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魔法使いの苦悩-ADVENT-~闇の聖女と光の魔王~  作者: 黒緋クロア
第二章 Wizards daily[魔法使いの日常]
19/32

桃龍の社。

「おい一真、何処に行くんだよ?」




 昇降口で靴を履き替え、教室とは反対方向に向かう一真に、暖が言った。




「部室だよ、バッグとか置きっぱなんだ」




「あぁ……お前、異世界に行ってたんだったな」




「先に教室行っててもいいぞ?」




「いやいや、1人で教室行っても暇だから」




 そう言って、暖は一真の後ろに付いて行く。




「てか、何で昨日来た時に持って帰らねぇんだよ」




「そんなもん、持って帰んのダルかったからに決まってんだろ」




「あぁ……忘れたんじゃなく、置いて行ったんだな」




「いっそのこと置きっぱで良くね? 家で勉強とかしないし」




「でも弁当が腐るだろ」




 暖の言葉を聞き、一真が不意に立ち止まる。




「……え? お前、まさか?」




「……いや、いや! 大丈夫、たしか弁当箱だけ梨紅が持って帰ってくれた……はず」




「ビックリさせんなよ! 部室行ったら腐敗臭なんて洒落にならねぇぞ!」




「そこまで大事にゃならねぇだろ」




 2人は徒歩を再開しつつ、額の汗を拭った。




 部室の前に到着すると、一真は扉に手を掛けようとする。しかし、不意にその動きを止めた。




「どうした? 腐敗臭か?」




 暖が冗談混じりに言う中、一真は真剣な声色で、小声で呟く。




「誰か中に居る……暖、後ろに下がれ」




「え!? ま、マジかよ!」




 暖は言われるがまま、一真の後ろに下がる。一真はそれを確認し、改めて扉に手を掛け、一気に開く。




「よっ」




 開くと同時に、一真は横に飛び退いた。




「うらぁぁぁぁぁぁ!」




「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」




 誰かの気合いの入った声と、顔を殴られた暖の絶叫が廊下に響いた。




「……あれ? 暖じゃない、何して……わっ!」




「何してんだよ、凉音」




 一真は、暖に馬乗りになる愛の襟を掴み、持ち上げる。




「カズ!? ちょっ……下ろせコラァァァァ!」




「口悪すぎんだろ、お前」




 一真は愛を下ろし、倒れている暖に近寄る。




「大丈夫か?」




「……お前、中に誰が居るか知ってたろ」




「ナンノコトデスカ?」




「知ってただろお前!」




「あれ? カズくんと暖くん?」




 暖が勢い良く起き上がると、部室から恋華が顔を出した。




「重野も居たのか、お前ら何して……」




「丁度良かった! カズくん、ちょっと手伝って!」




 そう言って、恋華は中に首を引っ込めた。




 一真が部室に入ると、恋華は自分の定位置に座り、一真を手招きする。




「何しろって?」




「これ、見てほしいの」




 そう言って恋華は、目の前の机に置いてあった紙を、一真の定位置へスライドさせる。




 一真は首を傾げながらも、窓際の定位置に座り、恋華から渡された紙を持ち上げる。




「……何語?」




 紙に書かれていたのは、日本語でも英語でも無い、明らかに異国の文字だった。




「地の民の言葉らしいんだけど、読めなくて……カズくん、読めない?」




「いやいや、考古学者じゃねぇんだから、読めるはず……?」




 一真が否定しようとした、その時だ。一真の右目が、金色に変化する。




「全知の眼か……」




 一真が呟くと、金色の眼に緋色の紋様が現れた。




「どう?」




