、フルに使って皆を護ってくれ」




「何言って……」




「正義! 山中!」




 愛の返答を遮り、一真は正義と沙織に向き直る。




「2人は状況を見て、皆に指示を出してくれ」




「お前……」




「久城くん?」




 2人は――いや、MBSFのメンバーは、気付いていた。これは、一真からの最後のメッセージなのだと。




「勇気! 豊! 重野!」




「ふざけんなよ……」




「やめて、カズくん……」




「戦闘と補助、臨機応変に頼むな」




 勇気は、今にも泣きそうな顔で一真を見つめ、恋華は既に泣き出し、口を押えている。豊だけが、真剣な表情のまま、一真に頷いて見せる。




「魔導隊! 気合入れろ!」




 ナイトメアを前に委縮していた麻美たちにも喝を入れ、一真は梨紅に向き直り、表情を和らげる。




「梨紅、自分を信じろ」




「……うん」




 一真の言葉に、梨紅は静かに頷く。交わす言葉は少ないが、梨紅の胸には確かに、響く物があった。




「さて――」




「オレは!? 一真! オレオレ!」




 ただ1人、声を掛けられることの無かった暖は、思わず騒ぎ出す。その様子を横目に、一真は手にしていた魔石クロスを指で弾き、コインのように回転させる。落下してきたクロスを右手の中指で右側に押しやり、空気の壁に押し付ける。




「クロス! フォルム=チェンジ」




『モード:ディバイン・ブレイカー』




 一真の指先で、クロスが時計回りに回転を始める。一真の右手から溢れ出した魔力が、その回転に集まり、形状を変えていく。


 形状が決まり、緋色の球体を中心に構成された白い銃――魔銃ディバイン・ブレイカーとなったクロスの回転は止まり、一真はそれを掴む。




「暖!」




 暖の名前を叫びながら、一真は振りかぶり、銃を放り投げる。












「頼んだぞ、親友」












「……か、一真ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




 暖が叫ぶ中、その手に銃が収まる。それと同時に、一真の身体が膝から崩れ落ちる。




 地に膝を着いた一真は、ゆっくりと目を閉じながら、しかし口元は微笑んだまま、身体を前のめりに倒し始める。




 最後に、一真の身体に残された魔力……黒に吸収される前に、一真はそれを使い、クロスの形状を変え、暖に託したのだ。




 全員の視線が、一真に集まる。その目に映る光景、現実、その全てを否定したくても、出来ない。絶望と悲しみ……彼らの目に宿るそれらを感じながら、




一真は自ら、命を閉じた。








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