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魔法使いの苦悩-ADVENT-~闇の聖女と光の魔王~  作者: 黒緋クロア
第一章 Get back the holy woman[聖女を取り戻せ]
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防衛局長の報告書

11月○○日、△曜日。MBSF本部(仮)における魔獣討伐に関する報告。












 梨紅の放った蒼い炎は、一真の集めた酸素と水素に引火し、大爆発……360゜に衝撃波を放った。




「衝撃波、来ます! 防壁、間に合いません!」




 船内放送でハウルの声が流れる。どうやら要塞の防壁は間に合わないらしく、魔導師たちは慌て始めた。




「問題ないから、落ち着け!」




 それを、一真が一喝する。魔導師は一真に視線を向けて黙り込む。




 一真は指で作っていた輪を解き、放出していた魔力を動かし、爆発地点を中心に半円状に移動させる。そして……




「"護-ご-"!」




 手の平を重ね、輪を作る。その後、手の平を離して前に向ける。3つの巨大な緋色の盾が、正方形の3辺のように現れた。




 衝撃波は盾に当たり、それ以上は広がっていかなかった。残る衝撃波は、海と空、そして要塞と逆方向の3方向だが……












『これを防げと?』




 空中で待機していた正義と勇気は、同時に呟く。ちょっとショッキングなぐらい巨大な衝撃波が迫っていた。




「仕方ない……やるぞ、勇気」




「あぁ、"あれ"しかねぇな」




 言って、正義は人差し指と中指だけを伸ばした両手で、忍者のように"印"を結ぶ。




 正義は両手を握り、脇を締める。




「"風忍法、疾風神召喚"」




「"神法、迅雷神化"」




 正義の周りに風が渦巻き、勇気には落雷が落ちる。渦巻く風は巨大な人形となり、落雷を受けた勇気は金色に輝き、巨大化する。




 風神と雷神……2つの神が、衝撃波に立ち向かう。




 2人が立ちはだかり、衝撃波の進行を和らげる。だが、少しずつ押されていた。




「うっ……雷神化しても防ぎきれないとか、梨紅ちゃんは何処まで行くんだ?」




「さぁな……行ける所まで行くんじゃないか? それより、そろそろ力が底を突きそうだ」




「早くね!? チャクラ少なすぎんだろ忍者の末裔!」




「奥義だからな、この術……まぁ、残り30秒って所か」




 何故か余裕のある正義に、勇気は焦りを募らせる。




「ヤバいヤバいヤバい! 30秒じゃ打ち消すの無理だぞ! おい!」




「大丈夫だ、恋華が居るだろう?」




 勇気に言って、正義は上空に視線を向ける。




 そこには、手の指を高速で動かし、無数の"印"を結び続ける恋華が居た。




「居るって言っても……まだかよ恋華ちゃん!」




「いや、間に合ったな」




 言いながら、正義は1人後退する。風神と勇気を残し、距離を取る。




 恋華は最後の印を結び終えると、拝むように両手を重ねる。そして……




「"重忍法秘技、城崩し"!」




 瞬間、勇気に影がかかる。




「……え?」




 勇気がそれに驚き、首を傾げる間もなく……それは降って来た。




「ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!」




 巨大な漆黒の塊が、雷神こと勇気と風神、そして衝撃波を押し潰した。




「"風壁"!」




 後退していた正義は、恋華の城崩しによって発生する津波に備え、防壁を作る。




 これで、上下以外の衝撃波は防ぐことが出来た。




「まー君! 怪我は無かった?」




 上空から正義の元に降りて来た、恋華が言った。




「あぁ、"オレは"大丈夫だ……お疲れ、恋華」




「お疲れ様! じゃあ、進藤君を助けに行こう!」




「そうだな、しっかり悲鳴あげてたからな、あいつ」




 言って、2人は勇気が沈んでいるであろう場所を目指して飛んで行った。












 一方、今回の功労者である梨紅は、ベルグ・パードを解き、海上に魔法陣を張って横になっていた。




 この数時間で、自分の能力が更に増加した。それを喜ぶ反面、不安もあった。




 先程の勇気では無いが、自分は何処まで行くのか……何のために自分は、強くなるのか。




 一真の隣に居ることを望み、強くなることを望んだ。




 その結果が、強力な魔物や先程のような獣を倒す力。




 一真と、互いを支えるために得た力……




「……良いのかな、このままで」




 梨紅は呟く。その言葉には、迷いが見えた。




「どうした?」




「あっ……」




 横たわる梨紅の元に、一真が降りて来る。