「……"守護龍の加護を得た、我らが血筋の者よ、汝に我らが秘術を授ける"」




「はぅあ! 読めたの!?」




 文を読み上げる一真に、恋華は驚愕する。




「あぁ、何かその……"秘術"らしき呪文も書いてある」




「やった! ねぇ、なんて呪文?」




 恋華は言いながら、席から立ち上がる。




「えっと……"エフェメルガ"だな」




「よーし……」




 恋華は肩を回し、両手を窓の外に突き出した。




「"エフェメルガ"!」




 恋華が呪文を唱える。しかし……




「何も起きないな」




「えー! 何で?」




 首を傾げる恋華を見て、一真は再び、紙に視線を向ける。




「……あぁ、重野悪い、これ魔法だわ」




 一真はそう言って、席から立ち上がる。窓から離れ、部室の中心で立ち止まると、窓側の壁に向かって右手を伸ばす。




「"エフェメルガ"!」




 一真が唱えると、一真の右手から熱風が放たれた。




『熱い!』




 一真と恋華が同時に叫ぶ。熱風の当たった壁は円形に溶けてしまい、行き場を失った熱気が一瞬、部室にこもったのだ。




「……熱風を放つ魔法なんだけど、今のは多分、マグマ並の熱気だったな」




「何で!? 何で秘術なのに私が使えないの!」




「さぁ……てか重野、これは何処で?」




 手元の紙をヒラヒラと揺らしながら、一真は恋華に問いかけた。





「夢にね、出てきたの」




「誰が?」




「クルラ=エステル」




「……悪い、誰?」




 恋華が名前を言っても、一真には顔が浮かんで来なかった。




「えっと、地の民の祖?」




「あぁ、重野の御先祖様的な……」




 恋華の説明で一真は、昨日の恋華と桃龍のやり取りを思い出した。




「その、クルラ=エステルが、夢に出てきたと」




「うん、エステルは私にそっくりでね、だけど顔に刺青みたいな紋様が入ってたから、別人だってわかったの」




「それで? そいつは何て……」




「熱っ! 何この熱気!」




 一真が恋華に聞こうとするが、部室に入って来た愛に阻まれた。




「ホントだ、熱ぃ……うぉ! 壁に穴空いてるし」




「お前ら、廊下で何してたんだよ」




「ん、何かしっくり来なくて……」




 暖も愛に続いて入って来る。一真が言うと、愛は眉をひそめ、腕組みをする。




「何の話?」




「私が暖を何て呼ぶか」




「……いや、川島だろ」




「やっぱり川島よね……暖ー! より、川島ぁぁぁぁぁぁ! の方が迫力あるし」




「待って、そのセリフの後、間違いなくオレがぶっ飛ばされるじゃん」




「他にいつ、私が川島を呼ぶのよ? あれ……何か違和感」




 悩み続ける愛を他所に、一真は恋華に向き直る。




「んで? エステルは何て?」




「えっと……じゃあ、最初から説明するね?」




 そう前置きし、恋華は語り始めた。
















 夢の中の恋華は、荒野に倒れていた。枯れ細った草の中、意識がはっきりすると、恋華は身体を起こした。




 音は無く、ただただ無限に広がる荒野と、漆黒の空。




 淋しい景色の中、唐突に……それは現れた。桃色の龍と、翠色の龍……そして、正義と恋華によく似た人間。




 恋華には何故か、わかった。恋華に似ている女性は、地の民の祖、クルラ=エステルであると。




 そして、2人の戦いが今正に、始まろうとしていることも……













「それで、目が醒めたらこの紙が私の手に……」




「なるほど……」




 一真は恋華の話を聞き終えると、恋華の持って来た紙に視線を向ける。




「……あれ? 裏にも何か書いてあるぞ」




