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魔法使いの苦悩-ADVENT-~闇の聖女と光の魔王~  作者: 黒緋クロア
第二章 Wizards daily[魔法使いの日常]
14/32

実力テスト!

始業式も滞りなく終了し、一真たちは教室に戻って来た。「校長は相変わらず話が長い」などと話ながら、生徒たちは担任の田丸教諭を待つ。




「んにしても、ホントに夏休み終わっちゃったんだな……」




「まだ言ってんのかよ、気持ちはわかるけど」




 机に突っ伏しながらぼやく暖に、一真が言った。




「すぐに冬休みになるよ」




「そうよ、たった3ヶ月半じゃない」




「長いよ、具体的な日数を出されると何か更に凹むよ……」




 女性陣に言われ、暖はより一層落胆する。




 そこへ、田丸教諭が教室に入って来る。暖の席に集まっていた一真、梨紅、沙織は自分の席に戻り、田丸教諭の発言を待つ。




「では、ホームルームを始める」




 今日は2学期初日の為、このホームルームで終わりだ。そんなことを考えながら、一真は頬杖を着き、田丸教諭に視線を向ける。




「2学期は学校行事が多い、明日の"実力テスト"を始め、体育祭や文化祭など……」




「……はぁ!?」




 驚愕の声と共に、暖が立ち上がる。それに驚いた田丸教諭は、一歩後退した。




「どうした? 川島」




「実力テストって何すか!?」




「夏休み前に言っただろう、夏休みの宿題の範囲でテストを行うって」




 教諭の発言に絶望したのか、暖は泣きそうな顔で一真の方を向いて……




「一真ぁぁぁぁぁぁぁ!」




 とりあえず、一真の名を叫ぶ。




「どうしたんだい? の○太君」




「○び太じゃねぇよ!」




「いや、完全に『ドラ○も~~~ん!』みたいな感じでオレの名前を呼んだだろ」




「なんでもいいよ! オレを今すぐ夏休みに戻してくれ、そして夏休みが終わらなくしてくれ!」




「本当にお前らエン○レス○イトが好きだな……無理だっつの、テストぐらい受けろよ、どうせ成績には関係無い」




「あ、マジで? 0点でも良いのか?」




「構わな……」




「いや、0点は勘弁してもらえないか?」




 一真と暖の会話に、田丸教諭が口を挟む。




「それから、ホームルーム後の清掃だが……久城、今城、山中、川島の4人は校門の清掃だ」




『やっぱり……』




 一真と沙織が、同時に呟き、頭を抱えた。




「ってわけで、暖の鼻血清掃を開始する」




「校門の清掃で良くね!? なんでわざわざ生々しくすんだよ!」




「うるさいぞ、鼻血」




「鼻血って呼ぶなよ! 人間だよ!」




 一真と暖がふざける中、他のメンバーはデッキブラシ片手に気だるげに立って居た。




「一真、そろそろ始めようよ」




「おぉ! 梨紅が何かやる気になってる……鼻血、感謝しろよ?」




「だから鼻血はやめろって! いや、でもホント、ありがとう今城」




「まぁ、仕方ないよ……一真が魔法失敗したんだから」




「おっと、流れ弾がこっちに」




「遊んでないで、"水"」




「はい……"波音の名の元に、我に従属せし清らかなる物を……アロ・アロア=ウェンド"!」




 梨紅に言われ、一真は空中に魔法陣を描く。




 ヴェルミンティアの魔法を一真がアレンジした物で、本来のヴェル式魔法を、魔法陣から放てるようにしたのだ。




 魔法陣が完成し、青く輝き、魔法陣の中心から水が放たれた。しかし……




「ギャアアアアアア!」




 あまりの水圧に、暖が吹っ飛んで行く。




「一真!?」




「いや、悪い……あれ? 威力強すぎ……」




「アバババババ……」




「久城君! 暖君が溺れそうよ!」




「わかってる! ……あれぇ?」




 一真は首を傾げながら、指先に魔力を集め、魔法陣に突っ込む。




「ここは問題ない……水量調整はここ……じゃない、何処だ? ここからこっちに繋がってて、ここがこうでこうなるから……あ、これか!」




 一真は魔方陣の内容を強制変更し、水の勢いを弱める。ようやく解放された暖は、ぐったりと横たわって居た。




「暖! 大丈夫か!?」




 さすがの一真も暖に駆け寄り、その身体を支える。すると……




「……はい、私は大丈夫でございます」




「駄目だこいつ、頭打ったっぽい」




「いいえ、本当に大丈夫でございます、むしろ清々しい……清らかな気持ちです」




 暖の発言に、メンバーは漏れ無く顔をしかめる。




「あぁ……神よ、感謝します」




「いや、礼には及ばな……」




「お前何もしてねぇだろ! しかもあくまで神様候補だし」