「一真……」




「隣、座るぞ?」




「うん」




 梨紅に断りを入れ、一真は梨紅の脇に座り込む。




「眉間に皺が寄ってる……悩み事だろ」




「よくわかったね、改めて真眼って凄いね」




「真眼なんて使ってないぞ」




「じゃあ、なんでわかるの?」




「オレだから……かな」




 そう言って、一真は微笑む。




「16年も一緒に居れば、それなりにわかる」




「じゃあ、悩み事の内容もわかる?」




「そうだな、『強くなる意味』とか」




「本当に真眼使って無いの? ずばりなんだけど」




 驚く梨紅に、一真は満面の笑みを向ける。




「使って無いよ、本当に」




「そう……でもホント、なんで強くなるんだろうね」




「オレは、ちゃんと理由あるぞ?」




「私にもあったよ、それが今は揺らいでるの」




 そう言って、梨紅はゆっくりと話始めた。






「私はね、一真の隣に居たくて強くなろうとしてたの。


 一真と一緒に、支え合って居たいから、強くなろうとしてた。


 今回の件で、最初はまだまだ弱いと思ってた。あっさり魔界に連れてかれて、一真に迎えに来てもらったから帰って来られた。


 だけど、こっちに戻って来て模擬戦したり、敵と戦ったりして……自分の強さが、いよいよ化物レベルになって来たってわかったの。


 見た目も中身も16歳の子供、強さは化物、それでもまだまだなら、何処まで行くんだろう……何処まで行けば良いんだろうって、考えてる」




 梨紅はそこで、溜め息を吐いて一息つく。思いの丈を、一真に伝えた。




「ねぇ、一真はなんのために強くなるの?」




「オレは……成り行き」




 一真は目を細め、空を見上げながら続ける。




「仲間や大切な人を守るために、強くなりたいってのもある。実際、お前を見す見す魔界に連れて行かれたしな。


 けど、能力的な強さは十分にあると思う。オレにも、お前にもな?


 そうなると、精神的な強さが足りない。オレたちはまだ子供だしさ、頭の回転もきっと、まだ上がる。


 戦いの中で支え合うことは、オレとお前ならもう出来る。あいつらとだって出来る。


 けどオレは、精神的にもお前を、梨紅を支えたいし、支えてほしいと思ってる」




 そこで切るが、一真は更に一言だけ、付け加える。




「……"一生"、な」




 数秒の間、梨紅からの返答は無かった。一真はチラッと梨紅の顔を見る。




「うおっ……」




 見て、少し驚く。梨紅は軽く上体を起こしたまま、一真を見て顔を赤く染めていた。




「……かっ一真? 今、一生って?」




「あぁ、言った」




「一生、支え合ってって」




「言った」




「じゃあ、じゃあ……今のってやっぱりプロポー……むぐ?」




 梨紅の口を、一真の右手が覆う。




「察しろよ、梨紅ならわかるだろ」




 そう言う一真の顔も赤く染まっており、梨紅は混乱する。こんなに真っ赤な一真を見るのは始めてだった。そして梨紅は、一真の手を口から退かし、握りしめる。




「……私、寝相悪いよ?」




「知ってる」




「朝も弱いし、寝起き最悪だし」




「知ってる」




「そ、それに料理だってまだ人並み以下だし、短気だし、あ、頭だってそんなに良い方じゃ……」




 言いながら、梨紅の両目から涙が零れ落ちる。一真はそれに微笑み、梨紅のことを抱き寄せる。




「知ってるよ、梨紅」




「……真眼使ってるから?」




「馬鹿、オレだからだよ」




 言って、一真は明後日の方向を向き、続ける。




「ちなみに、もっと具体的なプロポーズはまだちょっと恥ずかしいから、また今度な」




「気持ちだけってやつ?」




「そう、この気持ちだけは"一生"変わらないからさ」




「言い切った……凄い自信だね」




 梨紅は言いながら、一真に抱き着いた。




「けど、嬉しい……大好きだよ、一真」




「……オレもだ」




 そして、2人は笑い合う。声は出さず、微笑みあう。












 こうして、長い1日は終わった。獣は跡形も無く消し飛び、サンプルの入手には失敗。要塞への被害は今城梨紅による破損のみ。負傷者は進藤勇気のみ。上々の結果である。




 今回、今城梨紅を魔界に拉致した者に関しての情報は無し。予言者ティア様の手帳にあった"アマテラス"という単語が引っかかる。何か繋がりがあるように思える。




 久城一真、今城梨紅による魔力解放、ラグ・スリヴァーによる異空間の乱れは観測されなかった。




 今後の地球の魔力、退魔力比率に関しては要注意。




 以上で報告を終わります。




 防衛局長、麻美=ルイズ・レーヴェルト






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