 一真は言うと、改めて紙を持ち直す。




「……地図っぽいな」




 それは、桃色の文字で描かれた地図だった。





 一真は地図を、恋華に手渡した。地図を見た恋華は、しばらく考え、一真に視線を戻す。




「これ、私の家の間取図だよ」




「間取図? なんで間取図が……」




 一真は首を傾げる。すると、恋華は再び地図に視線を移し、首を傾げる。




「……星印が描いてある」




「マジか、一般的に言えばそこに何かあるんだろうな」




「ねぇ恋華、私にも見せてよ」




 恋華を見上げながら、愛が言った。




「はい、でもこの印の所って……」




 恋華が呟く中、間取図を受け取った愛は、星印を指さし……




「畳の部屋の真ん中ね」




 恋華の代わりに答えた。




「なら、畳の下にでも何かあるんじゃねぇの?」




 一真が言うと、恋華は腰に手をあて胸を張り、高々と宣言する。




「じゃあ放課後、このメンバーだけで私の家ね!」




『OK!』




「待て」




 暖と愛が即答する中、一真が顔をしかめる。




「悪い、流れに乗り遅れた……何でオレたちまで? って質問はこの際省くけど、何故に4人だけ?」




「うち、狭いもん」




 恋華が即答する。ただの人数制限だった。




「梨紅ちゃんには私から言っとくね」




「いやいや、まだ行くって言ってな……」




「よっしゃ! チーム・ダークの旗揚げだ!」




「ちょっと黙ってろお前!」




 一真の言葉を遮る暖に、一真は言った。




「てか、何でダークなのよ?」




「よくぞ聞いてくれた!」




 首を傾げる愛に、暖は胸を張りながら言う。




「暖のD! 愛のA! 恋華のR 一真のK! 繋げてDARKさ!」




『確かに!』




 驚愕する女性陣を他所に、一真は頭を抱える。




「これは、チームを作る運命だったとしか……」




『確実に偶然だろ』




「何にしても! チーム・ダークは放課後にうちに集合でーす!」




 暖に向かって、一真と愛が口を揃える中、恋華はノリノリだった。




 こうして、4人の異質チームが編成された。















 恋華の家は、一真の通学路の途中を曲がり、しばらく歩いた所にあった。




 MBSFメンバーには昼休みのうちに、今日の活動は休みであることを伝えてあった。だが……




「……家に帰るのが恐い」




 一真は一人、項垂れていた。





「大丈夫だよ、梨紅ちゃん笑ってたし」




 頭を抱える一真に、恋華は満面の笑みで答える。




「笑ってたからこそ恐いんだよ、あいつは笑顔でオレを睨んでた」




「それ、凄くね? 見分け付かないじゃん」




 一真の言葉に、暖が驚く。しかし一真は、それに首を振る。




「慣れればわかる。女の子はみんな出来るからな」




「マジかよ! じゃあ、2人も出来んの?」




 暖は、前に居る恋華と愛に問う。すると、2人は同時に暖を振り向き、満面の笑みで暖を見つめた。




「……う」




 暖は思わず後退りし、一真に視線を向ける。




「これが所謂、一種の殺気だな……凉音は殺気がわかりやすいから、暖でもわかるだろ」




「失礼ね、人を野生の獣みたいな言い方すんじゃないわよ」




 口を尖らせながら、愛が言った。




「蛇に睨まれた蛙か……」




「正にそれだな、てか重野、そろそろ入ろうぜ?」




 呟く暖に言うと、一真は恋華に言った。












「ただいまー」




『お邪魔します』




 恋華を筆頭に、重野家に入る一真、暖、愛。靴を脱ぎながら、一真は不意に、父親の言葉を思い出した。




(グラビテス……? じゃあ君、深鈴(ミレイ)の娘さん?)