 照れる勇気を一喝し、一真は再び暖に視線を向ける。




「……そうか、"清らかなる物"だ」




「どういうこと?」




 梨紅に問われた一真は、未だ水を出し続ける魔法陣を指差した。





「"清らかな"水で、心が清らかになったっぽいな」




「……浄化の効果のある水」




 一真の言葉に、豊が続ける。それを聞いたからか、豊の頭の上に乗って居た、黄緑の獣……風のカーバンクル"雅"は、気持ち良さそうに水浴びを始めた。




「楽しそうねぇ、雅」




「精霊だから、清らかな物が好きなんだと思う」




 2本の尻尾を振る雅を見て、愛と豊が微笑む。その一方で、何かに目覚めつつある暖を見て、一真と梨紅は眉間に皺を寄せていた。




「あれかな、退魔力で戻せるかな?」




「いや、更に可笑しくなる気がする」




「じゃあもう気絶させちゃう?」




「いや、気絶したってなぁ……清らかな心に、暖の心が勝たなきゃ戻らないわけで……あぁ、そっか」




 何かを思いついたらしき一真は、暖を指差し、言った。




「おい、"鼻血"」




「鼻血じゃねぇっつってんだろ! ……あれ?」




『釈然としない!』




 暖は戻って来たが、梨紅と沙織は納得いかないようだ。




 余談だが、暖の鼻血は一真の魔法により浄化され、校門は綺麗に……清らかになっていた。




「清らかな水と、風の精霊……ちょっとしたパワースポットだよ」




 清掃終了後、豊がそんなことを言って居た。












 放課後になり、メンバーは全員、MBSF研究会の部室に集まって居た。




 ちなみに、MBSFとは……




「魔法使いと退魔士と一般人その他諸々で、勉強したり遊んだりその他諸々をする、SF研究会……それが、MBSF研究会よ!」




「急にどうした?」




 梨紅の発言に、一真が首を傾げる。




「ってわけで、今日の活動を始めます」




「シカト? まぁ、いいけど」




 一真は机に頬杖を着きながら、メンバーを見渡す。




「そんで? 今日は何を……」




「はいっ!」




 一真の言葉を遮り、暖が挙手する。しかし……




「却下」




「おぃぃぃぃぃぃぃ! せめて話ぐらい聞けよ!」




「却下」




「だから! おま……」




「却下!」




「えぇ……」




 暖は、どうしようもないと言った様子で手を下げる。




「どうせ、明日の実力テストの勉強とか言うんだろ」




「わかってんじゃん!」




「わかった上での却下だ」




「何故に!?」




 理不尽な物言いに、暖は驚愕の連続だった。



「でも、仕方ないんじゃない? 我が部から0点は出したく無いしさ」




 梨紅の呟きに、一真は腕組みをし、不意にメンバーを見回す。




「今日の活動はテスト勉強……賛成なら挙手」




 一真の言葉に9人中5人が挙手する。




「過半数行ったか、じゃあテスト勉強だな……各自、全力を尽くすように」




 一真がまとめ、それぞれが勉強を開始するべく、問題集を取り出すのだが……




「……なんてタイミングで来るんだ」




 突如、一真の背後の空間に、蒼い穴が空いた。それに、一真はため息を吐く。




 夏休みの間もあったのだが、一真はしばしば、異世界に呼び出されるようになっていた。ヴェルミンティアから帰って来てから、何度も異世界間を行き来しているのだ。




「今日は何処の異世界?」




「初めての所っぽいな、召喚呪文が聞こえないし……」




「気をつけてね」




「あぁ、すぐに帰って来るよ」




 梨紅にそう言って、一真は背後の穴に吸い込まれた。同時に穴は消え、室内に静寂が戻って来た。




 シャーペンで文字を書く音、難問に唸る声、頭を掻く音が聞こえ始める。一真が異世界に呼び出されてから、10分が経過した。




「……一真、遅いなぁ」




『え? ちょっと早すぎない?』




 暖と沙織が、同時に言った。




「まー君、かず君が行ってから何分?」




「10分14秒……日に日にタイムは上がって来ているな」




「いや、むしろ下がってるんじゃないの? それ」




 恋華、正義、愛の言葉に、梨紅の顔が赤くなる。




「最終的にあれだろ? 行って5秒で遅いなぁってなるんだろ?」




「それが末期だな」




「いいえ、最終的には異世界への穴が現れるのを察知するようになって、『今日はどのくらいで帰って来る?』ってなるわ」




「そこまで行くと、予知能力的な力が目覚めてるよね!? ないない!」




 勇気、暖、沙織の言葉に、さすがの梨紅も反論する。






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