「……そういえば、うちの父さんと重野のお母さん、知り合いだったよな?」




「あ、そうだったね……お母さーん!」




 靴を脱ぎ終えた恋華は、リビングのドアを開きながら、母を呼んだ。




「あら、お帰り恋華」




「今日はね、友達を連れて来たの」




「正義くんと愛ちゃんじゃないの? 珍しいわ……ね?」




 会話だけが聞こえる中、不意に恋華の母、深鈴の言葉が詰まる。同時に、ドアから顔だけ出していた恋華を押し退け、深鈴が顔を出した。




「……一真くん?」




「え? あ、はい、一真です……初めまして」




 一真が言う中、深鈴は一真に駆け寄り、抱き着いた。




「大きいー! 最後に抱っこしたのは凄い小さかったのに!」




「ちょっ、深鈴さん!?」




 突然の出来事に、一真は困惑する。深鈴は、恋華をそのまま大人にしたような、お母さんだった。





「いやぁ! ごめんなさいね? つい、テンション上がっちゃって」




「いえいえ、大丈夫です(テンション上がると抱き着くのか、この人は……)」




 リビングに通され、お茶をご馳走になりつつ、一真は苦笑気味に微笑む。




 テーブルには深鈴、恋華、一真、愛、暖が座っている。一真たちは畳の部屋に行く前に、深鈴に捕まったのだ。




「でも、本当に懐かしいわ……美由希ちゃんには商店街でよく会うんだけどね」




「母さんとも知り合いなんですか?」




「知り合いも何も、私が真人と美由希ちゃんのキューピッドだもの」




「マジすか……」




 予想外に両親の馴れ初めを聞くはめになり、一真は苦笑を隠せずにいた。




「私と正樹、真人、幸太郎は中学からの同級生でね? 華子ちゃんと美由希ちゃん、聡ちゃんと礼ちゃんは高校で一緒になったの」




「華子さんは梨紅の母さんだな……聡ちゃんと礼ちゃんって?」




「豊のお父さんと、うちのお母さん」




「マジかよ!」




 愛の解説に、一真が驚愕する。




「すげぇな……やっぱ、能力とか持ってると互いを引き寄せんのかね?」




「いや、うちの母さんも梨紅の母さんも普通の人間だぞ?」




 暖の呟きに、一真は首を傾げる。




「でも、その8人だけがいつも一緒だったわけじゃないのよ?」




「そろそろ、暖の両親が出てくるかもな」




「いやいやいや、うちは普通に普通な家庭だぞ?」




 一真と暖が言う中、深鈴はにこやかに答えた。




「例えば、男気の塊みたいな珊瑚くん……さんちゃんって呼んでたけど」




「はい、うちの親父です」




『ウソォ!?』




 一真と愛が同時に叫び、そのまま大爆笑を始めた。




「すげぇな! 親同士みんな知り合いとか!」




「さんちゃん、今は漁師でしょ? たまにお魚もらってるのよ?」




「川島のお父さん、漁師なの!? もしかしたらうちももらってるかも!」




 あまりにも異常で、その異常さが笑いを呼び、おかしいと思う暇も無く、ただただ笑い声がリビングに響いていた。





「……この部屋か」




 一真たち4人は、重野家の1階奥にある部屋の前に立っていた。




 深鈴が夕飯の買い物に出かけた隙に、行動を開始したのだ。




「どう? カズくん、何か感じる?」




「外からじゃわかんないな……中に入れてくれ」




 一真が言うと、恋華は頷き、部屋の扉を開く。




 中は6畳の畳部屋だった。あるのは襖だけの、質素な部屋だ。




「……少しだけ、違和感がある」




「違和感?」




 首を傾げる愛に視線を向け、一真は続ける。




「魔力とか退魔力に近い、何かが……」




 一真がそこまで言うと、急に扉が閉まった。その音に、恋華が身体を震わせる。




「暖、もっと静かに閉めろよ、重野びびってんだろ?」




「はぅあ! びびってないよ! ビックリしただけだもん!」




 一真と恋華がふざける中、暖が重々しく言った。




「……オレ、閉めて無いぞ? それに……」




 暖は扉を開けようと試みが……




「開かない」




 それを聞いた一真たち3人は、直ぐに身構える。




「……違和感がでかくなった」




「……ヘックチ!」




 一真が呟くと、愛がくしゃみをする。全員が愛に視線を向ける中、愛は辺りを見回しながら、寒そうに身をすぼめる。




「……何か、寒くね?」




 決定的だったのは、暖のこの一言だ。内容では無い、この発言をした暖の口から、白い息が漏れていたのだ。




 季節は秋……気温はまだ高い。




「クロス! ライフェクト全開だ!」




「了解」




 一真はワイシャツの胸ポケットから魔石クロスを取り出し、空中に投げる。クロスは緋色に輝くと、4人を包み込む幕を作り出す。




「全員、部屋の中央に集まって、しゃがんでくれ」




 一真の指示に従い、3人は部屋の中央で、姿勢を低くする。




「クロス、範囲縮小……4人を護れる最小限に」




 一真の言葉に、クロスはライフェクトの範囲を狭める。魔力の消費を抑えるためだ。




「……よし、とりあえず、落ち着いたな」




 部屋の中央に腰を下ろし、一真は一息吐いた。





「クロス、ライフェクト外の温度はわかるか?」




「現在、-138度まで低下……更に低くなって行きます」




 クロスの報告に、一真は眉をひそめる。




 -138度なら、まだ動ける……だが、これ以上の低下は厳しい。




「……? おぉ! 一真、携帯の時計が止まってるぞ!」




 暖は驚き、一真に携帯の画面を見せつける。確かに時計は、17時17分で止まっていた。更によく見ると、圏外の表示があった。




「空間閉鎖……温度低下……電波遮断……」




「何か思いついた?」




 呟く一真に愛が問うが、一真は首を振る。




「強いて言うなら、畳の下が気になるぐらいか」




「そうね、見取図のマークのあった位置は……ここね」




「クロス、ライフェクトを拡げてくれ、暖、畳を上げるぞ」




「了解しました」




「おうよ!」




 ライフェクトの拡大を確認し、一真は暖と共に畳を持ち上げる。




「何かあるか?」




「あった! カズくん、こっちの畳も持ち上げて!」




 恋華に言われ、一真は持ち上げた畳を暖に任せ、もう片方の畳を持ち上げにかかる。




「……地の民の文字だ」




「凉音、畳を支えててくれ」




「わかった」




 一真は愛に畳を任せ、恋華の隣にしゃがみ込む。




「……エフェメルガを使えって書いてある」




「はぅあ!? うちが火事になるよ!」




「いや、あの魔法って温度調整出来るんだよ」




 一真は言って、その場に立ち上がる。そして、部屋の角に向かって右手を伸ばした。




「"エフェメルガ"!」




 一真の右手から、温風が放たれた。温度は150度、常人では耐えられないが、ライフェクトの中に居る4人は心地よい風が吹いたように感じた。




 エフェメルガにより温められた室内が、一瞬……光に包まれた。




「……クロス、ライフェクト外の温度は?」




「24度で安定しました」




「よし、ライフェクト解除」




 一真が言うと、4人を包んでいた幕が消える。




「暖、時間は?」




「え? あ、あぁ、ちょっと待っ……動いてる、17時18分だ」




「助かったみたいだな」




 一真はため息を吐き、その場に腰を下ろした。すると……




「ん? 紙……」




 地の民の文字が書かれて居た床に、1枚の紙が落ちていた。





 一真は、突如現れた紙を拾い上げ、恋華に手渡す。




「……カズくん、私に渡されても読めないんだよ」




「わかってるけど、一応な……重野の物だし」




 一真は恋華から紙を受け取り、視線を落とす。




「……"桃龍の社への道は開かれた。魔を使役する者と供に、彼の地へ向かえ"」




「彼の地って?」




「また裏に何か書いてあるわよ?」




 首を傾げる恋華に、愛が言った。一真が紙を裏返しにすると、今度は見取図では無く、文字が書かれていた。




「"風の精霊の地より、不動の星へ"」




『何処?』




 恋華と暖が眉をひそめる中、愛は何の反応もしなかった。




「……凉音、心当たりがありそうだな」




「まぁね……詳しくは豊に聞くと良いわ」




「豊? あぁ、カーバンクルか」




 愛の言葉に、一真は納得する。豊の頭に乗っている小動物、風のカーバンクルの"雅-みやび-"は、風の精霊の使者なのだ。




「何にしても、今日はここまでだな」




 一真は呟き、恋華に紙を渡した。






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